「……はぁ」
部屋に入って鍵を閉めた瞬間、私は玄関に座り込んだ。
パンパンに浮腫んだ足をハイヒールから引き抜くと、解放感よりも虚しさが勝った。
(なんで隣の人に、あんなに惨めなところ見られなきゃいけないの……)
光に借りた千円札をテーブルに置く。
大手代理店で何千万の予算を動かしてる私が、隣の売れない芸人に千円借りて、泣いて。
バカバカしすぎて、乾いた笑いが出た。
その時、トントン、と壁が叩かれた。
「……え?」
古いアパートだから、隣の振動がダイレクトに伝わってくる。
「おーい、生きてるかー? 泣きすぎて脱水症状とかになんなよ」
壁越しに、光の抜けたような声が聞こえた。






