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2216年11月02日 土曜日、
朝、5時。
街に、曲が聴こえる。
365日同じ設定のアラームが鳴る。ハルは殆ど寝る事が出来なかったが、微睡みながらこの朝を迎える。
SNSは不思議と静かだった。戒厳令が敷かれた時から、コメントは徐々に少なくなり、あろう事か20時を過ぎた夜には誰1人として、コメントをする者は居なくなっていた。
ハルはユメだけ、メッセージを送る。
「僕は今日、新宿に行くよ。それは僕が正しいと思うから。メディアやSNS、誰の影響も考慮せずに決めた事だから。」
送信。
コキーン
返信…………。
「私は迷ってたけど、ハルが行くならいく。」
日本国政府は朝から国営放送を中心として、宣告を続けている。
街に、曲が聴こえる。
戒厳令下の新宿では、秩序維持(非常事態下での混乱を収拾し、社会の秩序を維持)、国民の保護(国民の生命や財産を保護する為、一時的に自由や権利を制限する場合がある)を目的として、以下の措置を実行する。
1. 人権の制限
・戒厳令下では、言論・出版・集会・結社・旅行の自由等、全ての自由を制限する。
2. 逮捕・拘束の強化
・逮捕や拘束等の手続きが変更され、軍による逮捕や拘束について、一切の制限を解除する。
3.治安維持
・配置された機動隊及び自衛隊は治安を維持する事を目的として、武器・弾薬の使用について、一切の制限を解除する。
午前9時過ぎ。
ユメは、ハルの家に来る。
言葉も、理由も、もういらなかった。
無音の部屋に、朝の光が差し込む。
重ねられた唇は──未来への約束ではない。
今日という終わりを共有するための“印”だった。
そして、初めて身体を重ねた。
肌の熱が、恐怖をかき消した。
互いに触れたのは、愛というより、祈りだった。
街に、曲が聴こえる。
午前10時。ハルとユメは手を取り、家を出る。
新宿、進出。
進もう 我国の子供達
真実を問う日が来た!
私達に対して 暴政への
血まみれの旗を掲げよ
血まみれの旗を掲げよ!!
聞けよ!御仏の声を!!
聞こえるか 戦場に居る
残酷な軍人の高らかな笑い声が!
彼等は 銃剣を我々に突き付け
私達の心の底まで
抉り散らす!!
前進せよ!前進せよ!
血骨を抱えて
この血を、啜り進め!!
我国への神聖なる御仏よ
私達に正しい道を お導き下さい
自由よ!正義よ!我等の夢よ!!
御仏よ 一緒に戦って下さい!
進み行く我々に
御仏の御力を!!
私たちの旗の下に 真実よ!!
永遠の夢に 震える日々
我々は同胞と共に、これを叫ぶ!!
永遠の旗を、
ここに立てよう!!
奔れ、さぁ奔れ
聖なる血が
この街を潤すまで!!
我らは活躍の舞台に立つ
仲間が流した血地の上に
我らは知るだろう
彼らの美徳の跡を
今、この身を捧げん
この血を、啜り進め!!
心無き者の雄叫びは
私達の胸に銃剣を突き付け
卑屈な笑みで突き抜く
今こそ拳を掲げよ!!!
全ての怒りを力に注ぎ
突撃!!!突撃!!!
さぁ、手を取り
夢を勝ち取る為に!!!!
※ ラ・マルセイエーズ:フランス国家:太郎訳
ハーメルンの笛は、今、折られた。
新宿蜂起に集まった国民、およそ8万人。
対する機動隊及び自衛隊、1万7000人。
Wednesday、指示を出す。
対話や議論よりも、排除を目的とせよ。
全武器・弾薬の使用を優先する。
新宿を死守せよ。