「………ん」
口の端に付いた血を指で取る。
良かった…貧血気味だったし、任務が入ってよかったかも。
私は蝙蝠と人間のハーフで、定期的に血を飲まないと貧血になる。
疲れた…帰ってゴロゴロしよ
まあどうせすぐにおどろくさんからの命令が来るんだけどね…
戻った私は、相変わらず暗い雰囲気に溜め息をつく。
………ほんと、嫌だなあ
前はもう少し明るかった気もしたんだけど…
廊下を歩いていると、前に壁に手をついて息を荒くしている人がいた。
………おどろくさん
うーん…おどろくさんにはあんま近づきたくないんだよね。
昔は明るくて皆に愛される優しい人だった。
冷酷で残酷な性格になったのは、復讐がきっかけだと凸さんから聞いた。何があったかは知らない。
odmnが出来たのも、復讐のせいらしい。
“せい”って言うのは違うか、odmnを作るのには私達も賛同したから。
………話を戻して、どうするか…
けど体調悪そうだし…
私はしばらく考えてからおどろくさんの側に近づいた。
「おどろくさん、大丈夫?」
背中をさすろうと手を伸ばすと、手で払いのけられた。
「…助けは、いらない…」
いらないって…めちゃくちゃ体調悪そうじゃん。
おどろくさんの顔色は凄く悪くて、今にも倒れそうだった。
「ふーん、じゃあ凸さんにおどろくさん体調悪そうだったって言っとくから。」
私がそう言うと、おどろくさんは分かりやすくうろたえた。
「………やめて…凸さんにだけは言わないで…こんな情けない姿…」
おどろくさんが弱々しく言う。
…おどろくさんの心の支えである凸さんにすら、頼りたくないのか…
いや…最近二人が話してるところなんて見てない。
もしかしたら、3年ぐらい前から…
「…なら今は部屋でゆっくり休んでなよ、水とか持ってくから。」
「……………ありがと」
聞き逃しそうになるぐらい小さい声だったけど、今のおどろくさんは、昔みたいな優しい雰囲気を感じた。