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注意事項
〇本作品はフィクションであり、実在する人物・団体とは何ら関係有りません。
〇一部、間接的に流血・暴力の描写があります。
〇サイコ・ホラー(微)あり。
〇本作品は、ハロウィンをテーマにした作品です。
 以上の事をご理解の上、本作品をお楽しみください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 賑やかな音楽に、目を引く色とりどりの画面と衣装。
 今日は年に一度のハロウィンパーティー。
 毎年どこかの国で行われる、ドール達だけの気楽なパーティーだ。
 出欠は各々の自由だが、今年も100を超えるドール達が出席している。
 親睦会とでも言ってもいいようなこのパーティーに、私、愛華も例の如く参加している。
 今年も賑やかで面白可笑しく、楽しいパーティーになるはずだった。
 人混みの中で、私は1人の黒猫の仮装をしたドールに目が行った。
 そのドールは、私の妹、鈴華(普段は鈴と愛称で呼んでいるわけだが)だ。
 ヒラヒラしたスカートに、リボンの多くついた黒猫のつけ耳と尻尾。
 全体的に黒で統一されており、普段の鈴の着ている服と似ている。
 だが、今日の鈴華は少し可怪しい。
 私と目が合ったと言うのに、そのまま鈴華は私から目を逸らした。
 普段ならシスコンっぷり全開で駆け寄ってくると言うのに。
 黒猫の仮装をしているから、性格まで猫にでもなってしまったのだろうか。
 鈴華なら有り得るな。あいつは演技が誰よりもずば抜けて上手い。
 そんなふうに感じ取った違和感を受け流す。
 いつもどうりに漆黒の髪を後ろで1つに結び、シンプルな魔女の仮装をした私は鈴華の方へ近寄った。
 「鈴華」
 その名を口にして、彼女をこちらに呼び寄せた。
 「なに?愛姉さん」
 相も変わらず鈴華は元気な声色で何の疑いもなくこちらに振り向く。
 普段の明るい声色。
 ただ、下ろした彼女の肩にかかるまで程の長さしかない茶の髪がくすぐったかったのか、普段とは違い、首元に手を当てている。
 「お前、またその仮装なのか?」
 鈴華の黒で統一された仮装に目をやりながら、尋ねる。
 「それはさぁ、愛姉さんも言えないじゃんかぁ」
 明るく元気なヘラヘラとした笑い声と共に軽いツッコミが入った。
 私は冷静に言葉を返した。
 「確かに。毎年の事だな」
 その一言だけで、私は鈴華にまた一歩近づいた。
 「それにしても、今日はやけに機嫌の起伏が激しいな?さっきまでは視線を逸らす位仏頂面だったと言うのに」
 私は鈴華の、首元に手をやっている右手に視線を動かした。
 仮装とは何ら関係無いはずの場所。
 鈴華のいつもと違う仕草に私は少しばかりの違和感を覚えた。
 「首、どうしたんだ?」
 そう尋ねれば、“鈴華”の声が一瞬低くなった。
 「あ〜、ちょっと髪がかかっちゃってくすぐったかっただけだよ〜」
 しかし、すぐに普段のヘラヘラとした笑い声混じりの声色に戻った。
 「あ、そう言えば、愛姉さん!」
 何かを思い出したのか、元気な声で後ろに手を組みながら“鈴華”は私の方を見つめる。
 「トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?」
 その明るい声と完璧なまでの会話の切り替えが、私を確信へと導いた。
 この“鈴華”はやはり偽物だ。
 確かに鈴は、自分に不利益な事があったり、話したくない事があれば話を切り替える。
 しかし、あいつはそれが下手だ。
 それ故に話を切り替える時はほとんど「てかさ〜」から始まる。
 菓子を強請るのはまんまなのだが…。
 だが、私は確信したのだ。
 目の前に居るコイツは鈴ではない。
 私は、周囲の賑やかな音楽に掻き消され、目の前のコイツにだけ聞こえるような声で囁く。
 「お前、鈴華ではないだろ?その首元に手を当てる癖。鈴と手が反対だ」
 冷静に、冷徹な視線をソイツに向けながら淡々と言葉を並べる。
 「愛姉さん?さっきから何言ってるのさ?」
 その声と仕草は引きつって、固まっている。
 「その、『愛姉さん』と言う呼び方も違うな。鈴は、『姉さん』と呼ぶぞ?」
 目の前にいるソイツから、自嘲の笑い声が漏れ出る。
 「フフッ、アハハッ。バレちゃったぁ」
 化けの皮の剥がれたソイツは、気味の悪い笑みを浮かべる。
 その笑い声は、高く、この場所に響く。
 「確かぁ、バレたらそのまま撤退して良いんだっけぇ?じゃっ、ばぁいばぁい〜!」
 甲高い気味の悪い笑い声を天にまで響かせ、ソイツは飛ぶようにここから抜け出してしまった。
 見事に取り逃してしまった私は、1つ、大きなため息をついた。
 __その時だった。
 急に目の前が悪転し、気が付けば私は頬を冷たい床につけていた。
 何が起きた?
 何故、私は倒れているのだ?
 誰が私を押した?
 何故、誰も助けに来ない?
 そんな事を思考し続けていると、上から声が聞こえた。
 「私のフリをするとは、実に肝の座った奴が居るものだ」
 その声は堂々として、威厳と怒りが感じられた。
 「少し席を外したらこれだ。面倒極まりない」
 あぁ。これは、間違い無い。
 この声は愛華のものだ。
 “私”の正体もバレてしまったらしい。
 あぁ。でも、目の前に愛華が居る!なんと喜ばしい事か!!
 「姉さん!こっちもうちの偽物捕まえたよ〜!」
 元気な声で、こんどは本物の鈴華が先ほど私が取り逃がしたニセモノを捕まえたらしい。
 「さて、私のフリをした馬鹿な人間よ、覚悟はできているな?」
 愛華は、乱暴に私の髪を掴み、無理矢理顔を上げさせた。
 「姉さん、今日はハロウィンだしさ、せっかくだから……ね?」
 そう、意味深な声で本物の鈴華は愛華に話しかける。
 それに応えるように、愛華もまた、ニヤリと笑ってみせた。
 「「Dead or treat.」」
 2人の揃った声を聞いて私は、「Happy Halloween」とだけ応えた。
 その後、グチャッと鈍い音と共に、生温かい何かが私(狂信者)から漏れ出た。
 
 
 
 ーー終ーー
最後まで読んでくださってありがとうございます!
どうもこんばんは、日奈です!
Happy Halloweenです!
なかなかの大どんでん返しとなりました…(苦笑)
読者様はハロウィン、どうお過ごしですか?
作者は相変わらず家でのんびりと過ごす夜になってます……。
我ながらちょっと謎な作品になりました。が、まぁ、目を瞑っていただきたいです。
ではでは、バイです!