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それから優真は俺以外の人とは親しくしなくなった。涼也とさえも話さなくなった。
そして、自然と俺たちの周りからは人が離れていった。
まるで本当に二人だけの世界に入ったみたいに。
嬉しかった。優真が俺だけを見てくれて、二人だけの世界になって。
でも何故か心の片隅には罪悪感が湧いていた。
そんなある日、俺は涼也に呼び出された。
誰もいない教室で、涼也が言う。
「陽雅、急にどうしたの? 最近変だよ」
「変って何が?」
「優真の事だよ。すげぇ束縛してさ。他の人と仲良くするなって言ったんでしょ?」
「うん。そうだよ。当たり前でしょ。俺の優真なんだもん」
「だからって優真の交友関係縛るのはおかしいよ」
「しょうがないでしょ。これが俺の普通なんだから」
「普通って…俺と付き合ってた時は束縛なんてしたこと無かっただろ?」
涼也と付き合ってた時。涼也とは中学で付き合っていた。
結局、俺たちは友達の方が合ってるねって友達に戻ったけど。
確かに俺は涼也を束縛した事は無かった。
だって別に、独占欲なんて…。
頭がキーンと痛くなる。
俺が頭を抱えると、涼也は心配そうに俺に寄る。
「陽雅、大丈夫?」
頭の中で誰かの声がする。
頭の痛さが無くなると、俺は涼也の目をまっすぐ見た。
「何言ってるの。俺は昔からずっと独占欲が強いんだよ? だって──」
この時、なんて言ったっけ。
頭の中でした誰かの声もこの時俺がなんて言ったのかも全部思い出せない。
涼也は俺の言葉を聞いて、怯えた顔してたっけ。
次の日、放課後に俺の家で遊ぶことになった俺たちは帰路を歩いていた。
その時、後ろから声がする。
「優真」
優真と一緒に振り返ると、涼也が立っていた。
「涼也。どうしたの?」
不思議そうにそう言う優真に涼也は近づく。
そして涼也は優真の口にキスをした。
胸がザワっとする。
「お前何してんだよ」
俺がそう言うと、涼也は慌てた様子で優真から離れる。
「違う。これは陽雅のお兄さんが…」
「兄ちゃんが何?」
涼也はなにか言おうとしているけど、言葉が出ないのか、何も言わない。
「もういいよ。涼也はもう友達じゃない。俺たちに話しかけないで」
俺はその場から立ち去ろうと歩き出す。
「待って!」
そう言って俺の腕を掴んでくる涼也に俺は振り向き、耳元に口を近づける。
《俺たちにもう近づかないで》
涼也から離れて歩き出すと、その隣に優真が来る。
「待ってよ陽雅。涼也なんか変だったよ。涼也の話も聞いてあげてよ」
「話なんて聞く必要ないよ」
「でも…」
俺は立ち止まり、優真の方に体を向ける。
「何。優真は涼也の肩持つの? 俺より涼也の方が好き?」
「違うよ! そうじゃなくて、涼也の話も聞いてあげて欲しいの。涼也も大切な友達でしょ?」
「涼也はもう友達じゃないよ」
「もういい加減にしてよ! 俺、今の陽雅は好きじゃない。なんで急にそんな束縛してくるようになったの?」
「好きじゃない…?」
胸がぎゅっと苦しくなる。
優真が俺から離れちゃう。
そんなの絶対に嫌だ。別れるなんて、許さない。
俺は優真の腕をぎゅっと掴んで歩き出した。
「陽雅待って! 離して」
そう言う優真を無視して俺は歩き続ける。
家に着くと、扉を開けて自分の部屋に優真を連れていく。
部屋の扉を閉めると、俺はズボンを脱ぎ始める。
「ねぇ陽雅。何してるの」
俺は気にせず、ズボンを脱ぎ、パンツを脱ぐ。
そして、顕になった俺のものを優真が見つめる。
「優真、咥えて」
「えっ」
「ほら、早く」
「嫌だよ」
そう言いながら優真が後ずさる。
「なんで? 俺の事もう好きじゃないから?」
「違う。俺、陽雅の事好きだよ。でも、束縛するのは好きじゃないって言ってるの」
「でも、これが本当の俺なんだよ? 俺は独占欲が強くて束縛も凄いするんだよ?」
「前の陽雅は独占欲なんてなかったじゃん」
「前の俺…?」
頭がキーンとする。
前の俺は独占欲なんて無かった。
本当にそうなのか?
また、頭の中で声がする。
「…うるさい。いいから早く咥えてよ」
俺が優真に近づくと、優真は怯えた顔で言う。
「嫌だ!」
「嫌じゃないでしょ? 俺のわがまま聞いてよ」
「嫌…」
優真の目にじんわりと涙が滲む。
優真は俺の前でしゃがみ、俺のものを咥えた。
「やっぱり優真はいい子だね」
そう言って優真の頭を撫でた。
優真は涙を流しながら俺のものを咥えている。
「優真、泣かないでよ。俺の事、好きでしょ?」
「ん…」
優真はそう言って頷いた。
それから学年が上がっても俺たちはずっと一緒にいた。
本当に二人だけの世界で、俺は幸せだった。
でも、優真は魂が抜けたみたいに、元気が無い。
それから月日が経った、11月10日。
俺は部活終わり、下駄箱で一緒に帰る約束をしていた優真を待っていた。
でも、しばらく待っても優真は来ない。
教室と部室を見てみたけど、優真は居なかった。
(帰っちゃったのかな…)
俺は、諦めて帰ろうと校舎を出る。
しばらく歩くと、はしゃぎながら前を歩いていた生徒が振り返り校舎を見上げながら言う。
「あれ。屋上、誰か立ってない?」
「ホントだ。ってかやばくね? なんか飛び降りそうだよ」
体が自然と動き、校舎を見上げる。
そこには、見覚えのある生徒が立っていた。
「やばいって。俺ちょっと先生呼んでくる」
そう言って走り出す生徒を見て、俺も走り出す。
俺は勢いよく屋上の扉を開けた。
「優真!」
その呼びかけで、彼は振り返る。
「陽雅。きてくれたの?」
「当たり前でしょ。いい子だから、こっちおいで」
「俺、いい子でいるのもう疲れちゃったの。陽雅のわがままはもう、聞いてあげられない」
「分かった。俺、もうわがままなんて言わない。束縛もしないように頑張るから、だから…」
「ごめん、陽雅。俺、もう限界なんだ」
「嫌だ。俺が悪かったから、こっち来てよ」
「ごめんね。最後まで陽雅と一緒に居られなくて。でも俺、陽雅の事大好きだったよ」
優真はそう言ってニコッと笑い、再び前を向いた。
そのまま下を眺める優真に俺は近づく。
「待って! 優真!」
慌てて手を伸ばすが、間に合わず、優真は前に倒れた。
下から悲鳴が聞こえる。
足がすくんで動かない。俺はそのまま、その場にしゃがみ込んだ。
次の日、重い足取りのまま、学校へ行く。
教室に入ると、シーンと静まり返る。
俺は静かに席に着いた。
「普通に学校来るとかありえないんだけど」
「川辺が死んだのって黒崎のせいだよね」
「そういえば黒崎の父親も人殺しらしいよ。浮気しても無いのに勘違いして母親刺したんだって。その後自分も死んだらしいけど」
「それって逃げじゃん。でも、親の血は争えないし、黒崎もそのうち死ぬんじゃないの?」
「ちょっとやめなよ。不謹慎だって」
色んな声が聞こえる。
俺は過ちを犯した。
独占欲の強い俺が恋人なんて作っちゃいけなかったんだ。
もう二度と、恋人は作っちゃいけない。
死ぬのも許されない。それは”逃げ”だから。
俺はその日、早退した。
家で布団に蹲っていると、仕事から帰ってきた兄ちゃんが部屋の扉を開ける。
「陽雅。大丈夫?」
兄ちゃんの問いかけに、俺は何も言えないまま布団に蹲る。
「陽雅。学校のみんなも世間のみんなも陽雅の事悪く言ってるけど、俺は陽雅の味方だよ」
「…俺の味方?」
俺は布団から顔を覗かせて、兄ちゃんを見る。
「うん。陽雅の味方。俺がついてるから大丈夫だよ」
その言葉で俺の目から涙が溢れる。
「陽雅、おいで」
ニコッと笑う兄ちゃんに俺は抱きつき、泣きわめく。
「大丈夫。陽雅はいい子だから大丈夫だよ」
そう言いながら兄ちゃんは頭を撫でてくれた。
#グク
小鳥遊みや
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コメント
1件
ああ…読んでて胸が締め付けられたわ。陽雅の「これが俺の普通」って台詞が切なすぎる。優真が「大好きだったよ」って笑って飛び降りたところ、本当に辛かった。でも最後に兄ちゃんが抱きしめてくれるシーンで少し救われた気がした。灯依さん、重いテーマなのに引き込まれる描写力すごい。優真の気持ちも陽雅の苦しみも、どっちも痛いほど伝わってきたよ。続きがすごく気になる…🔥