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水着もだけど、欲を言えば浴衣だって見たい。それに、これからの季節の私服だって見たいし、焼肉とか、好きなものを食べている姿ももちろん見たい。焼肉好きなのかは知らんけど。
知らない姿、全部見たいって欲張るのは、きっと柴崎だけ。だからこそ、男慣れしているのとか腹立つし、男を知っていること時点で、まあ、普通にむかつくわけで。
ちょっとだけイラついていると「なに?顔怖いよ?」と柴崎が見上げてくる。はい、可愛い。俺の目は柴崎にたいへん甘いので、怒りもすこし収まった。しかし、顔を怖くさせている訳では無いので「元からこーゆー顔ですね」と惚けてみる。
「ていうか、いい加減、これ邪魔じゃね」
「ちょっと!勝手にとろうとしないで!」
食事も終えたので、そろそろ良いだろうと柴崎のガウンに手をかけると、可愛い柴崎は突然俊敏な動物と化して逃げるから、俺の闘争心は簡単に煽られる。
「ねー、そろそろ見せてよ。俺、ぶっちゃけるとこの1週間、柴崎の水着を見るために生きてきたんですよね」
「そ……それはさすがに、盛りすぎでしょ?」
「本当だって。千景に聞けばわかるし。昨日もバイト中ずっと浮かれてたから、うぜえって軽く100回は言われたし」
「チカくんが、うぜえ、なんて言うはずないから、それは柊の嘘でしょ」
いや、本当だって。どうして柴崎は千景のこと、こうも信用してんのか。あいつ中々にクズいよ?知ってる?
……待て、論点がズレた。千景のことはどうでも良くて、今は柴崎の水着だ。
「あーあ、俺の一週間の楽しみがー……」
肩を落として、両手で顔を覆いチラッと指の隙間から覗いた。
当の柴崎ほとりは、恥ずかしそうに顔を俯いて、やがて決心したようにガウンの紐を解いた。しゅるりと落ちる柔らかそうな布から、白い肌が見えた途端。
……え?なんで?
俺は柴崎の姿に目を疑った。
俺はてっきり、柴崎が最初に選んだものを買ったとばかり思っていた。実際、柴崎がそう言ったのだからな。
しかしどういうわけか、柴崎が着ているのは、俺が選んでやった黒の水着だ。
リングとかついていて、ショーツは紐になっているタイプのそれは、見た瞬間に脳内で着せ替えてみると抜群に似合うものの、柴崎は絶対着ないだろうな、と決めつけていたもの。
時折やってくるネオンライトで照らされているけど、間違いなくあれだ。
……え?まじで何で?
毒気を抜かれてぽかんとしていれば、柴崎はお腹のあたりに腕を回して、白い肌を隠そうとする。
「柊、ちょっと見すぎだから、そろそろ向こう向いてよ」
暗くてよく見えないけれど、たぶん、真っ赤になっているはずの柴崎に言われ「え、ごめん?」と、わけも分からず別方向へと視線を漂わせる。
柴崎のお望み通り、俺の目は知らない誰かを捉えたその時、急に柴崎の両手が顔を包み込んできた。
強引に引き戻される視線。目下には悔しそうに口を歪ませる柴崎が居て、心臓が燃えるように滾る。
「や、やっぱそれヤダ。水着美女を見ちゃダメ」
えー……何急に可愛いわがまま言ってんのこの子。狙ってる?それ絶対狙ってるよね?
不器用な女の子だって分かっていても、混乱した脳では正常な判断は難しい。
想像の100倍くらい破壊力のある姿に、俺の俺もちょっと充てられてしまっている。水着でやられるとか、中学生ですか?プールでクールダウンしないと俺の威厳があやうい。
白山小梅
12
ということで、同世代で賑わうプールに入る。七色に輝く水面を揺らして、水の中に身を投じると、冷たすぎない水温が心地よかった。
カップルもいるけれど、圧倒的に女子の方が多い。
水着美女?どこを見渡しても、目の前にしか居ませんけど、柴崎の目はどうも節穴らしい。
柴崎はよく分からないキャラクター?の浮き輪に乗って、ふよふよと水面に浮いている。柴崎は特大サイズの浮き輪に乗るのは初めてらしく、大袈裟に喜んでいるから、それだけでもう、誘ってよかったと思える。
「なあ、なんでそれ買ってくれたの」
浮き輪から降りた柴崎は、”柊も乗りなよ”とありがた迷惑を言ってくるので、回避先を水着に絞る。すると、柴崎は気まずそうに視線を逸らし「……なんとなく」と、なんでもないような返事を寄越した。
絶対、なんかあるだろ。
「……そ。俺にサプライズしてくれたと受け取る」
「べっつに!ていうか、そんなんじゃないし。もう知らん!」
「ほとちゃーん、超ごめん」
水着美女さんはこれまた簡単に拗ねるから、無意識のうちに柴崎の細腕を掴むと、ほっそい柴崎は片手で簡単に捕まってしまうので、相当チョロい。
「いや、なにしてんの」
「なにって、柴崎が逃げるから?」
くん、と力を入れると、反抗的な目をした華奢な柴崎は、すぐにこちらに引き寄せられた。「ちょっと」とか言う割に、抵抗はしないらしい。OKと受け取るので、近付いた柴崎の腰に緩く手を回した。