テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

はごろもまごころ

一覧ページ

「はごろもまごころ」のメインビジュアル

はごろもまごころ

25 - 第23話 某食品メーカー

♥

30

2025年09月16日

シェアするシェアする
報告する

第23話 某食品メーカー


配信


「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」


画面に映ったまひろは、今日は灰色のパーカーにデニムのハーフパンツ。胸には遊園地のお土産で買った缶バッジをつけている。ぱっつん前髪の下の大きな瞳は、相変わらず無垢な光を放っていた。


隣のミウは、モカのブラウスに淡いピンクのカーディガン、ベージュのロングスカート。髪は後ろでゆるく結ばれ、耳には小さな丸いピアス。柔らかな笑みを浮かべて視聴者に手を振る。


まひろが少し困ったような声で切り出した。

「ねぇミウおねえちゃん。最近、あの食品メーカーが“安さのために安全を軽視してる”って聞いちゃったんだ。ぼく、ちょっと心配になっちゃった」


コメント欄に「え、マジ?」「買ってるよ…」とざわめきが広がる。





疑惑の芽生え


ミウはふんわりと首をかしげて微笑んだ。

「え〜♡ ごはんって毎日のことなのに、安全じゃなかったらイヤだよねぇ」


まひろは小さな声で無垢に続ける。

「ぼくはただ、“ほんとかな”って思っただけなんだ。でも……ぼくが食べてたお菓子、大丈夫なのかなぁ」


コメント欄は次第に「うちの子に食べさせてる」「もう信じられない」で埋まっていく。





レイNews記事化


その夜、「レイNews」に並んだ記事:


  1. 大手食品メーカーX社、“安全軽視”の内部告発か



  1. 匿名社員証言『コスト削減で原料を妥協』



  1. 消費者団体『健康被害が出る前に対応を』



  1. SNSで拡散『子どもに食べさせられない』



  1. 過去のリコールを再検証──危険は繰り返されるのか




記事の証言はZが捏造したチャットログをもとにミウが書き上げた。実際の原料には問題はなかったが、切り貼りした匿名発言が“真実”として記事化された。





群衆の暴走


翌日SNSは「#食の闇」で溢れた。

「X社の商品は捨てた」

「子どもを守るために声をあげよう」


街頭には「製品回収を!」とプラカードを掲げる人々が集まり、やがてスーパーの前で叫ぶ群衆へと膨れ上がった。

誰かが投げたペットボトルをきっかけに警備員と衝突し、映像が拡散される。


「暴力的な消費者運動」としてニュースに流れたが、その背景を作ったのは“はごろもまごころ”だった。





クライマックス


食品メーカーは「安全性に問題はない」と会見した。

だが翌日の記事はこうだった。


「必死に否定する企業=やはり後ろめたい?」


否定すればするほど火に油を注ぐ。

スーパーの商品棚は空になり、物流は混乱。株価も急落し、街では連日小競り合いが起きた。





結末


夜の配信。

まひろは灰色のパーカーの袖を握りしめ、無垢な瞳でカメラを見た。

「ぼく……ただ“心配だな”って思っただけなのに」


ミウはやわらかく笑みを浮かべ、胸に手を添えた。

「え〜♡ でも、みんなで考えるきっかけになったんだから素敵だよねぇ。

だって、“守りたい”って声がこんなに広がったんだもん♡」


コメント欄は「ありがとう」「気づかせてくれて助かった」で埋め尽くされた。


その裏で、ミウのPC画面には「次の標的リスト」が開かれていた。

企業名と、有名人、そして政治家の名前が、赤いチェックでマークされていた。






無垢な声とふんわり同意、その裏で“心配の火種”は街を燃やす炎へと変わっていった。

はごろもまごころ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

30

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚