それからは少し時間が空くとすぐに青井に会いに行った。毎日病院と事件現場を行ったり来たり、忙しない日々を過ごし待ちに待った青井の退院の日を迎えた。
「うーわこれこれ、やっぱつぼ浦といえばこの車だよなー!」
「アオセンも分かる男になったか。どっか寄るとこある?」
「んーちょっと本署顔出しとくか。」
「おしじゃあ行くかー!」
ハイテンションなつぼ浦はずっと歌いながら運転している。本署に着いて皆に一通り挨拶をしていると馬ウアーに署長室に呼び出され、いつものようにつぼ浦は1番奥の豪華な椅子に座った。
「いやぁ本当に良かった、まだまだ身体を大事にな。という事でえー、これは署長命令だ。青井らだお、つぼ浦匠、2人は今日から1ヶ月の休暇を取るように。」
「1ヶ月!?いややりすぎやりすぎ、全部忘れる。」
「アオセンがポンコツになっちまう。」
「そ、そうか。じゃあ半月にしよう。」
「うーん、もう一声!」
「署長の力見せつけろー!!」
「まだか!?じゃあ10日はどうだ?」
「10日か…まぁそのぐらいが丁度良さそうだよな。」
「まぁ良いだろう、飲みますよ。」
「よしじゃあ2人共10日間は休暇期間だ、その後はいつでも好きな時に復帰してくれ。」
話し合いが終わると荷物整理をしてくるから待っててくれとつぼ浦はロッカーに向かう。座って待っていると成瀬が通りかかった。
「お前署長命令ちゃんと守れよ。」
「ガチで全部忘れる、戻ってきた時まともにできる気がしない。」
「はいはい言っとけ。でもつぼ浦さんも暫くいないのはちょいキツくなるな。」
「キツくなる?」
「めっちゃヘリ乗ってくれてたんよ、IGL有能すぎて引いた。」
「え、ヘリ乗ってIGLしてたの?つぼ浦が?」
「たぶんらだおの代わりしてたんじゃねーかな。つぼ浦さんそういうのやるだろ。…俺から聞いたって言うなよ、ロケラン撃たれそう。」
「…マジか、そんな事まで…」
「終わったぜーもう帰れる。…あ、すまん邪魔した。」
「いや適当に喋ってただけだから。じゃあまた今度カニメイト行くわ。」
「ただいま久しぶりの我が家ー!」
「昨日掃除したけど行き届いてねーかも。」
「そう?いつもと変わんないじゃん。はぁーやっと帰ってこれたぁ…」
「荷物整理するから鞄開けるぞ。」
「後で良いよ?ちょっと休憩しよ。」
「いや先にやんねーと絶対めんどくなる。アオセンは休んでて良いから。」
絶対すぐにくっついて甘えてくると思ったのに、意外だなー寂しいなーと思いながらキビキビと動くつぼ浦を目で追った。
「やっぱ家が1番落ち着くなー。あれつぼ浦?どうした?」
簡単に自室の片付けをしてリビングに戻ってくると、つぼ浦は棚に置いてある壊れてしまった2つの腕時計を見つめていた。
「…また買い行こっか。」
「……アオセン…」
俯いて青井に抱きついた瞬間涙が込み上げてきた。事件があった日からずっと我慢して、無理やり無視して、押し殺してきた感情がとうとう限界を迎えて溢れた。
「ごめん、ごめんね。」
「うう、っ…ずっと辛くて、怖くて……このまま起きないんじゃ、ないかって…もう、目も見れねぇんじゃ、ないかって…あお、せん…」
「そうだよね、ごめん。ずっと待っててくれてありがとう。大事にしたい、してるって言ってた癖に俺は嘘つきだな。これしか言えない…ごめんねつぼ浦。」
「ちがっ、あおせん悪くねー、からあやまんな…うっぅぅ…ほんとに、よかった…俺のほうがあり、がとう…ひっく…」
様々な感情がぐちゃぐちゃに入り乱れ自分でも訳が分からなくなりながら、涙は止めどなく溢れる。縋り付いて泣き続けるつぼ浦を優しく抱きとめて青井も静かに涙を流した。腕時計の隣には卓上カレンダーが飾ってあり、今日の日付に丸印と青井の字で「1周年」と書かれていた。
コメント
2件
最高の締めくくりでもう...✨無事2人が元気になってよかったとしか言葉が出てきません...😭 めちゃくちゃ最高でした👏✨