テラーノベル
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夜の森は静かだった。
城を出てからしばらく経つ。
レウは周囲を見回しながら歩いていた。
「すごい」
思わず呟く。
「何が?」
前を歩くらっだぁが振り返らずに聞いた。
「森」
「森だね」
「森だ」
「うん」
会話が終わった。
レウは少しだけ不満だった。
この感動を共有したかったのに。
らっだぁは興味がなさそうだった。
もっとも、何百年も見ている景色ならそうなのかもしれない。
レウは木の幹に触れた。
ざらざらしている。
葉を見上げる。
風が吹く。
枝が揺れる。
葉擦れの音が鳴る。
それだけなのに。
全部が新鮮だった。
今まで知らなかった。
知らないものばかりだった。
「迷子になりそう」
「なるよ」
「なるんだ」
「昨日もなった」
レウは足を止めた。
「昨日?」
「うん」
「この森で?」
「うん」
「ここに住んでる人が?」
「住んでるヴァンパイアだけどね」
らっだぁは平然としていた。
この人は本当に大丈夫なのだろうか。
「その時どうしたの」
「帰った」
「帰れたの?」
「たまたま」
「たまたま⋯」
不安しかなかった。
けれど、彼の後を歩き続ける。
しばらくすると、らっだぁが立ち止まった。
「いた」
小声だった。
レウも足を止める。
少し離れた場所。
草むらの向こう。
一匹の鹿がいた。
レウは息を呑む。
初めて見た。
本物の動物だった。
絵本では見たことがある。
けれど。
実際に見るのは違う。
大きい。
え び ふ ら い
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こにゃ
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#らっだぁ運営
青槍 未来
115
生きている。
耳が動く。
呼吸をしている。
当たり前だけれど、不思議だった。
らっだぁがしゃがむ。
「見てて」
次の瞬間。
姿が消えた。
レウは目を見開く。
風が吹く。
葉が揺れる。
気付いた時には、鹿の首元にらっだぁがいた。
音もない。
悲鳴もない。
一瞬だった。
鹿が崩れ落ちる。
らっだぁがゆっくりと立ち上がる。
青い瞳だけがこちらを向いた。
「終わったよ」
レウは言葉を失った。
速かった。
けれど、それだけじゃない。
綺麗だった。
獣を、殺したはずなのに。
どこか静かだった。
「すごい」
「そう?」
「うん」
らっだぁは首を傾げる。
自覚がないらしい。
レウは苦笑した。
二人で鹿を運ぶ。
と言っても、ほとんどらっだぁが持っていた。
レウも手伝おうとしたが、重すぎたのだ。
「弱いね」
「うるさい」
「鍛える?」
「嫌」
「即答…」
「鎖に繋がれてた人間が強いわけないでしょ」
鎖生活十六年である。
筋肉なんて育つはずがない。
らっだぁは少し笑った。
森を歩く。
風が吹く。
静かな時間だった。
やがてレウは気付く。
らっだぁが時々立ち止まることに。
何かを探すように、周囲を見ていることに。
「どうしたの」
聞くと、らっだぁは少し考えた。
「別に」
絶対に嘘だった。
分かりやすい。
「何」
「……静かだから」
「静かだね」
「うん」
それだけだった。
でも。
レウはなんとなく思った。
違う。
そういう意味じゃない。
たぶん。
ずっと一人だった人の静けさだ。
何百年も。
誰もいない城で。
誰とも話さず。
誰にも見つけてもらえず。
その静けさ。
レウは知らない。
でも、少しだけ想像できた。
森の奥で風が鳴る。
葉が揺れる。
二人は歩く。
並んで歩く。
昨日までは一人だった道を。
「ねえ」
レウが呼ぶ。
「何」
「また来よう」
らっだぁは振り返る。
不思議そうな顔。
「森?」
「うん」
少し考えて、それから頷く。
「いいよ」
短い返事。
でも、どこか嬉しそうだった。
レウは少し笑う。
その時だった。
らっだぁがふと足を止める。
「命令」
「何」
「笑って」
レウは固まった。
意味が分からない。
「なんで」
「見たいから」
「変な命令」
「そう?」
らっだぁは本気そうだった。
レウはため息を吐く。
そして、少しだけ笑ってみた。
らっだぁが目を細める。
満足そうだった。
本当に変なやつだ。
けれど。
嫌ではなかった。
むしろ。
その命令は、
今まで受けたどんな命令よりも。
ずっと優しかった。
城へ帰る頃、空は相変わらず見えなかった。
森の木々が覆い隠している。
レウは知らない。
朝の空を。
青空を。
太陽の色を。
らっだぁも知らない。
陽の光の中で見る世界を。
だから、二人はまだ気付かない。
自分たちが見たことのない景色を、
いつか同じ場所で見ることになるなんて。
その景色が、
出会いと同じくらい大切なものになるなんて。
まだ、知らなかった。
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コメント
7件
らっだぁの命令毎回優しすぎて感動… レウさんは見たことない世界を知れて幸せそう…
神様ァァァァァァァァァ 最高です!
初めて?!そっか、鎖に繋がてるから動物も見れないか...!え可哀想 れうさん笑ってくれた...!!!ヾ(*´∀`*)ノらっだぁも笑ってくれないかな〜? 続き楽しみに待ってます✨