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🔫(・・ )
最後のなつらんかっこよすぎかよ!続き楽しみすぎる!
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最後のなつらんかっこよすぎかよ!続き楽しみすぎる!
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翌日。
シェアハウスの朝は、少しだけぎこちなかった。
ゆうがいる。
それだけで空気が少し違う。
リビングでは、らんがソファでだらけている。
すちがキッチンでコーヒーを入れていた。
みことは窓の近くでスマホを見ている。
こさめは、いるまの近くに座っていた。
少しだけ距離が近い。
守るみたいに。
その時。
階段から足音。
ゆうが降りてくる。
空気が止まる。
ゆうはその空気に気づく。
「……なに」
面倒そうに言う。
らんが軽く手を振る。
「おはよー」
ゆうは眉をひそめる。
「普通だな」
すちがコーヒーを差し出す。
「飲む?」
ゆうは一瞬迷う。
「……いらね」
でも完全に拒絶もしない。
そんな時。
インターホンが鳴る。
ピンポーン。
全員が少しだけ顔を上げる。
なつが玄関へ向かう。
ドアを開ける。
外に立っていたのは――
スーツの男。
「失礼」
低い声。
「ゆう、いるよな」
空気が凍る。
ゆうの顔色が一瞬で変わる。
手が震える。
いるまがそれに気づく。
なつが低く言う。
「誰だ」
男は笑う。
冷たい笑い。
「保護者みたいなもんだ」
ゆうが小さく言う。
「……帰れ」
声が震えている。
男は一歩前に出る。
「随分、楽しそうじゃないか」
部屋の中を覗く。
「友達ごっこか?」
その瞬間。
ゆうの拳が強く握られる。
男は続ける。
「忘れたのか?」
「お前がどういう人間か」
ゆうの呼吸が荒くなる。
「やめろ」
小さく言う。
男は止まらない。
「人を壊す側だろ」
その言葉で。
ゆうの中の何かが弾ける。
「うるさい!!」
怒鳴る。
部屋の空気が震える。
こさめがびくっとする。
ゆうは叫ぶ。
「お前が言うな!!」
目が真っ赤。
怒りじゃない。
恐怖。
男は鼻で笑う。
「図星か」
その時。
ドンッ
なつがドアを閉める。
男を外に押し出す。
「帰れ」
低い声。
男は少し笑う。
「また壊れるぞ」
最後にそう言って、去っていく。
静かになる。
ゆうの呼吸が荒い。
手が震えている。
視界が揺れている。
過去が戻ってくる。
床が揺れる感覚。
声。
怒鳴り声。
「役立たず」
「お前のせいだ」
「壊れてる」
ゆうの膝が崩れる。
「……っ」
その瞬間。
こさめが一歩出る。
でも。
先に動いたのは、いるま。
隣にしゃがむ。
「大丈夫」
ゆうの肩が震える。
「……来るな」
弱い声。
でも、いるまは離れない。
「平気」
静かに言う。
「俺も、こうなる」
過去の記憶で。
ゆうの呼吸が少し乱れる。
なつが壁を殴る。
「……くそ」
怒り。
悔しさ。
助けられなかった過去と同じ。
でも。
今回は違う。
ゆうは一人じゃない。
らんが静かに言う。
「こいつら、めんどいの背負いすぎだろ」
すちが小さく笑う。
「だからここにいるんだよ」
みことも言う。
「逃げなくていいよ」
ゆうの目に涙が浮かぶ。
壊れる音じゃない。
ほどける音。
そして。
本当のトラブルが始まる。
ゆうの過去は、
まだ終わっていなかった
夜。
シェアハウスは静かだった。
昼の出来事のあと、みんなあまり喋っていない。
それぞれ部屋に戻っていた。
ゆうは、リビングに一人で座っていた。
暗い部屋。
電気はついていない。
窓から少しだけ街灯の光が入る。
「……やっぱ無理だな」
小さく呟く。
この家。
優しい空気。
守ろうとする人たち。
それが、苦しい。
「また壊す」
自分がここにいたら。
また誰かが巻き込まれる。
ゆうは立ち上がる。
静かに玄関へ向かう。
ドアを開ける。
冷たい夜風。
その時。
「……どこ行くの」
後ろから声。
いるま。
ゆうは振り向かない。
「帰る」
短く言う。
いるまは少し歩み寄る。
「ここ、帰る場所じゃないの?」
ゆうは小さく笑う。
寂しい笑い。
「俺にはな」
ドアを少し開ける。
夜の空気が入る。
「お前らさ」
ぽつり。
「優しすぎる」
いるまは黙って聞く。
ゆうは続ける。
「壊れてるやつが立ち直る場所?」
苦く笑う。
「俺は違う」
「壊す側だ」
いるまが言う。
「違う」
ゆうが振り向く。
少し怒った目。
「知った風に言うな」
その時。
ガチャ
玄関の外で音。
ゆうの体が固まる。
ドアがゆっくり開く。
昼の男。
そこに立っていた。
「やっと見つけた」
低い声。
ゆうの顔から血の気が引く。
「……帰れ」
震えた声。
男は笑う。
「帰るのはお前だ」
その瞬間。
男が腕を掴む。
強く。
「っ!」
ゆうが抵抗する。
「離せ!」
いるまが前に出る。
「やめてください!」
男はいるまを見る。
冷たい目。
「関係ないだろ」
ドンッ
いるまが押される。
後ろに倒れそうになる。
その隙に。
男がゆうを外へ引きずる。
「離せ!!」
ゆうが叫ぶ。
でも男の力は強い。
外へ。
階段へ。
いるまが立ち上がる。
「ゆう!!」
その声。
ゆうが振り向く。
一瞬だけ。
目が合う。
その目は――
怖がっていた。
「なつ呼べ!!」
ゆうが叫ぶ。
次の瞬間。
車のドアの音。
バンッ
エンジン。
タイヤの音。
キィィィッ…
車が走り去る。
静寂。
玄関の前に立ついるま。
呼吸が荒い。
手が震えている。
その時。
後ろから足音。
なつ。
らん。
こさめ。
すち。
みこと。
みんな出てくる。
いるまが震える声で言う。
「……ゆうが」
息が詰まる。
「連れていかれた」
なつの目が一瞬で変わる。
怒り。
後悔。
決意。
拳を強く握る。
「……取り返す」
低い声。
今度は。
助ける。
絶対に。
車の音が消えたあと。
シェアハウスの前は、重い沈黙に包まれていた。
いるまの手はまだ震えている。
「……ごめん」
小さく言う。
「止められなかった」
こさめがすぐに首を振る。
「いるまのせいじゃない」
でも、いるまは俯いたまま。
その時。
なつが静かに言う。
「……場所は分かる」
全員が顔を上げる。
らんが腕を組む。
「マジで?」
なつは短く頷く。
「昔、ゆうがいた場所だ」
その言葉で空気が変わる。
すちが聞く。
「じゃあ、今から行くの?」
みことも言う。
「みんなで?」
なつは首を振る。
「いや」
短く言う。
「二人で行く」
らんを見る。
らんは少し笑う。
「だろうな」
なつが続ける。
「全員で行くと、あいつら警戒する」
静かな声。
「それに」
少し止まる。
「これは、俺の問題でもある」
その言葉に、いるまが顔を上げる。
「……なつ」
なつは言う。
「昔、助けられなかった」
ゆうの過去。
それが頭から離れない。
「だから今度は」
拳を握る。
「取り返す」
らんが立ち上がる。
「俺も行く」
なつを見る。
「同じ顔してるからな」
らんも知っている。
壊れた過去。
見捨てられた感覚。
「ほっとけねえ」
なつは小さく頷く。
その時。
いるまが言う。
「俺も」
一歩出る。
でも。
なつが止める。
「だめだ」
はっきり。
「お前はここ」
いるまの目が揺れる。
「でも!」
なつは静かに言う。
「守るやつがいるだろ」
視線がこさめに向く。
こさめが驚く。
いるまは黙る。
なつは言う。
「家、守れ」
いるまの拳が震える。
悔しい。
でも。
ゆっくり頷く。
「……分かった」
なつはドアへ向かう。
らんも後ろにつく。
夜の外。
冷たい空気。
車のキーを回す。
エンジンがかかる。
らんが助手席に乗りながら言う。
「場所、やばい?」
なつは短く言う。
「かなり」
らんは笑う。
「最高じゃん」
でもその目は笑っていない。
車が走り出す。
夜の道路。
シェアハウスが遠くなる。
―――
その頃。
暗い部屋。
古い倉庫のような場所。
椅子に座らされているゆう。
手首を押さえられている。
昼の男が目の前に立つ。
「随分楽しそうだったな」
ゆうは睨む。
「……帰せ」
男は笑う。
「お前が帰る場所はここだ」
ゆうの拳が震える。
「俺は」
歯を食いしばる。
「もう戻らない」
男の顔が少し変わる。
「まだ分かってないのか」
近づく。
「お前はな」
耳元で囁く。
「ここから出られない」
その時。
ゆうの頭に浮かぶ。
あの家。
笑ってた空気。
こさめの声。
いるまの言葉。
「ここにいる」
ゆうは小さく呟く。
「……帰る」
男が笑う。
「誰が迎えに来る」
その瞬間。
外から音。
車のブレーキ。
キィィッ
男が眉をひそめる。
「……誰だ」
ゆうの目がわずかに揺れる。
そして。
倉庫の扉が
ドンッ!!
激しく開いた。
そこに立っていたのは――
なつ。
その後ろに、らん。
なつの声は低かった。
「迎えに来た」
ゆうの呼吸が止まる。
本当に。
来た。