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御子柴 凪(みこしば なぎ)、29歳。
長身で、清潔感のある白シャツの袖をまくったその姿は、モデルと言われても疑わないほど整っている。
無造作に見えて計算された黒髪の間から、涼やかで、けれど知的な瞳が私を捉えた。
圧倒的な華があるのに、威圧感はない。
ただそこにいるだけで、スタジオの空気が清涼感に満たされるような。
そんな不思議な魅力を持つ人だった。
「あなたが、制作担当の白河さんですね」
御子柴さんは私の前に立つと、ふわりと、春風のような笑みを浮かべた。
「企画書、拝見しました。白河さんが選んだこのブルーのパレット、冬の朝の空気みたいで、すごく素敵です」
差し出された言葉は、私の容姿ではなく、私が積み重ねてきた「仕事」への評価だった。
御子柴さんは、私の目をじっと見つめる。
それは、下心があるようなベタついた視線でも、私を透かして「誰か」を探すような卑怯な視線でもなく。
一人のプロフェッショナルとして、私を正面から捉える、誠実で、透き通った瞳。
「ありがとうございます、御子柴さん」
私が、いつものように淡々と挨拶を返すと、彼は少しだけ楽しそうに目を細めた。
「そんなに身構えなくて大丈夫ですよ。今日は、あなたの作る素晴らしい世界観を形にするために来たんですから」
彼の穏やかな声が、氷のように冷え切っていた私の胸の奥を、ほんの少しだけ、くすぐった。