「ガランドのお手入れですか?」
洞窟の中で、マジカルマスクとマジカル安全メガネをつけたミモリンは魔道具達を丁寧に拭き拭きしながらバルザルドに尋ねました。
「ギャギャ!!クスグッテェ!!」
「ミモリン!!オレモソージシテクレ!!!」
「オレモオレモ!!」
すっかりミモリンに懐いてしまった魔道具達はピョンピョン跳ねながら口々にミモリンに言いました。
その様子はまるでモッツァレラ王国の城下町にあるアクアパッツァ保育園のようでした。
その様子を後ろから見ながら、バルザルドは言いました。
「ああ、ガランドは今おそろし山の薪割り場で薪を割っているだろうから、ミモリンは
魔道具達の掃除が終わったらガランドの元へ向かってくれ。」
「分かりました!!この子達のお世話が
終わったらすぐ行きます!!!ほーらリューサン。
またよだれがこぼれてるよー。もー。」
そう言いながらミモリンは魔法でできた
ピンク色の不思議な触感の手袋をしつつ
魔道具の一つをマジカルタオルで拭き拭き
しました。
リューサンのよだれは手で触れると骨まで溶かすほど危険な代物でしたが、ミモリンはまるで
赤子のよだれを拭くように、あっさりと
リューサンをピカピカにしてみせました。
「ウヘー、ナンカゲンキニナッタ!!!」
そう言ってリューサンはぴょんぴょん跳ねながら
元いた棚へと戻っていきました。
「あー!!こらーもーまた机を涎で溶かしてー
…….しょーがないなー。」
ミモリンはそう言いながらマジカルタオルで
机を綺麗にしました。
そんなこんなでミモリンは今日も今日とて
魔道具達をピカピカに磨き上げたのでした。
「魔王さまーおわりましたー。」
「あいよー。」
魔王バルザルドが指パッチンをするとミモリンはものすごい風によって吹き飛ばされました。ミモリンはすっかり慣れてしまった様子です。
みなさんお待ちかね、変身シーンのお時間です。
いつものように服が勢いよく弾け飛び
ウォータースライム君がミモリンの全身を
隅から隅まで洗い始めます。
今日のウォータースライム君は一味違います。
パワーアップするのはミモリンだけでは
ありません。
今日のウォータースライム君には
バルザルドがこないだ 食べられていた
食虫植物から抽出したエキスが混ぜられていました。
このエキスの美容効果は凄まじく、ミモリンはまるでモッツァレラ王女御用達の 高級
エステに行った時のように、お肌がしっとり
つやつやもっちもちのぷるんぷるんに
なりました。
「腕を上げたねー、ウォータースライム君。」
この変身にもすっかり慣れてしまった
ミモリンが胸を隠しながら言いました。
「うおおおおおおミモリンさまぁぁぁぁ!!!!俺達もパワーアップしましたよぉぉぉぉぁぉぁ!!!!!!!!!」
風によって運ばれてきた99匹のムキムキ羊達も 勿論パワーアップしています。
彼らの不潔だった厠や風呂場がミモリンに
よってピカピカにおそうじされ、
彼らの生活水準が あがったことで彼らの毛もまた、 よりふわモコ の上質なものへと
進化したのです。
「あーこれこれーやっぱこれだわこれー。」
「ありがとうございますメェェェ!!!!!!!」
ミモリンはすっかり変身に慣れてしまいました。
はじらいを持っていた頃のミモリンが恋しい
ですね。
彼らはいつものようにミモリンにおしくらまんじゅうし、ミモリンの全身の水気をしっかりと拭き取りました。
そしていつもの音楽と謎の光により
ミモリンはメイド服のような姿に変身
しました。
おそうじミモリン、スタンバイ完了です。
「ぎゃいん!!!!?」
いつものように魔法樹に思いっきり頭をぶつけて鼻血を出しガランドに向けてお尻を突きだし倒れるミモリン。しかしガランドはそんなミモリンをまるで気にせず、淡々と薪を
割り続けました。
「どうもー、お手入れしにきましたー…..。」
ミモリンの声かけに応じず、ガランドは
淡々と薪を割り続けます。その動作には
まるで無駄がありませんでした。
ガランドは淡々と、淡々と、心地よい音で
リズミカルに薪を割り続けました。
「…….あのー。」
ミモリンの問いかけにガランドはまるで
答えようとしません。嫌われてしまったのでしょうか?
「あぁ、ミモリン。ガランドはボクの命令に
しか答えないように魔法で設定されてるんだ。」
ミモリンの首の鈴から魔王バルザルドの声
が聞こえました。
ガランドはその陶器のような美しい表情を
まるで変えず、汗一つかくことなく薪を割り続けます。それもそのはず、
ガランドは 陶器のゴーレムなのです。
「ガランド、薪割りをストップしなさい。」
ミモリンの首の鈴からバルザルドの声がするとガランドはピタッと動きを止めました。
「ガランド、ミモリンに挨拶。」
バルザルドがそう言うと、ガランドは
モッツァレラ王国に伝わる由緒正しきお辞儀をミモリンにしました。
「ガランド、自動防御システムを一時停止
して服を全部脱ぎなさい。」
「ええぇ!!!!?」
バルザルドの命令にミモリンが驚いていると
バッとガランドが服を全て脱ぎ捨てました。
脱ぎ捨てた服は小さな羊の魔物がエッホエッホとどこかへ運んでゆきました。
ミモリンはふさふさの毛が生えた両手で
自分の目を塞ぎながらちらっとガランドの
身体を見ました。
ガランドの胸筋は美しく盛り上がり
筋肉は惚れ惚れするほど綺麗に割れ、
黄金比のような美しさでした。
その姿はまるでモッツァレラ王国の王立美術館にある美しき彫刻のようでした。
その筋肉の美しさにミモリンは
ドキドキしました。
(いやいやいや相手はゴーレム相手はゴーレム!!!!)
両手でほっぺをパンパンしながらミモリンは
冷静になりました。
「ガランド、ミモリンに背中を向けて
おすわり。」
バルザルドがそう言うとガランドはバッと
全裸のまま、ミモリンに背中を向けました。
お掃除開始です。
ミモリンはマジカルスポンジとバルザルド
から貰ったおそろし山の薬草から作った洗剤でガランドの身体を丁寧に洗いました。
ガランドは表情一つ変えません。
なぜなら彼はゴーレムだからです。
「ガランド、ミモリンにお尻を突きだして
四つん這いになりなさい。」
「えぇ!!!?」
ミモリンがバルザルドの命令に驚いていると
ガランドはバッと四つん這いになり、ミモリンに尻の穴を見せつけました。ガランドの
尻の穴は黄金比のように美しい形をしておりました。ガランドを造った魔法使いはきっととんでもないド変態なのでしょう。
「どうしたんだいミモリン?ガランドは
陶器のゴーレム、何も気にすることはないよ?まさか君は食器を洗うときに興奮する
性癖なのかい?」
バルザルドは穏やかな口調でそう言いました。一歩間違えればセクハラものの発言ですがここはおそろし山。おそろし山にセクハラなどという概念は存在しません。
「うっううう、これは掃除これは掃除そうじしなきゃそうじしなきゃそうじそうじそうじそうじ…….ゔぅぅゔぅッ…….!!!」
ミモリンはおそうじミモリン大掃除モードになりその場をやりすごそうとしましたが、羞恥心が邪魔して大掃除モードになれませんでした。
ガランドはミモリンに尻の穴を見せつけた
まま無表情でじっとしています。
「とっ、とりゃぁぁぁあああ!!!!!!」
ミモリンが大声を出し、ガランドの尻の穴を掃除しようと したその時です。
「お取り込み中失礼しやすぜぇ、一大事で
さぁ。クソデカオオサンショウオがこっちに
近づいてますぜぇ。」
どこからか現れた糸目の胡散臭い男
フージャがタキシード服の ズボンに
手をつっこみながら現れました。
「ひょえええええ!!!!!」
突然現れたフージャに驚いたミモリンは転んで後頭部を地面に 打ち付けました。
「ギャロロロロロロロギョエエエエエエ
!!!!!!!!!」
ものすごい大声と地響きのような足音が
聞こえます。おそろし山に流れる川に生息
するクソデカサンショウオの足音です。
およそ25mはあるクソデカサンショウオは
おそろし山の木々達を踏み荒らしながら
どかどかと進んでゆきます。
「え、え ….ええ!!?あれなんなんですかぁ!!!!????」
ミモリンはアワアワしながらフージャに聞きました。
「あれはクソデカサンショウオ、おそろし山の川に生息するとてつもなくでかい化物
でさぁねぇ。…….魔王様、緊急事態ですぜぇ。《憑依》の許可を!!!!」
「許可する。」
フージャの進言を魔王バルザルドは許可しました。
フージャはミモリンに顎クイしました。
「失礼しやすぜぇミモリン。」
「ふぇ、何を!!?ムグッ。」
フージャはミモリンにキスをしました。
フージャは知性を持つ細菌の集合体。
フージャは糸目の男の身体からミモリンの
身体へと口移しで移動しました。
(なにこれ…..身体が熱い、頭がボーッとする
…….でも、今ならなんでもできそうな気がする。)
ミモリンの髪と腕のふさふさな毛は
サーッと真っ白になりミモリンの大きな目はとろんとうつろになりました。
憑依合体、病ミモリン。
スタンバイ完了です。
「ギャロロロロロギョエエエエエエ!!!!!」
クソデカサンショウオはミモリン達のことなど気にせず進撃します。クソデカサンショウオはこの時期産卵をするためにおそろし山の河川から湖へと移動する習性があるのです。
ですがミモリン達にはそんなこと、
知ったこっちゃありません。
「…..ケホッ。」
ミモリンは軽く咳払いをしました。
「ハッ…..ハッ……ハーーーーックションッッ!!!!!」
ミモリンがそう叫ぶとミモリンはものすごい
スピードで飛び出しクソデカサンショウオの顎に思いっきりアッパーをかましました。
「ギョエエ!!?……ギョエッ!!!!」
クソデカサンショウオは顎にものすごい一撃を食らって一発でダウンしました。
「…..ケホッ。」
ミモリンは軽く咳をして地面に倒れ込みました。
きっと力を使い果たしたのでしょう。
フージャは《憑依》を解き、
元の糸目の男の身体に戻りました。
「フージャッジャッジャァッ!!!、思ったとおりですぜぇッ!!魔王バルザルドの心臓を受け継いだ ミモリン!!!その潜在能力はこんなもんじゃありやせんよぉ!!!!配下の細菌達に頼んで
クソデカサンショウオをこちらに向かわせるよう操らせやしたがァ…….いいデータが
とれやしたねぇ魔王様ァァァァ!!!!!!」
フージャッジャッジャッ、と高笑いしながら
フージャはどこかへと消えて行きました。
「うん、それにいいものが手に入った。」
魔法で一瞬でミモリンのもとへとあらわれ
力を使い果たしすやすや眠るミモリンを
お姫さまだっこしながら、バルザルドは
言いました。
「クソデカサンショウオの肉は白身魚
みたいで旨いんだ。今日は皆で鍋にしよう。」
そう言って魔王バルザルドは舌なめずりを
しました。
さて、魔王やフージャ達の陰謀も知らずに
すやすや眠る我らがミモリン。一体全体どうなることやら。
ハッピーエンドになるといいですね、ミモリン。
(次回 皆で鍋パーティー、孤独なリュカを
救え!!!! 次回もお楽しみに☆)
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