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ルワジ「ええ。よく私はフリーク州以外の周り人たちからは『黒人』という言葉で呼ばれていますが、私のルーツはナイジェリアなんです。しかもヨルバ族にルーツを持っています。
両親がナイジェリア人なんですが仕事の関係でフリーク州へ移住して私が生まれました。それからフリーク州以外の大半の場所だとこの肌の色のせいで職質に遭うことがあると両親から聞きました。実際両親の友達が何度も職質に遭ったそうなんです。私はニュースで私と同じ肌の色を持った人が警官に取り押さえられて亡くなる事件が多いと知ったんです。『黒人は筋肉質で怒りっぽい。黒人はドラッグを持ってる』という偏見のせいで生きづらい思いをしてる人たちも多いと聞きましたね。」
T「よくないですよね、聞いてて辛くなりますよ。他の日本人にも言ってあげたいですよ。
あなたと同じルーツを持ってる人たちがどんな不条理を抱えて生きづらい思いをしてるのか、教えてあげたいですよ。
かつてのアメリカではよく我々日本人を描く時はメガネと出っ歯だからそれと同じくらい嫌な思いなんですよね?違う痛みだけど、嫌な気持ちは同じですから私はみなさんの味方でいたいですよ。」と助け舟を出すのだった。
ルワジがメガネを手で退かし咽び泣く涙を拭いてこう言った。「すみませんね。ホムパなのに、こんな重い話をしてしまって。フリーク州で生まれ育つことがどれだけ恵まれているのか…実感させられました。私がフリーク州の外で職質と言った危険な目に遭ってないことを考えると、どうしたらいいかわからない気持ちになるんです。」
ミンリ「もうわかったから!!あんまり無理せんといてや!!本音を話してくれてええんやで。辛いのは私たちもみんなも同じやから。私たちはあの歴史のお化け屋敷に入ったんにゃから!!」
ムラクモ「東京フリーク区ではスペイン帝国と日本、隠れキリシタンの正義をテーマにした残酷なお化け屋敷。アメリカフリーク州ではスペイン王国とネイティブアメリカン、コロンブスの正義をテーマにした惨いお化け屋敷をそれぞれ経験していますから。」
T「なので、どちらか一方が悪だというおばけ屋敷ではないことを表しています。スペインがなぜ植民地支配をしなければいけなかったのか。それによって何がもたらされたのか。色んな視点を持てば見方が変わるかもしれません。フリーク州とフリーク区では善悪二元論、正義の危険性についての授業を何度も教わりましたよね。」
ムラクモ「具体的には何ですか、Tさん?」
T「スペインが誕生したきっかけは当時イベリア半島では800年間のイスラームによる支配が続いていました。そんな時に再征服と言う意味のレコンキスタといって再び国を取り戻しました。その理由は単なる追い出しではなく、高度な文明を自分たちのものとして受け継ぐプロセスでもあったからです。勘違いしないでほしいのはただの支配ではなく、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教、他の文化も共存していた時代でもありました。話を戻してイベリア半島ではカスティーリャ王国のイサベル女王とアラゴン王国のフェルナンド2世が結婚しました。ですが、スペイン王国として合同統治するまでは100年以上かかったと言われています。理由としてはお互いの自由も守りたいと言う板挟みがあったからなんです。」
クイン「そうだったのか。よくフリーク州以外の州では最近コロンブスの大虐殺のイメージが強いからただの悪だと思ってるらしいけど、それについてはどう思ってるの?俺がインディアナ州にいた時はそう習ったんだよね。」
T「コロンブスは強い宗教的な情熱を持って、当時新大陸に住んでいたネイティブ・アメリカンたちに伝えたいと言う熱心を持っていました。ですが、当時のヨーロッパではキリスト教以外の宗教を排除しようという価値観が根強かったのも大きく関係しています。 つまり、スペイン王室からの経済的成果(金)を求める強い期待と、遠い異郷での部下たちの不満、そして先住民との関係構築という複雑な問題の間で苦しんだと言うことです。」
ムラクモ「『ただの悪だと決めつけるな』とはこのことだったのかもしれませんね。他にも何をもたらされたんですか?新大陸を植民地かして。」
T「新大陸からトウモロコシ、ジャガイモ、トマト、カカオ(チョコレート)、唐辛子、カボチャがヨーロッパに輸出され、逆にヨーロッパから牛肉、豚肉、鶏肉、コーヒー、小麦、砂糖が新大陸に輸出されました。これによってアメリカではステーキとBBQが始まり、ベルギーとスイスでは中米からもたらされたカカオ豆がチョコレートとして作られていきました。」
サスキア「そう考えると、正義って何なんだろうなって思うよね。」
T「みなさんが食べている物のほとんどがそれに該当することを考えれば、重みを感じますよね。生き方が難しい理由の本質を、歴史を通して学ぶことの大切さを理解させるために東京フリーク区とアメリカフリーク州があるんだと思っていますから。」
クイン「ありがとよ、T。これで少しは見方が変わる気がするよ。俺がインディアナにいた時には授業で先生が言ってた。コロンブスが悪だと決めつけて授業してたんだけど、一体何で?!!」
T「それは当時スペインのライバルだったブリティッシュとネーデルラント(オランダの自国名)と言ったプロテスタントの国たちが流したプロパガンダだと言われているからです。そう考えると自分が自分を悪だと言わず、相手が自分のことを悪だ。自分が正義だと言う思考になる。それこそが善悪二元論の危険性だと思っています。」
クイン「そんな…俺の両親の母国のブリティッシュまでが…何だか複雑な気持ちだよな…」と。
エヴァの心の声「まさか…私のパパのルーツのカムリも、かつてはイングランドによって自分たちの文化が奪われていた歴史がある…でも私のママのルーツのイランも例外じゃない…イランの知恵だって、アラブから経由してそれが、T君が言ってたイベリア半島に伝わったことを考えると何だか複雑だよね。」と少し涙を流してハンカチで目の下を拭くのだった。
ヘレンの心の声「私のルーツのヘレネスも例外じゃない。この話には関係ないけど、授業でよくヘレネスは紀元前の時にはアケメネス朝イラン帝国の侵略を阻止したり、アレクサンドロスによる征服の歴史があって、ビザンツ帝国がオスマン帝国に負けて占領された歴史もあったよね。でもこの場所は誰も私のルーツをギリシャだのグリークなんて言わないから助かるよ。ヘレネス系アメリカ人、これこそ私のアイデンティティだよ。T君の解説はいい刺激になるよ。」と深く頷いた。
T「あなたが悪いわけじゃない。私たちはただ、その複雑な歴史の先に立っているだけなんなんです。」と。
サスキア「じゃあ言っとくけど、日本のその…さっき君が言ってたキリシタンについて話してくれる?」
T「いいですよ。ムラクモさん。ミンリさん。言っても大丈夫ですか?フリーク区でお化け屋敷で体験したこと、私の視点で話しても大丈夫ですか?」
ムラクモ「構いませんよ。あなたはフリークの中では歴史が得意という個性がありますからね。」
ミンリ「ええに決まっとるやんけ、早ようせぇや!!」
コメント
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読み終えたわ。このエピソード、めっちゃ考えさせられるな。 ルワジの「黒人」呼ばわりされる苦しみとか、Tが歴史の複雑さを「両方の視点で見てみよう」ってちゃんと解説してくれたところが印象的だった。コロンブスをただの悪者にしたくないっていうスタンス、すごく納得できる。 クインが「俺の両親の母国まで…」って複雑な心情を吐露したシーンもグッときた。ヘレンとエヴァの心の声で、それぞれのルーツの歴史も重なる感じ、いいスパイスになってるわ。善悪二元論の危険性、ほんとその通りだと思う。続き、気になる🔥