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ようやく気づいてくれたルティは、おれに何度も頭を下げて謝りまくっている。攻撃してきたことに怒りは無く、むしろ彼女の強さを再認識出来ただけでも良かった。
それよりも、どうやってここまで来られたのかを聞く方が重要だ。
「はふうぅ~アック様が本物で良かったですぅぅぅ」
「よくもまあ何度も騙されるものですのね。どうみても機械だというのに!」
「はぇぇ……ミルシェさんだって一人でいたら、絶対騙されちゃいますよぉぉ~」
ルティの話によるとディルアなる人型機械は、おれの声と姿を似せて現れた。遺跡の中を彷徨い歩いていた所に現れたことで、疑うことなく近付いてしまったらしい。
しかしいざ近づくと、そいつはただの人型機械でおれでは無かった。おびき寄せたディルアはすぐに攻撃を仕掛けて来たが、それをルティはあっさり撃破した。
撃破しても偽物として何度か近付いて来たことで、とにかく破壊しまくったというのが理由なのだとか。
「アック、こっちに何か落ちているのだ! こっちに来て欲しいのだ」
ディルアの残骸がある採石場側でシーニャが何か見つけたようだ。
「シーニャ。どうした?」
「アックが持つ石みたいなのが落ちているのだ」
「魔石みたいだな。光は失われているようだが、もしかして魔石が動力源なんじゃないだろうな」
「ウニャ?」
壁面通路の魔石と採石場での出来事からルティへの動き。魔石についても意味は無いと思っていたが、すでに遺跡による罠が発動している可能性が高い。
「光っていた魔石とそうじゃない魔石。人型機械が攻撃してくるのも魔石の仕業ってことか」
「アック、落ちている魔石はどうするのだ?」
「これは拾わずにそのままにしとく。キリが無いからな」
そういえば、ミルシェはまだ拾った魔石を持っていただろうか。そうだとしたらすぐに捨てさせないと人型機械に追尾されかねない。
「アック! 尖った氷が天井からたくさん降ってくるのだ!!」
「――むっ」
「全部砕いてやるのだ! ウニャッ!!」
天井部分は気にしていなかったとはいえ、さっきまでは何も無かったはず。そうなるとこれは魔法によるもので間違いない。
【ヘルフラム・エグリー 所属:ザーム教導魔導隊】
とっさにサーチをかけたが、やはりザームの者が近くに来ているようだ。一人しか見えないということはこいつの仕業か。シーニャが爪で砕いているが、しつこいくらいに絶え間なく降ってくる。
明らかに敵意を持った攻撃だ。
「キリが無いのだ……ウニャ」
「シーニャ、いいよ。後はおれがやるから」
「ウニャ」
「……《フレイムバースト》!」
恐らく遠隔魔法による攻撃だろうが、高位魔法使用者に違いない。こうなるとルティたちが心配だ。
「ウニャニャ!? 落ちてこなくなったのだ! すごいのだ~」
「ここはもう大丈夫だ。ルティたちの方に行こう」
採石場側にいるおれたちとは別に、通路中央にいるミルシェたちも魔法攻撃を受けていた。だがミルシェによる水の守りで自分たちを覆っていて、何も問題は起きていないようだ。
「あっ、アック様! いきなり魔法がですね~」
「ミルシェとルティはそのままそこで待機でいいぞ」
「分かりましたわ!」
「えぇ!? 置いて行かないでくださぁぁい!」
ディルアの墓場から離れ先の方に進むと、そこには閉じられた鉄扉があった。ルティがどこから墓場に迷い込んだかはさておき、敵は鉄扉の向こう側にいるようだ。
鉄扉を壊すのは簡単だが、誘い込む罠であることは間違いない。しかも二か所同時に属性魔法を使用出来る相手だ。
相当な自信を持っているはず。
「アック!! 何か文字みたいなものが鉄扉に見えているのだ!」
「――! 魔法文字《ルーン》か?」
「読めないのだ。何て書いてあるのだ?」
おれ以外にルーンを使う奴がいるとは驚きだ。姿を見せずに伝えて来る敵というのも初めてのことになる。
「……【ドワーフ、獣、怪物、そしてイデアベルクの男は墓場で消す】か。大した自信だな」
「シーニャ、獣じゃないのだ!」
怒る所はそこじゃないが、遠隔魔法は相手として非常に面倒だ。姿を見せずに単独で行動しているのも気になるが、ここは試してみるか。
「どうするのだ、アック? 鉄扉を壊すのだ?」
「もっといい方法がある。とりあえず、シーニャはミルシェたちのところへ行っててくれ」
「分かったのだ!」
神族国家ヘリアディオスで覚えた暗黒魔法を試して、奴を目の前に呼ぶことにする。