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今なんて言った?
頭の中で、何故? と単語が浮かぶばかりでちっともトワイライトの言葉が頭に入ってこなかった。入ってきたのは、最初の一言ぐらいか。
私は混乱して何をどう返せば良いか分からなかったけど、混乱しているのは私だけではなくトワイライトもなので、私が初めに冷静になるべきだと思い、息を吸った。
「えっと、それで、殿下と婚約ってどういうこと?」
まさか、リースから言われたわけではないだろうし、そうなればそうで、別にいいんだけど。そう自分の心を押し込めようとして、リースとトワイライトがくっついたら? と再び自分に問い返していた。そう考えるともやっとしてトワイライトでも嫌だなって思ってしまう自分がいて、彼女の言葉を待つほかなかった。
だが、彼女の言葉は私が考えていた最悪のものではなく、皇帝陛下が家臣に言っているところを聞いたのだとか。そして、他の人もお似合いだとか、二人を見ていると幸せになれるとか言って、彼女とリースをくっつけようとしていたのだとか。まあ、口で言っているだけで行動には映さないだろうとも思っていた。
だって、聖女は役目を果たしたら死んでしまうのだから。
死ぬとはちょっと違うかも知れないが、実質下界から展開へ戻ってしまうため肉体は活動限界をむかえ消えてしまう。だが、ゲームのトワイライトは何故かそうはならず、攻略キャラと結ばれて末永く幸せに暮らしていた。
この世界にきてから、聖女は役目を終えると消えてしまうと知ったが、それではゲームとの間で矛盾が生れてしまうと。それがどういうことなのか未だに分からないが、国民が知らない訳もないだろう。神官に聞いた話だから、女神について詳しい闇魔法の者たちの話と違って、国民に認知為れている可能性が高い。そのため、リースとトワイライトがくっつくという、くっつけるという考えに至るのは可笑しいとも思った。
もしかして、本物の聖女と結婚させて私を使い捨てる気なのでは? と、最悪の想像が頭の中をよぎる。都合のいいように扱われるのはごめんだし、トワイライトが幸せになったとしても、私が幸せになれないなら彼女を祝福しようがない。トワイライトが結婚する頃には私がいないかも知れないから。
国民はリースと本物の聖女の結婚を望んでいる。そして、邪魔な私を使い捨てて世界を救おうとしているのだとすれば、それはもう国民も皇帝も頭がお花畑なのではないかと思う。自分の幸せだけを追求して、辛いことは全て私に押しつけようとしているのであれば。
そんなことを考えつつ、私はトワイライトの方を見た。彼女は式典とパレードでかなり疲れているのか眠たげなめをしていた。これ以上聞くのはいけないとは思っていた、どうしても聞きたいことが一杯あった。
「その、その殿下はその事を知っているの?」
「わ、分かりませんけど……式典もパレードも一緒にいて下さったんですけど、何だか上の空で、話しかけると嫌なかおをされました。とても、怖かったです」
と、トワイライトは傷ついたように俯いた。
彼女を怖がらせて傷つけてどうすると、リースに直接言ってやりたかったが、彼奴は私のこと以外見えていない気がして、まだ私を思ってくれているのなら、他の女性が隣にいると言うことは気にくわないのだろう。例え、指示されて隣にいたとしても。
まあ、だからといってそれを表に出してぶつけて良い理由にはならない。彼が女嫌いだと言うことは私はよく知っている。
「そっか、あまりいい思いしなかったんだね……」
「はい、お姉様もいませんし。やはり、お姉様の悪口もちらほらと聞えてきて……魔法で吹き飛ばしてしまいたいぐらいでした」
そう、物騒な事をいいながら、トワイライトは眉間にシワを寄せていた。彼女の怒りはよく分かる。大切な人が馬鹿にされているというのは耐え難い苦痛だ。私もそうだから。だけど、今ここで私が怒っても意味が無いので、とりあえずは話を戻すことにした。大人にならなければ。
きっと、私が参加していようが参加していまいが、きっとそうぐちぐちという人がいるだろうとは思っていた。トワイライトと私の仲をしらない人も多いだろうし、私の耳に入らないからと言って、トワイライトを祝う席でそんな他人の悪口を言うような人がいるならば魔法で吹き飛ばしてもいいと思う。バレなければ。
リースの事については後々考えよう。
「そういえば、ここまでは誰が送ってきてくれたの?」
「えっと、グランツさんです。今日は、私の護衛をずっとして下さいました」
「そう……それで、何も言わず帰ったの?」
「はい……お疲れ様でした、お休みなさい。とだけ」
相変わらずだ。と思いつつ、呆れてしまった。
昨日私にあんなことをしておいて、私には挨拶なしかと。彼が知っているか知らないかは別として、私が会場にいなかったことを不信に思わなかったのだろうか。それとも、私に興味がないのだろうか。まあ、どちらでもいい、私の護衛ではないのだから。
だが、彼にはお礼を言わなければならない。トワイライトの護衛をしてくれてありがとうって。それは彼にとって当たり前かも知れないし、騎士として当然のことかも知れないけれど、昨日のことを考えるとトワイライトが無事に私の元に帰ってきてくれたことは本当にありがたくて幸せなことだった。
さりげなくありがとうといいに行こう。タイミングが合うか分からないけれど。
そんなことを考えて、私は腕の中でうとうととし始めたトワイライトを見てメイドを呼んだ。すぐにメイド達は駆けつけてくれてトワイライトの疲れ切った様子を見てすぐに準備に取りかかった。昨日の今日で疲れただろう。私も慣れないことをすると疲れてしまうし、仕方がない。
「トワイライト、歩ける?」
「はい、お姉様……でも、とても眠くて」
「うん、じゃあ部屋まで送るよ」
「すみません、お願いします」
私は、トワイライトの肩に腕を回して支え、彼女を連れて部屋に向かった。途中、メイド達が羨ましそうな顔をしていたのが印象的だった。私もしたいと思っているのかも知れない。だが、部屋に行って着替えやら何やらを準備しなければとせわしく働いていた。
トワイライトの部屋につき、ベッドに寝かせて布団をかける。彼女はすやすやと気持ちよさそうに眠り始めた。
着替えや化粧は落とさなくて大丈夫だろうかと思ったが、それは私の仕事ではないので私は彼女の部屋を出ようとした。だが、彼女に服を捕まれてしまい足を止める。
「お姉様、何処に行くんですか?」
「私も寝ようかなって……今日はほら、疲れたでしょ。もう、寝た方が」
「ご褒美が欲しいです。お姉様一緒にいて下さい」
「えぇ……」
別に嫌ではないのだが、まさかそんなことを要求されるとは思ってもいなかったため驚いてしまった。それはご褒美になるのかと、思いつつ彼女の顔を見ると寂しげな表情を浮かべていて、そんな風に言われて断れるわけがなかった。
私は彼女の手を握ると彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。可愛い。
「ちょっとだけだからね……」
私はベッドに腰掛けて、トワイライトの頭を撫でてあげた。すると、彼女は幸せそうに笑うとそのまま眠りについた。
この調子なら、私がここにいなくても良さそうだ。だが、彼女の手を離したら、また起きるかも知れないと私はその場を動くことが出来なかった。
「可愛い寝顔……」
安心しきったように眠る彼女を見ていると、思わず頬が緩む。そして、私も睡魔に襲われていた。
私は食べて寝てを繰り返していただけなのだが、彼女を見ていると何だか眠たくなってきてしまったのだ。
(トワイライトの式典も終わったことだし……今度はリースの誕生日か……)
次の大きなイベントに向けて私はどうするべきか悩みつつ、そのまま目を閉じた。
プレゼントぐらいは矢っ張り、ダンスのパートナーになるほかにもあげなければならないと私は考えつつ夢の中へと落ちた。