テラーノベル
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それから数日後の10月中旬。
あの日、尊さんと本音でぶつかり合ってから俺たちの間には、以前よりももっと深い信頼が根付いた気がする。
成田の影が完全に消えたわけじゃないけれど
独りで抱え込まず、俺の気持ちを「受け取る」と約束してくれたことが、何よりも嬉しかった。
そして迎えた10月17日、金曜日。
今日から二泊三日の社員旅行、行き先は沖縄だ。
「恋、忘れ物はないか?」
羽田空港の出発ロビー。
自動チェックイン機が並び、足早に旅人が行き交う喧騒の中
スーツケースを引く尊さんがいつもの凛とした声で俺を振り返る。
長い脚、真っ直ぐな背筋、そしてこちらを射抜くような瞳。
その佇まいは、人混みの中でも際立って美しかった。
「はい、大丈夫です!」
俺が元気よく答えると
「朝から元気だな~雪白」
そう言って割って入ってきたのは同僚の田中だ。
いつもの調子でニヤニヤしながら、俺の肩にずっしりと腕を回してくる。
「あはは…そ、そう?」
(危ない危ない…今日は尊さんとだけじゃなくて、みんなとの社員旅行なんだから尊さんと親しくしすぎないようにしないと…っ!)
俺は内心で冷や汗をかきながら、尊さんから一歩距離を取った。
公私混同は厳禁だ。
でも、尊さんと一緒に飛行機に乗れるというだけで、心臓の鼓動は早鐘を打っている。
午前中の大型便に揺られ、正午ぴったりに那覇空港へ降り立つと、湿り気を帯びたぬるい風が頬を撫でた。
機内の乾燥した空気から一変
10月の沖縄は、まだ夏の名残をたっぷりと含んでいる。
空港のロビーに流れるゆったりとしたBGMが、南国へ来た実感を強くさせた。
最初の目的地は、空港からほど近い『ウミカジテラス』。
「うわあ……真っ白!地中海みたいですね」
傾斜地に立ち並ぶ真っ白な建物と、その眼前に広がるソーダ水のような青い海。
そのコントラストに、社員たちのテンションも一気に上がる。
テラス席で海風を感じながら、沖縄の食材をふんだんに使ったランチを済ませ、午後は北谷のアメリカンビレッジへ。
街はちょうどハロウィンの装飾が始まったばかりで、異国情緒たっぷりだ。
極彩色の壁画や巨大なカボチャのオブジェが並び、まるで海外の映画に迷い込んだような錯覚を覚える。
SNS映えを狙って、スマホを構えて写真を撮りまくる同僚たちの端っこで
俺はただただその場のエネルギーに圧倒されていた。
初日の夜は、恩納村のホテル近くにある三線ライブが楽しめる居酒屋で宴会だ。
鳴り響く三線の切なくも温かい音色と、賑やかなカチャーシーの掛け声。
オリオンビールを片手に笑い合う皆の輪の中で、俺は隣に座る尊さんの横顔を盗み見た。
少し前まで、成田の一件であんなに張り詰めていた彼が、今はリラックスした表情で手拍子を打っている。
少し赤らんだ頬、緩んだ口元。
それだけで、俺の心は溶けるように緩んだ。
ねむ
コメント
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社員旅行待ってました...