テラーノベル
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「……あ、……あはは! やったな、殴ったな! これで終わりだ、お前の芸人人生も!」
健太は血を拭いながら、狂ったように笑い出した。
光は手を出していない。でも、この密室のような空間で、健太が「暴力を振るわれた」と騒げば、芸人としてのイメージは終わる。
「……日比谷くん、逃げて」
私は光の腕を掴んだ。
「健太は狂ってる。このままじゃ、あなたが本当に……」
「……お姉さん、いいよ」
光は私の手を、拒絶するわけではなく、でもどこか一線を引くように優しく解いた。
「俺は芸人だよ。これくらい、最高のネタじゃん。……でも、お姉さん。これ以上、俺のために自分を下げんなよ」
光は倒れている健太を見下ろし、静かに言った。
「お前が何をバラそうが勝手だけど。……俺は、この人のことを一瞬でも面白いと思った自分を、恥じてねえから」
外では、いつの間にか激しい雨が降り始めていた。
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