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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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父親から連絡があった。
「家と店はそれなりに高値で売れることになった、当座はなんとかなりそうだ」
「借金しないで済みそう?」
「済む」
そうか、借金は本当に負担だからな、経済的にも精神的にも。
「今までと同じ商売はやらないでほしいけど、これから仕事どうするの?」
「漢方薬を無難に売る、アロマはお母さんが不安定だから手を引く」
詳しく話を聞くと、父親は漢方薬と生薬の通信販売をやるつもりだそうだ。まあもう店舗はないし、でも薬剤師免許があるから医療保険で使うような医薬品を売れるしな。
ただ、がんに効く・ワクチンいらずなんてことは言わず、メーカーや医学書が言う以上の効果は宣伝しない。医療保険で使うような医薬品は市販の医薬品より有効成分が多いことと、漢方薬の1〜5日分の小分けにも対応することで売り出していくつもり、とのこと。
俺は、少し安堵してため息をついた。まあそれなら普通の商売の範囲だよな。父親、自分はワクチン打ったり母親を適切な医療につなげたりしてるから、セーフとアウトの境目は把握できる人間なのだ。
俺は父親に言った。
「まあ悪くないんじゃない、和泉和漢薬のホームページどうすんの?」
父親、もともと通販はホームページでやってたからな。
「今のは閉鎖して1から作り直す。一応WordPressは使えるから、商品一覧とメールアドレス乗せて、買いたいならメールしろ、相談は受け付けない、みたいな感じでやるつもりだ」
「ふーん、まあ、それくらいシンプルなら1人でできるか」
「お母さんの世話もあるから、すぐには取りかかれないが」
ああ、そうか、そんなすぐには治んないよなあの人。
「お母さん、まだ入院?」
「うん……薬は効いてて、1回筋肉注射すれば4週間何も薬いらないって勧められてるんだが」
「えっ、そんな便利なのあるんだ」
「今効いてる薬がな、飲み薬と注射があって、飲み薬は毎日だけど注射は1回で長く効くんだ」
「へえ、でもあの人注射なんて素直に受けるの?」
母親、注射をすごく否定してて、俺にすらワクチン受けさせなくて、母子手帳は真っ白だった。でも一通りのワクチン受けないと薬剤師になれない(医療従事者全般なれない)から、俺は中学に上がってから母親に隠れておじいちゃんのお金で一通りのワクチン受けたんだぞ。
父親は、ため息混じりに言った。
「受けないから退院させられない」
「そう……」
「なだめたりすかしたりして、なんとか定期的に受けさせようとしてるんだが」
「そっか……まあがんばって」
「それで……その、頼みがあるんだが」
「……一応、話は聞く」
なるほど、わざわざ電話してきたのはこのせいだったか。
「家を売るんで……次に済むアパートを探すんだが……借りるのに連帯保証人がいるんだ」
「……なるほど」
そうか、それを頼みたくてわざわざ連絡してきたのか。
賃貸アパートの連帯保証人、何かあったとして払うのは家賃くらいだよなあ。俺も多少の貯金はあるから、ある程度ならなんとかなるけど、ある程度だぞ。
あんまりうんと言いたくないけど……ここでうんと言わないと父親はまた変な商売で荒稼ぎする可能性あるしなあ。
「やるよ、連帯保証人。でもあんまり家賃高いところに住まないで、アパートの損壊とかもしないで」
父親はうっかりでない限りアパートを傷つけたりはしないだろうが、ヒス起こした母親だと壁に穴開けるくらいは可能性がある。
父親は「ありがとう」とうめくように言った。
「お母さんが退院しても、できるだけ暴れさせないようにがんばるから」
母親に関して、俺と同じ事考えてたっぽいな。
「まあ努力してよ。俺の自筆と印鑑いるんだよね?」
「いる。でもまだアパート探してる最中だから、決まるまでまだしばらくかかる」
「わかった」
とりあえずは、俺は社会的責任を果たしただろう。
電話している間、こたつの向こうの千歳が心配そうに俺を見ていたので、俺は電話が終わってから電話の内容を詳しく千歳に話した。
『でも連帯保証人なんて大丈夫か?』
「借金の連帯保証人なら引き受けなかったけど、アパート借りる連帯保証ならまあ家賃+α程度だろうから。家くらい保証しないと、あの父親またあくどい商売やり始める可能性あるし」
『お前が金に困りそうなら、ワシいつでも金やるんだからな』
千歳の目は本当に心配そうで、本当にお金くれそうな気がしたので、俺はあわてて千歳を制した。
「えっと、できる限り自分のお金でやれるようにがんばるから。どうしても無理だった場合は頼らせてもらうけど、それでも、もらうんじゃなくて借りるって形にするよ、できるだけ」
『そうか』
千歳はとりあえず納得してくれたが、『お前、えらいよ』と言った。
『嫌いな親、突き放さないでそれなりに面倒見るんだからさ』
「まあ、大人の社会的責任としてね。あと、父親はまだ話が通じるから……母親とは、はっきり言ってもう顔合わせたくない」
千歳はうなずいた。
『そりゃそうだよな、あんなことされたんじゃな』
「母親の中では俺はゴム人間だもん、またあんな事言われたくないし、会わないほうがいいよ。なるべく距離保って、俺は千歳と普通に暮らしたいな」
『…………』
千歳はなぜかこたつから出て、俺の方に来て、そして俺の頭をわしゃわしゃなでた。
「何!?」
『えらいよ、お前は』
「ほめてくれてるの?」
『うん』
「…………」
くすぐったい気持ちと、ありがたい気持ちとで、俺はしばらくなでられるがままになっていた。
親と折り合いが悪い、そんなのはよくある話だ。親と折り合いが悪いのになかなか親と距離を取れない人も多い中、俺は割と距離を取れていて、親への対応をこんなにほめてくれる人もいて、だいぶマシな方なんだろうな。
コメント
1件
「割とマシだと思いたい」、読んだよ。 父親が連帯保証人を頼んできたシーン、すごくリアルだった。断らずに引き受けた主人公の判断、重いけどちゃんと大人だなって思った。 千歳が「えらいよ」って頭撫でるところ、ほんと温かいな……母親との距離の取り方も切実で、でも「割とマシ」って自分を保ててるところが沁みた。お疲れさま、って伝えたくなる話だった。