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八雲瑠月
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『期待の漫画家だけにファンも多いようだ。これはラノケンがピンチか? 次のマンケンの部員は……二年生、シャーロック・クィーン。彼女の推理漫画は誰もトリックが予想できないと、推理小説マニアや推理漫画好きの読者までもが魅了したと評判だ!』
スポットライトが当たり、現れたアバターはシャーロック・ホームズのコスプレをしたような少女であった。帽子とコートと口にはパイプを咥えている。シャーロック・クィーンのアバターの表示には明智紗麓と表示されていた。
紗麓のレーダーチャートのステータスは【画力三】【構成力四】【キャラ設定二】【世界観設定三】【知識五】【リアリティ五】【台詞回し二】【コンセプト三】と、表示される。
観客席から歓声が上がり、『次の新作も期待してますシャーロック先生!』『難解なトリックをラノケンに見せつけてやれ!』などのコメントが流れた。
「漫画とラノベ……どちらかが上か推理しなければいけないが……これは考えるまでもない! なぜなら私の漫画の方が優れているからだ!」
マイク無しで紗麓が咥えたパイプを向けて言うと、観客席から歓声が上がる。
『彼女は漫画投稿サイトでは十位にランクインした事もある実力だ! 次は、こちらもかなりの実力者だ! 三年の副部長、白面九尾。なんでもある有名な漫画家の息子であり、アシスタントも担当しているとか』
白い狐耳に九尾を備え、それに対して衣装は真逆な陰陽師のような烏帽子と狩衣に身を包んだアバターだった。表示には神狐晴明と表示されていた。
晴明のレーダーチャートのステータスは【画力五】【構成力四】【キャラ設定四】【世界観設定三】【知識五】【リアリティ五】【台詞回し三】【コンセプト四】と、かなり高い評価だった。
しかし、観客の反応はステータスの表示と真逆の反応であった。晴明のアバターを見るなり、観客席はざわつき始める。それは歓声でもブーイングのような声ではなく、疑問符が浮かび上がるような会話だった。『マンケンに副部長なんていたのか?』『白面九尾? どんな漫画を描いてる奴だ』など、画面にコメントが流れてくる。
聞姫はわざとらしく咳をすると、晴明の補足説明をする。
『白面九尾先生には新聞部も何度も連載の四コマ漫画を頼んでいて、各広報誌でもなかなか高評価だ。しかし、漫画投稿サイトや同人誌の経験は無しだそうだ。先生、コメントがあれば』
あの聞姫がなぜか恐る恐る晴明にマイクを向ける。
『ん? 僕? 特にコメントは無いよ。ただ、僕が言えることはこのくだらない戦いに終止符を打たないと』
『と、言いますと?』
急に目つきが悪くなる晴明にビクリとしながらも、聞姫は質問する。
『だってこの戦い、口外はしてないけどさ、ラノケンから絵の上手い奴を引き抜きたいからやっている訳でしょ? くだらないよ。正直、漫画とラノベがどちらが面白いかって、絵が好きか、文章が好きかの違いでしょ? 読者の感性の幅がズレてるよね? こんな催し、即刻に中止しようよ』
晴明の言葉に観客席のざわつきがさらに大きくなる。『何それ? 聞いてない』『ラノケンに絵の上手い奴がいるから引き抜きって……ヤバくね?』などのコメントが画面に流れていく。
焦る聞姫が目でサインを送ると、口姫が喋り始める。
『えーと。この戦いは双方の同意が行われるものであって……先生方にも協力をいただいている訳でして……』
『それで大半のマンケンがほとんど事情を知らないで、戦いに巻き込まれた訳だ。点睛、言い訳ができる? ああ、ペンネーム呼びにしないと駄目だっけ? ここではDRAGONEYEだったかな?』
「副部長、ラノケンに対して私情が入っているのは確かです……でも、彼女の絵は文章より、イラストいや、漫画を描かせる才能なんです! 人生をくだらない小説に捧げるべきではない!」
『それは本当に私情だな点睛。色恋沙汰かと思えば……偏見に満ち溢れている。本当にくだらない。それは部長が許可したのか?』
「そうだ。私が許可した」
大人っぽい少女の声がして、スポットライトが晴明から別の場所にシフトする。
『さ……最後のマンケンの部員は同じく三年生、部長の吸血公女だ。今ではプロの漫画家としても活躍! 知る人ぞ知るゲーム会社、レッドムーンの副社長の娘で、子供の時からイラストを手伝っていたとか。これはレッドムーン対決となるのか!?』
聞姫が誤魔化すように言って、手を伸ばした先に新たなアバターがスポットライトに照らされた。
アバターは紅い髪に頭の上には蝙蝠の翼が耳のように付いた少女だった。肌は白く、口には八重歯を覗かせ、黒いドレスにマントを羽織っている。どうやらヴァンパイアのアバターのようだ。吸血公女の表示にはカーミラ・赤月と出ている。
カーミラのレーダーチャートのステータスは【画力五】【構成力三】【キャラ設定五】【世界観設定四】【知識四】【リアリティ四】【台詞回し五】【コンセプト三】と、表示され、こちらもかなりの高いステータスだ。
『部長、許可したと言いましたか? このような催しを僕に許可無しにですか?』
『吸血公女先生。ではコメントをどうぞ』
聞姫がマイクを向けると、カーミラがそのマイクを奪い取って、話し始める。
『すまないね白面九尾。君に言うと、君だけが反対しそうだったからね。こっちも人手不足なのは知っているだろ? 三年は四人、二年は三人、そして今年の一年で二人だ。さすがのマンケンも先行きは不安になる』
「だからと言って、無理にラノケンから引き抜くなんて……」
晴明は納得していないのか、カーミラを睨むように見た。
『経緯はどうであれさ……こういう催しでマンケンの能力が上がるなら良いんじゃないの? それにドジっ子食いしん坊ちゃんのイラストデータ見た? プロ顔負けのかなりの実力者だよ。育てがいがあるよ』
『漫画と小説は違う! 無理に入部させても続かない!』
『ああ、そんな事か。漫画は嫌だって言うかもだけど、もしかしたら漫画原作でもやってくれるんじゃないの? まあ、私の教育方針的に嫌でも漫画制作を好きになってもらうけど、もちろんドジっ子食いしん坊ちゃんも覚悟して、マンケンに勝負を挑むんだよね?』
カーミラがマイクを愛に投げ渡すと、慌ててキャッチする。
『もちろんラノケンが負けた場合……わたしはマンケンに入部し、漫画を描き続ける所存です!』
愛の返答に歓声が上がり、画面に『それでこそラノケンだ!』『男ばかりのマンケンをぶっ潰してやれ!』などのコメントが流れていく。
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