注意事項
・この作品はwrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・軍パロです。
・話題の新メンバーrpくんが出てきますが、色々と主の都合によって性格、スキル等が本人様と違うところがあります。
追記↓06/27
・没作品です。オチ弱。
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幹部になってから1ヶ月も経たない頃、
新しい幹部、つまりは俺の後輩ができた。
俺だってまだ新人だと言うのに、新しい後輩に皆は付きっきり。
俺は軍学校を卒業していない。
情報屋をしていた所を同郷のtnに拾われた。
だから、皆には色々教えてもらわねばならなかった。
なのに、皆は新しい後輩ばかり。
後輩は、俺より下のくせして身体能力が高かった。
先輩と内ゲバもできる、隣に立てるほどには強かった。
イタズラも好きで、皆と笑いあっていた。
ずるいなあと思った。
俺は、まだそいつと喋ったことがない。
喋りたくない。
俺の居場所を奪ったやつなんかと。
───────────
「おい、ci来たぜ…!!」
午後になると、ciは一般兵棟へ行き一般兵に訓練に付き合ってもらう。
教えてくれる先輩がいないのだから、一般兵に教えてもらうしかないのだ。
だが、それは身についているのだろうか。
「よ、よろしくお願いします…っ。」
「今日は受け身の練習な。」
5人に囲われ、一方的な暴力を受ける。
それに耐え、1時間意識を保てていたら訓練は終わる。
意識を途中で失ってしまえば、冷水で起こされ今度は拘束の訓練を受ける。
ciは断れなかった。
こうでしか、自分は訓練ができないから。
訓練が終わり、幹部棟に戻る。
痛い身体はいつも長袖で隠してはいるものの、痛いものは痛い。
部屋に戻ってからは泣いて吐いての繰り返し。
そうして、落ち着いたら今度は訓練所で自主練をする。
こんなに頑張っているのに、褒めてくれる人は誰もいなかった。
先輩は後輩に夢中なのだから。
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「tn、書類できた。」
「おう、ありがとぉな。」
tnに書類を渡し、チェックが終わるまでぼーっとしている。
ああ、昨日殴られた背中が痛いな。
背中は自分で見えないから手当もしずらい。
そう考えていると、tnの声と共に書類を見せられた。
「ここ、ミスっとるよ。前回も誤字脱字は気をつけろ言うたやろ。」
「…あ、ぁ、はい。」
「まあ、それ以外は完璧やね。せっかく全部書いてくれとるし、ここに矢印書いて誤字脱字治しな。シャーペンかなんか貸そか。」
そっと、書類を受け取る。
「ええよ、全部書き直してくるわ。」
「え、大変やろそんなんしたら。」
「ええねん。不格好な書類嫌いやねん。」
「そ、そおか。」
うん、と頷き書記長室を出る。
出た先にある喫煙室にutとshpと、rpがいた。
rpは煙草を持っていないが、喋るためだけに喫煙所にいるのだろう。
楽しそうにへらへら笑っている。
ciは書類を強く握りしめてしまい、くしゃりと書類が折れる。
慌てて力を弛め、rpを睨んでその場を走り去った。
ずるいんだ。
ciはまだ1度しかut達と喫煙室に行ったことがない。
最初、誘われた時にまた吸おうなって言ってくれた。
もう、誘ってこないくせに。
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「…ぁ、もう午後か。」
書類に走らせていたペンを置き、立ち上がる。
それから幹部棟を抜けて一般兵棟に向かう。
一般兵棟の訓練所にはもう既にいつものメンバーが揃っていた。
「よろしくお願いします、」
「ああ、今日は骨の強化をしよう。」
「骨の、??」
すると、ガタイのいい男がciを押さえつけた。
と、同時にゴキリッと左手の指を1本。
じんっとした痛みが来たと思えば、ズキズキと強い痛みに襲われる。
暴れたくても押さえつけられている。
ゴキリッゴキリッ。
左手の感覚が薄れていく。
そして意識もふわふわしてきた。
でもだめだ。意識を失えばもっと痛いことをされてしまう。
耐えるんだ。耐えるしかない。
そして、次に足を掴まれた。
足を折るとか、力強いな、なんて思っていると突然の吐き気に襲われた。
ガタイのいい男の足を吐瀉物で汚してしまった。
男はキレて、ciの顔面を蹴り飛ばした。
そして、足を顔面に乗せ仲間に持ってこさせた冷水でciの顔面ごと洗い始めた。
水が鼻の中に流れ込む痛みはもう慣れた。
足から洗い流される自身の吐瀉物が口の中へ入っていく。
気持ちが悪いが、これは自分が悪いから仕方ない。
そして、気がつけば男たちはいなかった。
重い身体を持ち上げ濡れた顔を服で拭う。
ズキリと痛む左手は、全ての指が色んな方向に曲がっていた。
手当めんどくさいな。
そう思いながらciは幹部棟に戻った。
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「ぁ、ciさん…!!」
rpは気にしていた。
話しかけてこない1人の先輩に、唯一目をつけていた。
午後になると幹部棟から消えてどこかへ行く先輩が気になっていた。
時々睨まれるので、話しかけてこないのは恐らく嫌われているから。
でも別にそれはいいのだ。
気にしているのは先輩の身体だ。
白いシャツに泥がついていたり、赤い何かがうっすらと透けていたり。
手当もろくにされていない傷だろう。
でも自分が幹部になってから他の先輩は自分に構っていた。
ciという先輩は、rpより1ヶ月ほど先に幹部になった。
まだ新人なのに、先輩は全てrpに集まっていた。
1人で訓練でもしているのだろうか。
夜中、たまに見かけるし。
でも、背中なんて自主練では怪我しない。
潜入訓練なども行っていないし。
となると、考えられるのは誰かから暴力を受けているということ。
そう思い、rpはciを観察しようと考えた。
今日、考えたのだ。
夜になり、空が暗くなってきた頃、居なくなったciを探しに幹部棟を歩き回っていると、丸まった背中を見つけた。
白いシャツに泥がついている。
淡い水色が風でふわふわと揺れていた。
それは、壁にもたれながら歩いていた。
「ciさん、泥が…。」
そう声をかけようと近寄ったら、ciは驚いたように振り向き手を払った。
「あッ…、ご、ごめんッ、rp、さ、さん…か。」
見逃さなかった。
左手の指が異様に腫れているのを。
「…ciさん、怪我してますよ!!」
「う、うんッ…こけ、ちゃって。」
早く立ち去りたいのか、足は動いたまま。
でもrpは追いかけた。
「あの、暴力受けてますよね、??」
「…、」
「脅されてるんですか、??」
「…お前が悪いくせに。」
「え、??」
ciはギロリと睨んだ。
rpはその圧力に体を固められた。
「話しかけてこんで。お前には先輩がおるやん。」
ciはそう言うと、早歩きで去っていった。
その場で固まっていた。
ciは確かに自分を嫌っているようだ。
でも、どこか助けを求めたような瞳をしていた。
それよりも怪我を手当しなければ。
「あれ、rpやん。なにしてんのー??」
と、呑気にutとknがやってきた。
「…ut先生とknさん、ciさんって…。」
「んぁ、ciぉ??ciがどぉしたんよ。」
「ciさんって、幹部の中で強いんですか??手合わせとかしてる所、見たことないんで。」
「あー…、あれ、??どうやったっけ。すまん、僕あいつと訓練したことないわ。」
knある?と、utがknを見る。
「俺もないで。」
「え?」
utとknがぽりぽりと頭を掻きながら言った。
すると、後ろからzmとrbが歩いてきた。
風呂上がりのようだ。
「よーっす!!」
「あ、なぁ…zmとrbって、ciと手合わせしたことある??」
「え?ci、ないよ。誰が教育係やったっけ。」
「tnちゃう??連れてきたんはtnやろ??」
2人は顔を見合せてそう言った。
「言われてみれば、ciが誰かと手合わせしてんの見たことないなあ。」
「自主練はしてんねやろ??訓練所にたまにおるし。」
集まって話をしていたため、うるさかったのかtnとem、shpそしてshoまでやってきた。
「おいうるさいぞー、粛清されたいんかー。」
「あッ、なあtn!!ciの教育係やろ??ciって強いん!!」
zmが駆け寄り尋ねる。
「…はぁ、??教育係はrbとshoに任せたやろ。俺ちゃうわ。」
「…あれ、rb??sho??」
zmとshpが2人を見る。
2人は目を見開いていた。
「えッ、あれ!?俺だったっ!?」
「嘘やろ!?!?!?」
「はぁ??お前ら忘れてたんかよ。てか、お前ci放ったらかしてrp見てたんか。」
「ご、ごめん!!忘れてたぁぁ!!」
「だ、だって…知り合いが入ってきてくれたから、嬉しかってんもん、!!」
rbが珍しく慌てていた。
「…、ciさん、」
rpはtnに叱られている二人を眺めた。
emが口を開いた。
「ciくんって、確か今一般兵に訓練手伝ってもらってるんちゃうかった??」
「んえ、そーなん??」
shoがemを見る。
と、同時に皆も見る。
「うん。ciくんの予定表にな、午後から一般兵棟に行くっていうのがよく書いてあるから。」
そうして、rpはようやく察した。
ciは一般兵に訓練というなの暴力を受けているということを。
訓練で、しかも一般兵とで、普通にやればあんな怪我するはずがない。
「…あの、一般兵棟の訓練所って監視カメラありましたっけ。」
「ああ、あるで。でもあそこ使用してる人おらんのちゃう??ほら、一般兵棟のすぐ隣に全体用のおっきい訓練所できたから、皆そこ使ってると思うで。」
だから、ciは誰にも気づかれなかったのか。
「見せてください!!!」
「お、おう??」
rpはrbに着いて行った。
皆も気になり、着いて行くことにした。
─────────────
「ふッ…、ぅッ…。お"ぇッ。」
喉奥に手を突っ込み、気持ち悪さを吐き出す。
左手は氷を食堂から持ってきたので冷やしている。
折れてしまったので、きちんと固定もした。
「はッ…ん、はぁッ…。」
額の汗がぽつぽつと落ちる。
キツイ。呼吸を止めてしまいたい。
自室に戻り、ベットに寝転がる。
背中がずきりと痛み、顔を歪めてしまうがすぐに落ち着く。
慣れだ。これは慣れてしまう。
でも、痛いのは好まない。
机に置いてあるナイフや、綱。
何度も考えた。いけないことを。
でも、どれもこれも痛くて辛くて。
その先が怖くなってしまった。
そう思うと、まだ自分は生にしがみついているんだなって呆れた。
首を撫でる。
綱の跡がくっきりと残ってしまった首を。
手首を撫でる。
ナイフで切ってようやく傷口が塞がった手首を。
そして、自分を撫でた。
頑張っていると褒めてやった。
でも、自分で自分も褒めても。
仲間に褒められたい。
rpにきついことを言ってしまった。
こんなはずじゃなかった。
仲良くなりたかったんだ。本当は。
でも、お前が悪いんだ。
先輩を、新人である俺を、奪ったお前が。
ずるいんだ。
世界は弱肉強食と言う。
そんなの卑怯だと思う。
明日になってしまう。
それから、また午後が来てしまう。
時計の針の音が不安を生ませるので床に叩きつけてやった。
ガシャンッという音とともに壊れた。
これでいい。
いっそ、時間も止まればいい。
「ci。」
いっそ。
このままお前らに手を伸ばしてもいいだろうか。
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「…tn、どう??」
「ああ、寝たっぽいわ。医務室まで連れてこう。」
tnの背中におぶられたciは、見るからにぐったりとしていた。
rpは静かにその様子を見ていた。
rbとshoは反省しているのか、悲しそうな顔をしていた。
医務室に連れて行き、まずはsnに事情を説明する。
それから、身体を見てもらった。
怪我が酷かった。
放置された怪我は悪化しているだろう。
左手の指は全部折れていたらしい。
だが今日、昨日辺りでできた傷だと言われた。
早めに気がつけてよかった。
睡眠不足に、栄養失調も持ち合わせていた。
そういえば、ciは最近何かと理由をつけて食堂に来なかった。
いや、来てはいたのだろうが皆と同じ時間には来なかった。
きっと、先輩も後輩も見たくなかったのだろう。
ciは医務室の小さい個室に移動した。
ここは、幹部の中でも限られた人しか入ることが許されていない個室だ。
snの考えであると、ciは精神やメンタルも壊れている。
そのため、幹部では選ばれた人でないと暴れてしまう可能性があるということ。
まずはtnが選ばれた。
tnが部屋に入った時、確かに安心したように息をついて眠った。
それからsn、gr、os、htは選ばれた。
ここ4人は何かと気にかけていたので、rpが来てからもciとはたまに話していた。
それから、emが選ばれた。
ciの書類などの教育係であったこともそうだし、なにより非戦闘員であったemは過去に暴力を振るわれたこともあったからだ。
気持ちを理解するのには最適だ。
それ以外は禁止されてしまった。
特に、rbとsho、rpは医務室で声をあまり発さないで欲しいとまで言われた。
個室であるとはいえ、声は聞こえてしまう。
rbとshoは受け入れた。
rpは悲しそうに俯きながらも頷いた。
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「ci、起きてたんやね。」
「……、??」
数日後、個室に入るとciが起きていた。
snはお茶を持ってきて、机に置いた。
「体調は??怪我は??」
「…、くんれん、」
「訓練は行かないでいい。今は休もう。」
ciはぶわっと涙を浮かべた。
「これいじょう…、おいていかれたら、こまるんや、ッ…。」
「…誰も置いていかない。俺は待ってるし、なんなら戻ったるよ。」
「…ッ」
涙を拭い、コップを渡す。
「お茶飲んで。数日間点滴だったから。」
「…、みんなは、??」
「皆はくんれ…、じゃなくて、書類やっとるよ。誰か呼んで欲しい??」
訓練と言えば、またciが苦しむだろうと考え、咄嗟に書類と嘘をついた。
ciはお茶を飲み、はふ、と息をついた。
「…tn、は??」
「tnね。grも呼んでええかな。」
「うん、」
「分かった。ええ子で待っててな。」
ふわっとした水色髪を撫で、個室を出る。
暖かいお茶をちびちびとciは飲んだ。
────────────
暖かくなったせいか、ぼんやりと視界がぼやけてきた。
眠い。先程まであれほど寝たのに。
ciがこっくりこっくりとしていると、扉が開いた。
「ci、眠そうやね。」
「ん…、」
tnだ。
tnはベットの隣の椅子に座り、ciの頬を撫でた。
「ん、コップ貸し。そのままやと零すぞ。」
コップを渡し、寝転がる。
んん、とtnに近寄るとtnは頭を撫でてくれた。
「お前はまだまだ子供やな。」
「…、じゃあ、ちゃんと世話してや。」
「せやね。すまんかった。」
「…おいて、かんでよ、」
「お前は進んどるよ。書類やってミスも少ないやろ。戦闘なんてな、捨ててもええねん。」
「…でも、」
「emやってそうやん。emは非戦闘員やろ??ciも、そーすりゃええねん。」
「emさんは、さいのうがあるやん…。やから、たたかわんで、ええ。」
「才能っているんかな??ciは頑張っとるやん。その頑張りは、きっとなによりも凄いと思うで。」
なあ?とtnが扉の方を向く。
ciもちらりと向くと、扉が開いた。
「ああ、勿論だぞ。」
総統だ。
大きな身体はいつもより大きく見えた。
tnとは逆側の椅子に座り、ciを見た。
「ci。すまなかった、私のミスだ。お前もまだ新人だと言うのに、教育を無視していた。すまない。」
「…ほかのひとと、訓練、してたで、??」
「これからは、ちゃんと見てやる。訓練だってして、遊んで、話して、一緒にやるんだ。お前の周りに何人の優秀な人がいると思っている。いいか、ci。焦らないんでいいんだ。お前のペースというのがあるだろう。」
かっこいい声に気を取られて、なんて言っていたのかはあまり分からない。
でも、ciは嬉しかった。
grが自分に優しい笑顔を向けてくれたことが。
「ci。私はお前を気に入っている。お前が取られたら私だってそれほどの罰を与える。」
「ci、どういう事は分かるか??」
tnに聞かれ、grを見つめる。
分からない。
黙っていると、grがにやりと笑った。
「もう奴らはこの世にいないということだ。」
「…、え?」
「私のお気に入りを傷つけたんだ。当たり前だろう??」
「…、」
ciは一気に涙が溢れ出た。
grが笑いながら拭ってくれた。
tnは笑いながら頭を撫でてくれた。
grが自分をお気に入りと言ってくれたことも嬉しい。
でも、それよりも自分のために動いてくれたことが嬉しかった。
grとtnが去った後、emがやってきた。
emは隣に座り、本をいくつか机に置いた。
「…これなに、??」
「どれも面白いよ??これとか、おすすめやな、暇やろ、ずっと寝てんのは。」
くすりと笑って本の題名を見せた。
ciはemの顔を見る。
優しい顔、でもあまりじっくりと見たことは無かった。
「…ciくん、頑張ったね。」
「…え、??」
「私もね、昔はciくんと同じだったよ。だから、私には分かる。ciくんは強いって。」
emはciの傷だらけの手を撫でた。
「私ね、殴られた時失神して大事件になってもうてさ。んふふっ、ほんま阿呆みたいやろ??でも、ciくんは強いなあ。偉いやん。頑張ってたんやね。ほんま、見てやれんくてすまん。」
「…emさん、」
「んふ、なぁに??」
「…emさんは、rpどう思う、??」
「ええ子やで。ciくんと気ぃ合うと思う。」
「…、そっか。」
emは本のうち、1番薄い本を手に取った。
「読み聞かせしたろうか??」
「どんな拷問やねん、くふふッ。」
「んふふっ。」
emは開いていた窓を閉じ、カーテンも閉めた。
「じゃ、私は行きますね。恐らく、osさんがお菓子を用意してたから、来ると思うで。」
手を振って、扉の外へ消えるemを見送る。
ぐう、と小さく鳴ったお腹を優しく撫でる。
─────────────
「…あの、ciさんには、」
rpが1人、なにやら箱を持ってやってきた。
「…ごめんね、会わせたいんだけど。」
「…はい。」
snは個室を見る。
今は、osとhtがやってきていて、共にお菓子を食べているだろう。
rpも、ciは1人の先輩であるのだから、気になるのは分かる。
「すまんなあ、またこっちから聞いとくから。許可出たら、おいで。」
「…分かりました。」
去ろうとするrpの手に持たれた箱を指さす。
「それは??」
「これ、ciさんへのプレゼントです。で、でも、自分から渡したいんで…。」
「あはは、可愛いね。いいよ。」
「は、はい。」
プレゼントかあ、とsnは顎に手を当てた。
何かあげようか。
それから、わいわいと楽しそうな個室に入る。
────────────
ふと、外の空気が吸いたくなって、個室を抜け出した。
医務室の椅子に、snが座って寝ていた。
今のうちだ。
ciは暗い廊下を歩き、屋上へ向かった。
空はとっくに日が落ち、真っ暗だ。
でも、どこか気持ちが良い。
ふう、とフェンスに体重を預けて、空を見上げる。
「…、きれー。」
綺麗な夜空。毎日見ていたらきっと気が付かない。
ひとつの当たり前の素晴らしさを、実感する。
そうして、日々の速さに戸惑う。
痛む手を眺め、それからぷらんと下に下ろす。
屋上は高く、でもどこか低く。
下を見れば、足元が浮かんでしまう。
そんな感じがして。
自分がここから落ちたとて、夜空は変わらない。
真っ赤な花が咲くだけ。
それだけでも、素晴らしい。
いや、それが素晴らしい。
結末は難しい。
考えることも、理解することも。
ああ、何が何だか分からない。
でも、分かるのは怖い気がして、分からないままでいていたい。
顔を屋上から出す。
髪の毛がばらばらと暴れるが、気にはならない。
生きていたいかい?
生きていたいさ。
まるで、髪の毛がそう訴えているように。
「…はは、ぽっくりしにそー。」
「ダサいですよ。」
突然の声に驚き、本当に屋上から落ちかけた。
振り返ると、そこにはrpが立っていた。
「…は??」
「その死に方はダサい。」
rpは箱を手に持っていた。
何しに来たのだろう。
「…、すみませんでした!!」
考えていると、rpが深く頭を下げた。
「えっ、え??」
「ciさん、俺、貴方と友達になりたいです。」
「…え?」
どういう訳だが分からず、ciは頭にはてなマークを浮かべていた。
「先輩とか、後輩とか。そういうの、めんどくさいじゃないですか、なら友達にしません??いっそのこと。」
「…、それで、お前はええんかよ…。」
rpはまっすぐciを見つめていた。
「はい。友達やったら、きっとciさんと仲良くなれるかなって。それで…これも。」
rpは箱を開けて、ciに渡した。
箱の中身は、水色のフクロウのぬいぐるみ。
といっても、手のひらサイズの可愛らしいもの。
「…え、なにこれ、かわいい。」
「俺はこっちの、ヒョウです。」
「…わあ、おそろい??」
「…同期なんで。」
別に同期は仲良し、とかいうのは無いが。
そう思ったが、ciは心に閉まった。
「…rp、って呼んでええ??」
「もちろんですよ!!」
「なら、敬語も外してぇや。」
「あはは〜、考えときまーす!!」
rpはciの手を引っ張り、フェンスから離した。
それから、カーディガンをバサッと乱暴にかけた。
「風邪引かないでくださいね!!ダサいから。」
「お前こそな。」
チャリンッ、と。
お互いのポケットから可愛らしい友情がちらりちらりと顔を出していた。
夜空には、水色と銀色がふわふわと輝いていた。
結末は、知らぬまま。
放置されてた没のくせして、9000文字あるの草
コメント
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一般兵には暴力受けて、仲間には構って貰えなくて、それでも耐えたciくん凄いし偉すぎる …!! その中rpくんが1番心配して気にかけてたのくそ好きですす … 🫶🫶 最後のやり取りで うっ… ってなったと思ったらプレゼントが手のひらサイズのぬいぐるみ … !! しかもおそろい … !? でとどめ刺されました 😇 もう好きすぎる … !!
すんごいすんごい好きすぎた
もう 、 泣けた 。