コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
※少しだけそういう表現があります。苦手な方はお気をつけて
【米将軍side】
いいからとりあえず寝なさい!とベッドに押し込まれ、あれよこれよとお世話された結果、ベッドヘッドにもたれる俺とベッドサイドに座りリンゴをこちらに向ける雨栗という構図ができあがった。
「はい、リンゴ」
『え、いや、自分で食え「いいから早く。食え」アッハイ』
半ば脅されるように口に含めば、雨栗は満足気な表情でこちらを見る。
その表情があまりにも甘くて、リンゴの酸っぱさが丁度いい緩衝材になってくれた。
「……まじで、心臓止まるかと思った」
りんごの咀嚼音だけが響いていた部屋に、雨栗の声が混じる。
「取り返しのつかない怪我してたらどうしようとか、そもそも目を覚まさないんじゃないかとか。……お前を失うと思ったら、頭が真っ白になった」
普段おちゃらけている雨栗が、いつにない真剣な瞳でまっすぐ俺を射る。
「だから。頼むから。一人で無茶するのだけはやめてくれ」
そっと手を両手で包まれ、雨栗の額が落ちてくる。
まるで神に祈るかのような姿に、その一言は自然と口から溢れていた。
『すきだよ』
あ
やってしまった、と
気づいた時には、もうその言葉は雨栗に届いてしまっていた。
目をこれでもかと見開きこちらを見る雨栗。
仲間として、とか、冗談だよ、とか。
誤魔化そうと思えばいくらでもできた。
でも、俺のこの気持ちだけは、何となくそうしたくなくて。
『すき、雨栗のことが。どうしようもなく、すきなんよ』
手が震え、涙が溢れ落ちる。
嫌悪に染る顔を見たくなくて俯けば、ぽとりぽとりと布団が涙を吸っていく。
手を取られているせいで顔を拭うこともできず、きっと俺の顔はぐしゃぐしゃになっているだろう。
返事が聞きたい。でも、聞きたくない。
相反する心がじくじくと痛む。
「……こめしょー」
発せられた声は、俺が思っていた何倍も優しかった。
「こっち、向いて欲しい」
思わず首を横に降れば、おねがい、だなんて甘く囁くものだから、俺には従うという選択肢しかなかった。
『…ッ!』
目の前には、幸せそうに微笑む彼がいた。
「こめしょー、よく聞いて」
俺の手を強く握るその手は、少しだけ震えていて。
愛おしいという気持ちが、とめどなく溢れ出す。
「好きだ。こめしょーのいない世界なんて考えられないくらい、愛してる」
二人の気持ちが重なった瞬間、どちらからともなく顔を寄せ合った。
【雨栗side】
「…んっ」
触れ合うだけのキス。
それだけで、顔に、身体に、火が灯る。
「ぁ、ま、ぐり……」
甘い蜜のようなこめしょーのさえずりに、理性を持っていかれ思わず手を伸ばす。
『……だぁめ。こめしょー、まだ本調子じゃないでしょ』
自分自身に言い聞かせるように応え、何とか理性を引き戻した私は、伸ばした手をこめしょーの頬に添え、優しく撫でる。
暖かい体に冷たい手が心地いいのか、すりと頬擦りする彼にまた熱をあげる自分が恨めしい。
『ほら今日はゆっくり休んで。また明日、ね?』
こくりと素直に頷き横になる。
私は彼が眠りに落ちるまで、傍で見守ることにした。