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気になっていた歌の正体はすぐに分かった.
「🌸~百之助から聞いたよ.踊れるんだって??」
「はい.趣味の一環で.」
「何踊ったの??」
「“私の彼はパイロット”っていう曲の踊りを….」
「あー,マクロスの.」
「知ってるんですか…??」
「うち兄妹多くてさ.1人アニヲタに走っていったよ.で,ロボットアニメの中ではマクロスが好きだって.」
「そうなんですね!!分かってくれる人がいて嬉しいです!! 」
と休憩中の🌸と宇佐美の会話に聞き耳を立てていると.
*“ですって,菊田さん”*と心を見透かしたようなどや顔で,宇佐美は菊田の方を向いた.
「(宇佐美め…!!!!)」
これ以上宇佐美に振り回されたくない一心で,自分も🌸に話しかけようと決めた菊田であった.
そして,話しかけるチャンスはすぐにやってきた.
「🌸,こいつをターミナルに持ってくの手伝ってくれ.」
「分かりました!!ついに座れるんですね!!」
目を輝かせて機体に乗り込む🌸に,菊田も続く.
「(さて,お手並み拝見しますかね.)」
操縦席に座ると,🌸の態度は一変.落ち着いたトーンで外にいるスタッフ達と見事な連携プレーを繰り広げた.
「はぁ.緊張したー.」
「いやー見事な仕事っぷりだ.緊張してたとは思えんな.」
外のスタッフからオッケーを貰うと,🌸はインカムを外し脱力する.
「緊張しますよ.声だけを頼りに機体を動かすのは.」
「確かに.手元のブレーキ操作が狂えば外のスタッフにも負担がかかるしな.」
「これからたくさんの人の命を乗せて飛ぶ機体ですから,なんの不備もなくパイロットに引き渡したいですし.」
「そうだな.」
最後に🌸は“楽しい空旅になるといいね”とハンドルをするりと撫でて,席を立った.
「なぁ,どうして🌸は航空整備士に??」
他のスタッフに運転してもらっているトーイングカーの後席に座る2人.意を決して菊田は話しかける.
「アニメ・3次元のどちらのパイロットの,空を楽しそうに飛ぶのを見上げるのが好きなんです.でもただ見上げるんじゃなくて.翼を慈しみたい,パイロットの無事も機体の無事も両方願いたいから整備士に.」
慈愛の籠った🌸の笑顔に思わず心惹かれる.
「🌸のその熱意のおかげでうちのチームのモチベーションはどのチームよりも上がっててな.あの2人も🌸の優秀さには舌を巻いてるよ.」
「ほんとですか??良かった.実は自分のヲタクっぷりに皆さん引いてないか心配してて….」
🌸表情が曇る.どれほど自分たちに気を遣っていたのだろうと思うと,菊田は申し訳ない気持ちになった.
「こういう仕事はオタクであればあるほど良いと思ってる.宇佐美なんかうちの会社の機長にベタ惚れで追っかけしてるよ.」
「そうなんですか!?」
「うん.それに尾形も何かしらのオタクだな.手先器用だから,この仕事と似たようなことをする趣味なんかあるかもしれん.」
「今度尾形さんの趣味,さりげなく聞いておきます.」
笑顔が戻ったところで格納庫に到着.🌸はさっそく尾形に呼ばれ,そちらへ向かう.
「(もう少し話たかったな….)」
と名残惜しく見送ってるのを宇佐美に見られ,菊田は思わず動揺して.
「そのゲスい顔やめろ!!わかったからほら!!エンジンの中チェックしてくれ!!」
「ちぇー.菊田さんが入れないからって俺ばっかり.」
「🌸の次に細いのお前と尾形なんだから仕方ないだろ. 」
このやり取りを🌸に見られないように,せっせと宇佐美を持ち場に追いやったのであった.
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