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#グク
小鳥遊みや
520
#配信者
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「これが俺の恋人を作っちゃいけない理由だよ」
陽雅さんはそう言ってニコッと笑う。
俺は何も言えず、黙り込んだ。
「俺は恋人を傷つける。だから好きな人も作らないようにしてるの。まぁ、恭也の事好きになっちゃったけどね」
「えっ…?」
「恭也が俺の事好きなのも本当は気付いてた。でも、それを認めちゃったら俺が恭也を好きなのも認めちゃいそうで、気付かないふりしてた」
陽雅さんが俺の事を好きだなんて、信じられない。
俺が陽雅さんの事好きなのもバレていたなんて。
「…ならやっぱり俺は、陽雅さんと付き合いたいです」
俺の言葉に陽雅さんは驚いた表情を浮かべる。
「さっきの話聞いても、そう思うの?」
「はい。俺は陽雅さんと一緒に居たいです。陽雅さんと居られるなら俺はそれでいいって思ってます」
「ダメだよ。もし俺達が付き合ったら、俺は恭也を束縛しちゃう。したくなくても、気付いたらしてるの」
「はい。分かってます」
「俺はきっとお友達の事も恭也から遠ざける」
「快…」
陽雅さんと付き合ったら、快とはもう話せなくなるのかな。
快と離れるのは、正直辛い。
昔からずっと一緒に居たから。
「俺が快くんをお友達って呼ぶのは俺が俺自身に快くんはただの恭也の友達だって言い聞かせるためでもあるの」
確かに陽雅さんは快の事をいつも″お友達″って呼んでる。
ただ、名前を覚えてないだけなのかと思っていた。
「今の時点でこんなんなのに、付き合ったらもっと嫉妬深くなる。それで恭也に″快くんと仲良くするな″って命令しちゃいそうで怖いの」
陽雅さんはそう言って俯く。
「…俺も快と縁を切るのは嫌です。だから、俺と一緒に乗り越えませんか?」
陽雅さんはゆっくりと顔をあげる。
「乗り越える…?」
「はい。乗り越えるって言うか…陽雅さんの束縛心を抑える方法を一緒に探したいです」
陽雅さんは一瞬目を輝かせたあと、目を伏せる。
「無理だよ。俺は自分が嫌だと思っても恋人を束縛しちゃうの。だからどうしようもないんだよ」
「確かにそうかもしれないですけど、もしどうしようも無い事でも、俺はどうにかしようと頑張りたいです」
俺の言葉を聞いて、陽雅さんは目を伏せたまま、黙り込む。
そんな陽雅さんを見て、俺は机に鍵を置いた。
「…俺、もう陽雅さんとは会いません」
「えっ?」
「陽雅さんと会うと苦しいので。だから、陽雅さんが俺を振るなら、陽雅さんの元を離れます」
再び黙り込んでしまう陽雅さんに続けて言う。
「七月の下旬に夏祭りがあるの、知ってます?」
「…知ってるよ」
「その夏祭りに陽雅さんと行きたいんです。客としてじゃなくて、恋人として」
「恋人として…?」
「はい。夏祭りの日、神社で待ってます。もし陽雅さんの気持ちが変わったら来てください。その祭りに陽雅さんが来なかったら、陽雅さんと会うのは今日で最後にします」
陽雅さんは俺の言葉を聞いてしばらく黙り込んだ後、鍵を取り、顔をあげる。
「…分かった。今日の支払いはしなくていいよ。俺はもう、恭也を客として見れないから」
「…はい。分かりました」
「恭也」
「はい」
「…さようなら」
陽雅さんがニコッと微笑む。
「…はい。さようなら」
俺はそう言った後、無理やり笑顔を作った。
陽雅さんの家を出ると、足早に歩き出す。
″さようなら″
陽雅さんはきっともう、俺と会う気は無いのだろう。
胸がぎゅっと苦しくなり、目に涙が滲む。
(立ち直る準備でもしようかな…)
「…なんて、無理だけどね」
俺は苦笑いした後、歩き続けた。
次の日、大学の講義室でボーッとしていると、横から声がする。
「恭也、大丈夫?」
声のする方を見ると、快が心配そうに俺を見ていた。
「んー…大丈夫…ではないかな」
そう言って苦笑いすると、快は隣の席に座る。
「昨日、陽雅さんと話したんだよね。もしかして、振られちゃった?」
「…うん。振られた」
「…そっか」
「でも、まだ少しだけ希望はあるよ」
「希望?」
快が不思議そうに俺を見る。
「うん。夏祭りに誘ったの」
「夏祭りって、月末にやる?」
「そう。俺と付き合ってくれるなら夏祭りに来てくださいって」
「でも、振られたんじゃないの?」
「うん。陽雅さんの束縛で俺と快が離れ離れになるかもって振られたんだけど、俺はそうならないように二人で乗り越えたいって言ったの」
快は俺の話をただ、黙って聞く。
「俺は陽雅さんが好きだけど、快の事も大好きだからさ。快と離れ離れになるのは俺も嫌だし。だから、陽雅さんに乗り越える覚悟が無いなら、俺はもう陽雅さんを諦める。もしそうなら、昨日で最後になっちゃうけどね」
無理やり笑ってみると、快は少し間が空いた後、口を開く。
「…別に俺は恭也と居なくても平気だよ。俺のせいで恭也が幸せになれないのは嫌だし」
「快が平気でも、俺が平気じゃないかも。もうずっと一緒に居るからさ。俺の一部みたいな…?」
俺の言葉に快はフフッと笑う。
「何それやめてよ。なんか照れるんだけど」
「でも、快も本当は寂しいんじゃないの?」
「俺は平気だって。俺には零斗さんもついてるし。だから、俺を理由に陽雅さんと絶縁っていうのはなんか嫌かな」
「そうかもしれないけど、俺も快と絶縁は嫌だよ」
俺が俯くと、快は俺の背中に手を回す。
「まぁさ、とにかく夏祭りの日を待つしかないんじゃない? 俺の事はさ、陽雅さんとの事を解決してからでいいと思うよ」
「快…ありがとう」
「うん。いいよ。親友からの助言、心に響いたでしょ」
「自分で言わないでよ」
「どうもすいませんね〜」
そう言ってフフッと笑う快に俺もフフッと笑い返した。
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週末、俺は零斗さんとショッピングデートをする事になった。
零斗さんが運転してくれる様で、家の前まで迎えに来てくれるらしい。
俺は当日、家の前で零斗さんを待っていた。
少しして車が目の前で止まる。
窓越しに零斗さんに微笑むと、零斗さんはニコッと笑った後、ドアを開けて出てくる。
「待たせたな」
「いえ。わざわざお迎えありがとうございます」
「別にこれくらい普通だろ。ほら、行くぞ」
照れのオーラを出しながら言う零斗さんに微笑む。
「はい」
俺の返事を聞きながら零斗さんは助手席側へ回り、ドアを開ける。
「ほら、乗れよ」
俺は助手席の方へ駆けて行き、座りながら言う。
「零斗さん、気が利きますね。かっこいいです」
「あ? うっせぇな。別にこれくらい…」
「普通、ですか?」
被せるように言うと、零斗さんは再び照れのオーラを出す。
「…閉めるぞ」
「はい」
俺の返事を聞いて、零斗さんはドアを閉める。
そして運転席に座ると、シートベルトを締めた。
「零斗さん、安全運転でお願いしますね」
「バーカ。俺は超安全運転なんだよ。特に今日は好きな奴乗せてるから超超安全運転で行くぜ」
そう言う零斗さんについキュンとする。
「やっぱり零斗さん、かっこいい」
「お前…あんまかっこいいとか言うな。照れんだろ」
「零斗さんってホント素直ですね」
「…うっせぇ。出発すんぞ」
頬を赤らめながらそう言う零斗さんに俺はフフッと微笑む。
「はい。お願いします」
俺の返事を聞いて、零斗さんは車を発進させた。
コメント
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第32話、読み終わりました。陽雅さんの「自分を傷つけるから好きな人を作らない」という告白、恭也がそれでも一緒にいたいと「乗り越える」道を選んだシーン、すごく胸に響きました。あの「さようなら」の別れ方と夏祭りという期限の置き方、切なくて美しいなと。快が恭也を気遣う優しさや、零斗さんとのデートの甘さもあって、バランスの良いエピソードでした。陽雅さん、夏祭りに来てくれるといいですね。