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再び紅茶に口をつけようとした、そのとき
「なあ」
不意に、尊さんが低い声で問いかけてきた。
その視線は、真っ直ぐに俺の横顔を捉えている。
「前、同窓会にトラウマあるって話してたよな」
「え?あ、はい」
「それで制限付けられて、ひとつでも守れなかったら、酷く怒られたって言ってたろ。さっき取り乱してたのもそれが関係してるのか?」
核心を突く言葉に、心臓がトクンと鳴った。
隠してはおけない。俺は小さく頷いた。
「う……そ、そうですね……。昔のことだけど……ついこの間、再会して首締められそうになって、尊さんに助けてもらって事なきを得ましたし……それで今もまだ怖くて……」
「いや、悪い。思い出したくないことを聞いたな」
「い、いえ!」
「無理には聞かないが……さっきのように、お前のああいう怯えた顔を見ると……正直スルーはできそうにない」
尊さんの声には、隠しきれない怒りと、それを上回るほどの深い心配が滲んでいた。
「……し、心配かけてしまってすみません」
「謝らせたいわけじゃないんだ。話したくないことなんだろうとあの男について聞かないようにしてきたが、逆に避けてたら肝心なときにお前を助けられない気がした」
尊さんの真剣な眼差し。
俺の心の闇にまで手を伸ばし、共に苦しもうとしてくれるその強さ。
この人になら、今まで誰にも言えなかった醜い記憶も預けられるかもしれない。
「だから……話せる範囲でいい。お前が〝ああなる〟理由を教えてくれないか」
「……っ、尊さんが、そこまで言ってくれるなら……吐き出しても、いいですか」
「ああ、いくらでも」
尊さんはコーヒーカップをテーブルに置き、俺の方へ体を向けた。
その準備が整ったのを見て、俺は重い口を開いた。
「俺……大学に入ってしばらくしたころに、初めての彼氏が出来たんです。それが……亮太さん、で」
記憶の扉が開くと、当時の空気感まで蘇ってくる。
「最初は丁寧で誠実な人だなって思ってて、半同棲するぐらいには好きだったんです。でも一緒に暮らし始めて……徐々に本性?が現れ始めたんです……」
「……それが、お前が言ってたモラハラか?」
「はい……っ、機嫌、悪い時があって……いつもより冷たかったんです。そのときに心配して声掛けたら『悪いんですけど、タバコ買ってきてくれませんか?』って6000円渡されて……」
「いつもの=セブンスターで、6000円の時は1カートンと決まってたので、走ってコンビニまで買いに行ったんです」
「慣れてるな、毎回のことだったのか?」
「機嫌悪いときは、大体そんな感じで……。でも、その日に限って、ちょうどセブンスターが売り切れてて」