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「そうなの? 気になるの? どうしようかなぁ? 教えて欲しかったら、それなりの物を用意してもらわないとねぇ…」
千葉は親指と人差し指で輪を作り、お金のポーズをとっていた。
「うるせぇ…いいから早く教えろよ!」
千葉の態度にイラッとして、気付いたら胸ぐらを掴んでいた。
「もぉ~~男ってすぐ暴力をふるうんだから…。いつだって私みたいなか弱い女性が犠牲になるのよ…」
千葉はハンカチで涙を拭くフリをしていた。
「そんな三文芝居はいいから早く教えろ!」
「わかったわよ。言うわよ。私が、2日後に素敵な男性に出逢うって教えてくれたの。いゃ~ん、どうしよ~~」
「好きにしろっ」
「それより他に聞きたい事があったんじゃないの?」
「何でジャンケンなんかしてたんだよ?」
「ちょっと気になる事があったからよ。私これでも一応女だから勘が良いのよね」
「何が言いたいんだ?」
「私、高3の時に言ったわよね。あの双子の見分け方」
「確かに言ってた。それでジャンケンをしてた訳か…。何かわかったのか?」
「あなたも勘づいてるはずよね。私にわざわざそんな事聞いてくるぐらいだから…」
「・・・・・」
「あなたの勘、当たってると思うわよ」
「瑛太…美咲ちゃん…遥香をこんな立派な大人に、素敵な女性に育ててくれた事…産みの親としてお礼を申し上げます。ありがとうございました」
葵…‥
まさか君は…‥
そんな…‥
どうしても確かめる必要があった。
でも、どうやって…‥
あっ…‥
これしかない。
【亜季ちゃん…】
僕は、席に座っている亜季ちゃんを見ながら心の中で亜季ちゃんを呼んだ。
【亜季ちゃん…】
僕は何度も亜季ちゃんを呼んでみた。
でも、亜季ちゃんには全く聞こえていなかった。
もしかしたら聞こえているのに聞こえていないフリをしているのかもしれなかった。
【亜季ちゃん…‥
本当は聞こえてるんだろ?
どうしても君に伝えたい事があるんだ。
何も言わなくていいからそのまま聞いてくれ。
言わなくてもいい事だと思うけど、もう自分の気持ちに嘘はつけない。
僕は…亜季ちゃんを見ていて思ったんだ。
いや、僕は自分の気持ちにずっと嘘をついてきた。
僕はあの頃の気持ちを過去に置き去りにして来てしまっていたんだ。
でも今、やっとその気持ちを取り戻す事が出来た。
何も変わっていなかった。
もっと早くこの気持ちに気付くべきだったんだ。
そしてもっと早く伝えるべきだったんだ。
亜季ちゃん…‥
僕は今でも亜季ちゃんをすっ…】
「やめてっ!」
突然の葵の叫び声に会場が一瞬にして静まり返った。
でもそれは…僕の心の中を読んだと言う事を証明するには十分だった。
葵…君には心を読める能力はなかったはずだ。
「葵…やっぱり君は…」
「・・・・・」
これで、ようやく疑惑から確信へと変わった。
「本当の事を…真実を教えてくれ!」
「本当の事? 真実? 一体何の事言ってるの?全然わかんないよ…」
「まだ僕を騙し続けるのか…」
「・・・・・」
スクリーンに映る葵は、口を閉ざしたまま俯いていた。
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
それでも何も語ろうとはしなかった。
「亜季ちゃん、ごめんね。私のせいで…ずっと苦しめてきた」