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「票が集まりました。本日吊るす事になったのは、鈴華様です。」
GM愛華の機械的な声が、非情にも、その名前を読み上げた。その瞬間、会議室の空気が凍り付く。
「え……?…うそ……」
桃色の瞳を大きく開き、揺らしながら、右手を口元に当てる。
明るく元気な腐女子で姉の愛華が大好きなシスコン。
そんな鈴華はここにはいなかった。
ただ、深い絶望と、恐怖と、不信感のみ。
「バカ言え!鈴は、猫又かもしれねぇし、狩人の可能性もあんだぞ!?」
バンッ ガッ
大きな音を立てて、席から勢い良く立ち上がり、声を荒げる。
「独の言う通りだ、が……」
ドイツは苦々しい表情を浮かる。
ドイツは賢いのだ。既に票が集まり死が確定している者をかばっても意味が無いと言う事を理解しているのだ。
「鈴華様、遺言をどうぞ。」
鈴華に向けて、そっと愛華は手を向け、話すように促す。
鈴華の桃色の瞳は一瞬、縋るように愛華の紅の瞳を見つめた。
だが、鈴華にとって大好きな姉、愛華は、今は冷徹なシステムにしか見えなかった。
「じゃあさ、みんなッ。うちの最後の晴れ舞台、見ててよね。うち、しっかりやり遂げるから」
震える声で、普段の元気さを無理矢理取り繕って、言葉を紡ぐ。
かと思えば、勢い良く黒のスカートを捲り、太ももにあるガーターホルスターから、鋭く銀に光るナイフを取り出した。
「Hör auf damit, Suzu!」
独華が我を取り戻したように、鈴華に向けて叫ぶ。
だが、その叫びも無惨に、鈴華は自分の喉元を一突きした。
「カハッ」
空気だけが動く音共に、鈴華の口と喉からはダラダラと命の紅が流れ出る。
次の瞬間には、もう、息をしていなかった。
そんな鈴華の倒れたのを目の当たりにし、独華は言葉を失い、息をするのを忘れた。
独華にとって、大切な人を完全に失うのはこれで3度目だ。
その場で独華は、力なく膝から崩れ落ちた。紅い池に膝をついてしまったからか、独華の膝は紅に染まる。
鈴華の銀のナイフには、鮮やかな紅が付着しており、そこから花が咲いている。
白のアネモネ。周囲には、桜の花びらが散らばっていた。
白のアネモネの花言葉は、「真実」「誠実」「希望」だ。
独華はそんな事を思い出しながら、矢張り鈴華は黒でないと何度も思うのだった。
「桜舞い散る時もまた美しいだろう」
一言も口にしなかった中華がふと、そんな言葉を口にする。
「されど、また貴方とこの桜を見たい」
それに続けるように日本が言葉を足した。
これは、鈴華が生前話していた言葉だ。
「アルッ!?」
そんなしんみりとした空気を打ち破るように、中国の悲鳴のような声が響いた。
それも無理は無い。鈴華の倒れた場所にある影から、無数の黒い手のような物が伸び、中国の足を掴んでいるのだ。
悍ましい事この上ないだろう。
中国はその黒い手に抵抗するかのように足を動かし、声を上げる。
「俄罗斯!救――――
近くにいるロシアに助けを求めるも、言い終える前に、中国の瞳の光は消え失せた。
そのまま、ドサッと音を立てて、中国は机に突っ伏す。
これぞ好機と言わんばかりに、黒手はさらに強く中国の足を掴み、引きずってゆく。
そして最後には、鈴華の影の中に、まるで沼の中にでも入ったかの様な音を立てて引き入れた。
ロシアは真横で起きたその出来事を、ただ呆然と見つめる事しかできなかった。
「これにて、処刑は終了とさせて頂きます。」
鈴華の自害も、中国の悲鳴も、黒い手も、その全てが本の些細な出来事であるかのように、愛華は無感情な言葉を並べる。
「では、処刑を見届けていただいた為、就寝、議論、及び視界の邪魔になるので、消させていただきます。」
パチンッ
そんな音と共に、鈴華も、床の紅い池も、ナイフも、影も、花も、何もかも何事も無かったかのように消えて無くなった。
誰も、何も言わなかった。否、言えるような雰囲気では無いのだ。
そんな中、愛華だけが依然とした態度で口を開く。
「皆様、そろそろ陽が傾き、第2夜が訪れます。では、ご武運を。」
そんな言葉と共に、愛華は例の如く、右手を高らかに上げ、指を鳴らす。
それと同時に、11人は倒れるかのように眠りに就き、会議室は暗闇に包まれた。
ーー続クーー