テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ど、どうしたんですか」
「勝手に仕切っちゃってごめんね」
「いえ、別に? うちの家族も楽しそうですし、謝る事なんてないと思いますけど。むしろ、あんな高級食材を沢山、ありがとうございます」
「そう思ってくれたんなら良かったけど。俺、大体の人には受け入れられるけど、たまに『馴れ馴れしい』って拒否される事もあるんだ。まぁ、そういう人は合わなかったからいいとするんだけど、恵ちゃんのご家族は特別じゃん? 間違えてなかったかな~? って、急に不安になっちゃった」
「涼さんでも不安になる事あるんですね」
「あるよー。これでも真剣に恵ちゃんと結婚したいと思ってるんだから」
彼はクシャッと笑い、私の頬を撫でてくる。
こうやって何気ない会話をしている間も、涼さんは日が差すほうに立って私に日陰を作ってくれている。
恩着せがましくなく、自然に人に親切にできる彼は、やっぱり凄いと思う。
「……家族がスルッと受け入れてくれて、安心しました。これでも昨晩、めっちゃ緊張してましたから」
「ふふっ、なかなか寝付けずにいたもんね」
涼さんは「持つよ」と二つの飯盒を手にして、歩き始めた。
「表向き、中村家の皆さんは受け入れてくれたように見えるけど、あくまで〝表向き〟だ。俺はまだ皆さんに、恵ちゃんと結婚したいと思ってるって伝えてないし、正式なご挨拶をしてない。だからまだ、認められたとは思ってない」
「まぁ……、そっすね。菓子折持ってご挨拶……はしてないけど、そもそもは母が『一年待ってから』って言いましたしね」
「考えてみれば、普通は恋人の状態で、お互いの家族と挨拶したりするもんだよね。そういう触れ合いを重ねて信頼してもらった上で、改めてきちんと〝ご挨拶〟するのが王道だと思う」
「ですね。……私たちが結婚前提で同棲してるもんだから、つい考えがそっちにいっちゃいます。でもまだ、一年の同棲期間を終えるまでは、かしこまらなくていいのかな?」
「けど、意思表明をしておいて、損はないと思うんだ。俺はもう、お義父さん、お義母さんってナチュラルに言っちゃってるし、『君にお義父さんなんて言われたくない!』とは言われてないしね」
「それ、昭和のドラマとかでありそうな奴じゃないっすか」
「一生に一度しかないから、割と憧れてた」
「マジっすか」
「でも、スルッと受け入れられて安心したのは事実だよ。みんないい人だね。面白いし」
「一緒にいると、突っ込み疲れますよ……」
「恵ちゃんはとってもいい子だから、ご家族も優しくていい人なのが分かるよ」
「…………そんな事ないです」
「そこは否定しないの。『当然でしてよ!』って堂々と胸を張って言わないと」
「なんでお嬢様なんですか」
私はプッと噴きだし、クスクス笑う。
「でも、本当に良かった。結婚しても中村家と上手くやっていけるビジョンが、明確に見えた」
心の底から嬉しそうに言う涼さんを見て、私は眩しげに目を細める。
「不思議ですね。涼さんと一緒にいると、なんでも上手くいくように思えてきます」
「あれっ? 今気づいた? 俺、あげちんだよ」
「太陽浴びながら、ちんとかまんとか、やめてくださいよ」
「そういう言葉なんだもん、しょうがないじゃん」
「はいはい。揚げ饅頭と揚げちんあなご」
「後者、えぐくない!?」
ギョッとした涼さんを見て、私はケラケラ笑った。
そのあとはBBQスペースで、高級食材を焼いてはビールを飲んで……と、貴族みたいな時間を過ごした。
家族は全員、とろけるようなお肉や新鮮な魚貝に骨抜きになり、「涼さま」状態になっている。
BBQで食べる父の焼きそばは本当に美味しいんだけど、今日は麺が違うからか、いつも以上に美味しく感じた。
兄たちはすっかり涼さんと打ち解けて、親友みたいに喋って笑っていたけれど、今はまじめな顔をして投資セミナーを受けている。
念のため、涼さんから話したのではなく、兄たちから質問した流れだ。
「こんなに美味しい物を食べて体重が増えるなら、納得できるよなぁ……」
父は鉄板に張り付いた麺を、ヘラでカリカリと引っ掻きつつ言う。
「確かに、ストレスで食べちゃった時に増えると、自業自得なんだけど『解せぬ』ってなる」
いつも通りの親子の会話をしていたけれど、父が急に涼さんの話をしてきた。
「涼さんの事、好きか?」