テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ポテサラ
2,468
#実況者イラスト
アル🧩👾
11
鹿の肉は思ったより美味しかった。
少なくともレウはそう思った。
というより、まともな食事自体が初めてだった。
焼いた肉。
温かいスープ。
少し固いパン。
それだけなのに、
今まで食べたどんなものより美味しい気がした。
ちなみにスープやパンは城の奥に保管してあったものらしい。
非常食みたいなものだろうが、レウにとっては十分に美味しいものだった。
「そんなに?」
向かい側から声がする。
レウは肉を飲み込んだ。
「美味しい」
「そう」
らっだぁは頷く。
けれど本人は食べていない。
机の上には何もなかった。
空っぽだった。
レウは前から気になっていた。
「食べないの」
「食べない」
「お腹空かないの」
「空くよ」
「じゃあなんで」
「面倒だから」
意味が分からなかった。
「食べるのが?」
「うん」
「生き物としてどうなのそれ」
「生きてないから大丈夫」
らっだぁは真顔だった。
レウは言葉に詰まる。
確かにヴァンパイアは不死身だと聞いたことがある。
だから間違ってはいない。
間違ってはいないのだが。
なんだか納得したくなかった。
食事を終えた後。
レウは城を歩いていた。
探索である。
正直に言うと、暇だった。
らっだぁは昼……いや夜なのか分からないが、
「少し寝る」
と言ってどこかへ消えた。
あたりは変わらずに薄暗く、時間はわからない。
城は相変わらず広い。
そして静かだった。
廊下を歩く。
階段を上る。
また歩く。
迷って戻る。
また迷う。
遭難しかける。
「絶対おかしいって…」
城の設計者を疑い始めた頃。
一つの扉が目に入った。
他の部屋より少し大きい、重厚な木製の扉。
妙に目を引いた。
レウは足を止める。
なんとなく。
本当になんとなく、それが気になった。
ノックをする。
返事はない。
もう一度。
「……誰もいない?」
そっと扉を開ける。
部屋の中は薄暗かった。
窓には厚いカーテン。
他の部屋と同じく一切の光が入っていない。
静かだった。
そして、思っていたよりずっと質素だった。
本棚。
机。
椅子。
ベッド。
それだけ。
広い部屋なのに。
驚くほど物が少ない。
レウは目を瞬かせた。
何百年も生きているのなら、もっと色々なものがあると思っていた。
宝物とか。
芸術品とか。
他にもいろいろ。
でも何もない。
まるで。
いつでも消えてしまえそうな部屋だった。
その時。
机の上に何かが見えた。
写真だった。
レウは近付く。
古い写真。
写っているのは、どうやら複数のヴァンパイアだった。
赤い瞳。
赤い瞳。
赤い瞳。
赤い瞳。
そして、一人だけ。
青い瞳。
レウは息を止めた。
おそらく、若い頃のらっだぁだった。
今とほとんど変わらない。
けれど。
その目には光が無かった。
「……あ」
思わず声が漏れる。
その瞬間。
背後で音がした。
振り返るとらっだぁが立っていた。
レウは固まった。
いつからいたのか分からない。
相変わらずの薄い存在感だった。
「ごめん」
反射的に謝る。
らっだぁは写真を見る。
数秒の沈黙。
それから。
「懐かしいな」
と呟いた。
レウは少し安心する。
怒っていないらしい。
「友達?」
聞く。
らっだぁは少し考えた。
そして。
「違うよ」
と言った。
そして。
「…嫌いじゃなかったんだけどね」
レウは写真を見る。
笑い合うヴァンパイア達。
その中の、光の無い青い瞳。
「喧嘩したの」
「してない」
「じゃあなんで」
らっだぁは窓を見る。
閉ざされたカーテンの方を。
静かな横顔だった。
「俺は、仲間になれないから」
あまりにもあっさりした声だった。
だからこそ。
レウは何も言えなかった。
「…青かったから?」
らっだぁは少しだけ笑った。
寂しそうな笑いだった。
「そうだね」
その一言だけ。
部屋が静かになる。
レウは写真を見る。
青い瞳。
自分の赤い瞳。
村の人達。
忌み子。
化け物。
災い。
頭の中に色々な言葉が浮かんだ。
似ている。
少しだけ。
いや。
かなり似ていた。
だから。
気付けば口が動いていた。
「綺麗なのにな」
らっだぁが瞬きをする。
「何が」
「目」
レウは言う。
当たり前みたいに。
「綺麗なのに」
本当にそう思ったのだ。
初めて見た時から。
ずっと。
らっだぁは何も言わなかった。
数秒。
いや。
もっと長かったかもしれない。
そして、
少しだけ困ったように笑った。
「変なこと言うね」
その声は。
ほんの少しだけ嬉しそうだった。
NEXT=♡1000
コメント
4件
永遠に幸せでいてくれよ二人とも…
鹿肉は美味しいよね~(*´﹃`*) 私も好きだよ(*´ω`*) れうさんとらっだぁは同じなんだ...!!!瞳の色なんてどうでもいいのにね! しかも瞳に光がなかったなんて、相当辛かったんだろうな... 続き楽しみに待ってます✨