・この物語は、一次創作(完全オリジナル)となっております。既存の人物のお名前は一切扱っておりません。
・この物語は宗教パロとなっております。
(一部恋愛?あり)
・誤字脱字等がありましたら、指摘していただけるとありがたいです。
これらを十分に把握した上でご視聴ください。
「教皇様」
「大変無礼だということは承知しておりますが。」
「ご自分の立場を弁え、少々言葉遣いを改めていただきたいのですが。」
「いかがなさいますでしょうか。」
『…はい。』
俺にとって信頼できる唯一のモノは。
この“杖”だけなんだよ。
突然だが。
俺は…不死身だ。
正確に言えば不老不死だが。
そのため、数百年以上前からこの世界で生きている。
その人生の中で、俺はひとつの力に目覚めた。
それは、“杖の力” だ。
大昔、伝説の杖というものがあり、それは”その杖に適した者のみが力を扱える”とのことだった。
噂では、その者は一人しかいないらしいが。
…それが、俺だったという訳だ。
ちなみに、この世界には超能力が存在しない。
なので、この世界で超能力を扱えるのは実質俺一人だということだ。
この不死身の力も…な。
まぁ、力に関してはこのくらいにしておこうか。
次は…俺の立場についての話だ。
強力な杖の力を得た俺は、この世界のスラムと化した場所に住む者達を救おうと考えた。
この世界のスラムは、金持ちの奴らがわざわざ足を運んで貶しに来る。理由は分からないが、憂さ晴らしや八つ当たりからの暴行だと考えている。
その光景を見た俺は、この杖の力を使ってスラムの人々を救った。
その時はてっきりスラムに住む人々のみだと思っていたが、偶然政府関係者が来ていたらしく…
…俺は、総統の娘が襲われているところを助けていたらしい。 誰が誰かなんて覚えてないからなんとも言えないが。
それで、その総統と娘、関係者にこれでもかというほど感謝された。
その時だった。
総統の娘に、突然言われたのだ。
「私と共に人生を歩んでいきませんか。」
「貴方様は今日から教皇です。
共に人々を救って参りましょう。」
と…
今日は献金の日だ。
一般信徒から枢機卿まで。
勿論悪いことに使用はしない。
住む場所がない信者達のためや、住む場所は持っているものの、食料や飲料水など生活に欠かせないものが無い信者達の為に、生活必需品を分け与えることに使う。
そういえば…この宗教団体の身分についてを説明していなかった。
身分については以下の通り、
教皇
枢機卿
大司教
司教
司祭
一般信徒
となっている。
そして、俺は一番上の立場の教皇だ。
…まぁ、枢機卿に勝手に付けられただけだけど。
この立場を使って、たくさんの人々を救えるのなら悪くは無いと思っている。
コンコン
扉のノック音が響き渡る。
『どなたでしょうか?』
“俺”とは全然違う口調を使う。
そう。教皇の”私”は猫かぶりをしているのだ。
そして、その声が私の耳に届く。
「枢機卿、ジュリグシュ・ノプトル でございます。」
「失礼いたします。」
そう言って部屋に入ってきたのは、
枢機卿の”ジュリグシュ・ノプトル”
彼女が俺を教皇と命じたこの国の総統の娘だ。
総統の娘ということもあり、色々と責任をもって行動してくれている。
真面目の類に入るような人だろう。
そんなジュリグシュだが、勿論普段は頼もしい。
言うことは聞いてくれるし、書類仕事もすらすらと終わらせる優秀な人材だ。
だけど、一つだけ…困ることがある。
それは…
ジュリグシュは、俺の口調、服装、性格などを全て”自分の思う教皇”というものにしようと思っているみたいだ。
なので、俺は現状ジュリグシュの操り人形のようになっている。
…これくらいなら、ジュリグシュの提案に乗らなければよかったと。
そう思う時もある。
けど…
ジュリグシュは、”私”を愛してくれている。
“俺”を愛してくれているかどうかは分からない。
だけど、一応長年の付き合いでもある。
そして、総統の娘ということもあり…
…あまり逆らうことができないのだ。
「教皇様、本日はハーブティーでございます。」
『あぁ、ありがとう。』
ハーブの爽やかな香りがする。
「ハーブティーには、免疫力の向上、消化促進、
睡眠改善、ストレス軽減などの効果があります。 」
「それにしても…最近、ちゃんと睡眠をとっていますか? 目の下にうっすらと隈ができていますよ。」
『大丈夫。ちゃんととっているよ。』
…そういえば、最近は書類仕事をしていて夜更かしばかりしていたなぁ。
「それなら良いのですが…無理はなさらないようにしてくださいね。」
「それでは私は失礼いたします。ごゆっくり。」
そう言ってジュリグシュは去っていった。
今日も、スラム付近を散歩する。
ここには1週間に1回は来ているので、顔見知りの人も少なくはない。
中には俺の宗教団体に入っている人も居るようだ。
「教皇様…!ご挨拶申し上げます…!」
『あぁ、女将さん。お久しぶりです。』
この人は旅館で女将をされているのだが、このスラムにご家族や親戚の方が住んでいるらしく、たまに会いに来ているそうだ。
知り合ったきっかけとしては、女将さんが厄介さんに絡まれているところを俺がこの杖の力で助けたことから。
…そういう善行を日々行おうと心がけているが、別に称えられるようなことはしていない。
だから、何故俺がここまで敬意を表されるのかが疑問だ。
「…なんだか、少しおかわりになられました?」
『そうですか?』
「なんとなくですが…雰囲気が以前と違うような気がしまして。」
そんな変わった…か…?
「…すみません。私の勘違いかもしれません。気にしないでください。」
『… 』
…客観的に見て、何か変わっているのだろうか。
俺はそういう風に感じないけど…
「あぁ、それと**…**総統様がお越しになっておりますよ。」
『総統様が?』
「はい。どうやら教皇様を探している様子もありましたよ。」
俺を…?
「分か…りました。ありがとうございます。」
俺は女将さんにそう言いながら一礼をして、人々の声がする方に向かった。
「 」
「 」
…総統様がこちらへ向かってくる。
俺、なんかしたか…?
「教皇様、お久しぶりです。少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
『はい。大丈夫です。』
俺は総統様を連れて、教会へと向かった。
「ジュリグシュ。元気してるか?」
「お父様…何故ここに…?」
「そりゃあ。愛する娘に会いに来たに決まっているだろう?」
どうやら、総統様は娘さんに会うことが目的だったみたいだ。
隣では、総統様がジュリグシュを愛でている様子が見られる。
…総統様は、分かっているのだろうか。
理解していただけるのだろうか。
普段は問題ない。
だけど…
最近、ジュリグシュからの”命令”が増えてきている気がする。
「書類仕事をしている間、私の傍から離れないでください。」
「一般信徒の元へ行ってはなりません。教皇様をお困りにさせてしまう者がたくさん居ます。」
「明日はずっと私と一緒に過ごしましょう。」
…流石に、そろそろ疲れてきた。
ジュリグシュのことは嫌いじゃない。
むしろ好きな方だ。
でも、急にこんなことを言っても、こんなにも娘さんのことを愛している総統様には俺の気持ちが伝わることはないだろう。
だけど…
このままじゃ、俺が耐えきれない。
俺という存在が消えてしまう。
…もう、ジュリグシュと出会って4年目か。
1年目までは変わらなかったのに、2年目に入ってから随分と変わってしまった。
…思い出してくれよ。ジュリグシュ。
お前を救ったのは”私”ではない。
ジュリグシュ side
『…え』
降…級……?
わた、しが…?
『何故ですか…!! 私はこんなにも貴方様のことを想っているのに…!!』
すると、教皇様はこう仰った。
「…一度、頭を冷やす時間が必要だと感じたんだ。」
「だから…ジュリグシュ。」
「今日からは、枢機卿から…」
「嘘…」
なんで…?
私は…悪行など…一度も…
私は**“降級”**という事実に絶望しながら、教会のホールに向かった。
教会 ホール
この場所には主に、一般信徒達が集う場だ。
それ故に、上の立場だった私は声をかけられてしまう。
「あら、枢機卿様。何故ここに?」
…違う。
私はもう枢機卿ではない。
『私は枢機卿ではございません。司教でございます。』
私がそう告げると、一般信徒は驚いた様子でこう言った。
「降級…でしょうか…?」
『…』
私は無言を返す。
「…大司教様ならあちらに居られます。
一度お話されるのはいかがでしょうか?」
『そうですね。ありがとうございます。』
私は大司教の元へ向かった。
「枢機卿様…!!どうされましたか?」
『私はもう枢機卿ではありません。司教です。』
…あぁ、やっぱり。
私は”枢機卿”としか認識されてなかったんだ。
“ジュリグシュ”として認識してくれていたのは…
教皇様だけなんだ。
「大変ご無礼を…申し訳ございません。」
「それで、どうされたのですか?」
私は大司教に問う。
『…私は何故司教に降級してしまったのでしょうか?』
と…
「…ご自覚されていないのですか?」
『え…?』
どういう…こと…?
『私が教皇様に悪行をしたとでも言うおつもりですか!?』
私は思わず声を荒らげた。
だって、私の命の恩人の教皇様にそんなことをする訳がないのだから。
そんな私に、大司教は冷静に返す。
「いいえ。そういったものではないでしょう。」
『じゃあなんなのですか…!!』
必死に訴える私に、彼女は冷酷に言った。
「貴女様には…」
『…え?』
私が教皇様を…操る…?
『まさか…そんなことするわけ…』
「あるから貴女様を降級させたのでしょう? 」
…嘘だ。
私は教皇様を想って…
「私は割と最初の方にこの宗教団体に入った。」
「だからこそ、第三者として分かるものがあるのです。」
「教皇様は、貴女様に変えられている。」
「個性を、全て奪われている。」
…そんなわけない。
私は…正しいことを行ってきたんだ…
「確かに、貴女様の教皇様への愛は本物です。」
「ですが…」
愛しすぎている故に、周りが見えていないのでは?
「恋は盲目というでしょう?」
「だから、貴女様は無意識に教皇様を操り、自分にとっていちばん都合の良いような人に変えているのです。」
…本当に?
確かに大司教の彼女は昔から見かけている。
だとしても…信じ難いものがある。
だって、私は何も悪いことをしていないもの。
「貴女様が今まで教皇様に対して行なってきたものは、悪行という訳ではございません。」
「ですが…」
教皇様は、貴女様を拒絶している。
「それが事実でしょう?」
『拒絶まではされていませんわ…
流石にそれは大袈裟すぎませんか…?』
「なら、教皇様の寛大な心で許していただけるのですね…」
…何よ。
私と教皇様の関係なんて何も知らないくせに…
『少し、生意気ではありませんか?』
すると、こう返ってきた。
「私はあくまでも貴女様に助言のようなことをしているのですよ。」
「これまでの関係に戻りたいのでしょう?」
「だったらひとつお聞きしますが、今まで貴女様が教皇様に対して行なってきたことを、私が貴女様に行なったとしたらどのようなお気持ちになられますか?」
『それは…』
「そうですよね?」
「きっと嫌なお気持ちになられるでしょう。」
「それを教皇様はずっと耐えてきたのですよ。」
…今まで、教皇様のことは私がいちばんよく分かっていると思っていた。
でも…
教皇様のお気持ちまでは考えたこともなかった。
そしてようやく分かった。
私が…
教皇 side
…これで、解放される。
“私”は消え、”俺”が残る。
…私など、偽善の教皇だ。
俺こそが、人々を救える。
この杖も、俺のみが扱えるんだから。
…さて。スラムにでも向かうか。
スラム
…ここも、平和になったもんだな。
まぁ…
“前より”は…ってだけだけど。
「…お前が教皇だな?」
『…』
俺は無言を返す。
そして、1回。杖を突いた。
すると、何者かは透明な魔法で拘束された。
「っ…!?」
「お前と敵対しようと思っている訳では無い…!!」
『…』
「…そうだ。良い提案がある。」
そしてそいつはこう言った。
「そうすれば…俺はスラムに手を出さない。」
「どうだ?中々良い案だろ?」
『…一つだけ。言わせてもらう。』
『お前は…』
「!?」
俺は杖を奴に突きつけ、体が余裕で吹き飛ぶ程の突風を発生させた。
…そして、奴は当然その風に逆らうことができず。
そのまま飛んで行った。
『…馬鹿だろ。彼奴。』
俺はそんなことを呟きながら散歩を続けた。
その後、散歩から帰った俺は、久しぶりに教会のホールへと向かった。
俺が扉を開けてホールに入ると、 一般信徒から大司教までの全員が、俺に深く一礼をした。
「教皇様。」
そんな中で俺を呼び止めたのは、
大司教の**“マリアン・コラール”**
俺を強く信仰してくれている人物の一人だ。
「少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
『あぁ。』
「それにしても、お久しぶりですね。
教皇様にお会いできて光栄です。」
『…そう。』
マリアンはクスッと笑う。
何かおかしい…のか…?
すると、マリアンは小さな箱を差し出してきた。
「…お気持ち程度ではありますが、よければ受け取ってはいただけないでしょうか。」
『あぁ、ありがとう。』
マリアンは変な物を渡すような人ではないため、これは受け取って大丈夫だろう。
ありがたく受け取るとしよう…
部屋に戻って箱の中を見てみると…
“宝石”が入っていた。
これは…何の宝石なのだろうか。
そう思いながら見ていると、箱に1枚の紙が入っていることに気がついた。
その紙には、”ミルキークォーツ” と書いてあった。
ミルキークォーツの石言葉は確か…
「寛大さ」「調和」「母性愛」
だったか…?
…調和、か。
やっぱり、調和は保たれるべきだよな。
と、俺はそんなことを思った。
数時間後
コンコン
『誰ですか?』
少しだけ”私”を崩してそう問う。
すると、あの声が聞こえてきた。
「司教、ジュリグシュ・ノプトルでございます。」
「失礼いたします。」
そう言って俺の部屋に入るジュリグシュ。
何故来たのだろうと、そう思っていた時、ジュリグシュの口が先に開いた。
「教皇様。大変申し訳ございませんでした。」
開口一番に出てきたその言葉は、謝罪だった。
「教皇様のお気持ちを考えず、自らの欲求のみを満たすという、最低な行動を私は行ってきてしまいました。」
「どんな罰でも構いません。お許しをいただけるとはほんの1ミリも思ってはいません。」
「私を追放していただいても構いません。それほどのことを犯してしまいましたから。」
淡々とそう述べるジュリグシュ。
そんな彼女に、俺は告げた。
『俺はそんな重く思っていない。少し頭を冷やしてほしかっただけなんだよ。』
『だから、罰なんて与えない。』
『ただ、一つだけ。』
『ジュリグシュ。』
「な…」
「私はあれだけのことを教皇様に…!!」
『別に、元通りになっただけ。』
『今日からまたよろしく。ジュリグシュ。』
ジュリグシュは、固まっていた。
罰を与えない俺に対して、それだけ衝撃だったのだろう。
そんな彼女を、俺は抱きしめた。
『いつも愛をくれてありがとう。』
そんな言葉と共に____
「教皇様。今日も調和が保たれていますよ。」
「教皇様。今日もいいお天気ですね。」
「教皇様、お名前を教えてはいただけないでしょうか?」
「…ふふ。素敵なお名前ですね。」
螟ァ螂ス縺阪〒縺吶h縲よ蕗逧?ァ倪?ヲ…
𝐩𝐫𝐨𝐟𝐢𝐥𝐞
名前 セリー・コレイユ
性別 男性
地位 教皇
性格 寛大な心を持つ善人。
伝説の杖を扱える唯一無二の人物。
名前 ジュリグシュ・ノプトル
性別 女性
地位 枢機卿 (総統の娘)
性格 几帳面で真面目。
教皇への猛烈な愛を抱えている。
名前 マリアン・コラール
性別 女性
地位 大司教
性格 おしとやかで愛嬌がある。
教皇とジュリグシュを応援している。
【完】宗教愛哀
コメント
11件
すごいの一言です……!!!!! まじ尊敬します姉貴!!!!! 一生ついて行きますッッッ!!!!!
長いお話になったとは聞いてましたが、まさかこんな壮大なものとは思いませんでした...😇🙏 短編集の枠を突き抜けてますよ天然水様(( しかも一次創作だなんて...高度過ぎてびっくりです😳✨
……天才ですか?