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二話 養成学校
「…というお話が、今私たちの周りで起きている戦争の歴史の話です」
一人の女性が持っていた本を閉じる。大きな教室に反響する声はとても眠りを誘う…
歴史の授業こそつまらないというのに話を一定のリズムで淡々と読むだけなんぞ俺たちに寝ろと言っているようなものだ。
俺、一年のアグラン・シュヴァルトはそんな愚痴をブツブツと呟きながら机に伏せる。
「早く実技の授業始まんねーかな…」
この学校は俺たち生徒を騎士団へと導くための養成学校となっている。
戦争の歴史、天使と悪魔の特徴や特性を理解するなど基本的には天使と悪魔についての授業を行う。
そして座学の他、学校の中で中心となってくる授業は実技の授業だ。
専用の大きな部屋に向かいダミーの天使や悪魔の人形を使って模擬戦を行ったりなど。これには試験もありそれに合格すれば大幅に成績が上がる。
そして腕の立つ者が居れば飛び級試験というものを受け実際の天使や悪魔と戦闘を行うこともあるのだ。それに合格をすれば2、3年と上に行かずとも入団試験に直行できる、そしてこの学校に通っている者はみんなそれを狙っている───
───「さて、今日の授業はここまでです。どうぞ自由時間にしてください」とそんなことを考えていればいつの間にか授業が終わっていた。
かるくため息をついて休憩しに行こうと席を立ち上がれば突然背後からがっしりと肩を掴まれ、掴んできたであろう人物が此方に顔をのぞかせる。
突然の事でびっくりはしたものの其方に顔を向ければそれは俺の友達、同クラスのイエン…イヴィエン・テイスターだった。こいつは明るくて気さくな奴だ、たまにテンションについてけない事もあるが、良い奴だとは思う。
「なぁ、次は実技だっけか!」イエンは俺の肩から手を離し、俺の正面にあった椅子に腰を下ろす。
「あぁ、実技って次か」座学の授業で溜まったストレスを実技の授業でぶつける。それも一つの楽しみ方だな。
俺たち一年の実技は自分に合った武器を探すことから始まる。つまり実技の授業では色々な武器に触れて素質があるとされた武器の基礎を学び、実践でそれを生かす。そして最終的には武器が体に馴染み、しっかりと使いこなせている、これが一年の目標となっている。二年に上がるための試験でもこれは必須科目で必ず受けなければならない。これに落ちれば留年…と言いたいところだが退学となる。これについての教師の言い分としては「素質のないものをここに置いておく必要は無い」との事らしい。非情だよな、まぁ仕方がないことだが。
「そろそろ行こうぜ!訓練室に」
「おう」
俺らは教室から足を進め、模擬戦を行うための訓練室へと向かう。俺らは先程言った通り武器選びから始まる為まだ模擬戦自体は行えないが…
俺らが訓練室に着いた頃には既に沢山の人がその場に集結していた。と、突然イエンが前に出れば
「うおお!!すげぇ広い!」子供のように目を光らせながら声を上げる
そこはとても大きな球状の会場で上には観客席のように椅子が沢山並べてあり、そこから下を見れば試験を一望できるようになっている。訓練室は砂で埋め尽くされていて、その上に木や岩、そして本格的な家も建てられ、ダミー人形が正面を見つめたままミリとも動かない、そしてそれがいくつかランダムに置かれている。
きっとこれはリアルを模したものなんだろう。
───先生が二度手を鳴らす。その音で気づけば、宙には大きくモニターが表示されそこには三人の教師が立っていた。
『皆さん、これから実践授業を始めます。』
『この授業で、皆さんには自分に見合う武器を探してもらいたいと思う。』
『なのでそこにある沢山の武器を使ってそこのダミー人形を壊して下さい。』
『攻撃力の高さ、俊敏さ、使い方など、その他沢山の材料で判断します』
『これから3人ずつ番号を表示させるのでそのメンバーはそこにある魔法陣に立って下さい。』
俺たちの目の前には一つ小さな魔法陣が展開される。俺はその場でしゃがみ、式を見つめると。それが転送魔法の術だということが分かった
ー2番39番18番ー
先生たちの映っていたモニターには三つの数字が表示された。共にその番号の人達は手元に武器を取り魔法陣の上に乗る。青い光が魔法陣を光らせれば三人は消え、下の訓練場へと姿を生していた。
「おお、こりゃ凄い。さすが先生たちだなぁ」とイエンは興味深々で魔法陣を見つめれば正面の訓練場へ視線を返す。そして再び大きく目を見開けば「あ、見ろよあれ」と下に降りた彼らを指さし
「2番が持ってる武器は槍斧だ。めっちゃかっこいいよなぁーポールアックス!!」
「そんで39番が持ってるのが双剣だな、俊敏な行動と高度な立ち回りが必須だから難易度が高いって有名な武器じゃないか」
「18番が持ってるのはクロスボウだな、距離感が微妙な時あるからこれも難易度高い武器だって言われてるな」
後に初めからあんな武器たち使って大丈夫か?とイエンは呆れたように溜息を落とし、その訓練の様子をじっと見ていた。
それからしばらくその様子を見ている時間が続いた、イエンは楽しそうに見ていたが、正直俺は疲れてきたよ。
と…そんなことを考えてるうち俺らの番号が当たった。
ー25番30番16番ー
「うお、俺ら一緒じゃんアグラン!やったな!」イエンは大きく喜べば、同時に俺たちの正面には選択肢画面が表示され『この中から1つ、武器をお選びください、変更はできません』と音声が流れる。俺は一度気を落ち着かせるために深呼吸を一度行い、その中から一つ武器を選択する。
ー『ロングソード』が選択されましたー
するとロングソードが手のひらよりも小さいひし形の宝石のようなものに入って、手元に転んと落ちてくる。
これは授業で習ったもの、俺はすぐに理解ができた。このひし形のものはカイシャと言って自分が行動する際武器が嵩張らないようにするもの。いわゆる収納ケースみたいなものだ。騎士団では隠密行動をする際によく使用されるらしい。普段はしまってる人もいれば嵩張るのが味だと言ってわざと仕舞わずに持ち歩いている人もいるみたいだが…
俺はカイシャを手にして、用意された魔法陣の上に立つ、そして軽く目を閉じれば、瞬間的に移動は完了されていた、俺たちは訓練場の真ん中に立っていて、会場の大きさに緊張が走る。
横を見るとイエンが立っていた、イエンが手にした武器は銃剣、近距離も遠距離も対応出来る優れた武器だ。
『カイシャから武器を解放し、装備せよ』先生からと指示が降りた、その指示を聞き入れれば俺たちは全員同時に「リリース」と唱えカイシャから武器を解放する。カイシャから解放された武器は大きく姿を変え自分の手の中へと収まる。
全員がやり終えれば、正面にあった天使と悪魔のダミー人形が重力のある音と共に顔を上げ、動き出しては羽を広げ宙を飛び回る
俺はロングソードを正面に構え、ひとつ息をついて人形に向かって刃を立てた