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6 - 第六話「裏返しの自分」

2025年07月25日

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静寂。

それはあまりにも不自然で、音の存在すら拒むような空気だった。


ないこは目を覚ますと、天井を見つめた。

見慣れたはずの部屋――のはずなのに、どこかが違う。


壁にかかったポスターの位置。

机の上に置いたはずのペンが、なぜか逆の側にある。

時計の針は回っているけれど、その音がまるで聞こえない。


ないこ: ……ここ、どこ?


立ち上がって、部屋を見回す。

すべてが“完璧に逆”だった。

右と左が反転した部屋。自分の記憶と一致しない世界。


そして、鏡の中。

――いや、“鏡の外”には、もうひとりの“ないこ”が立っていた。


鏡の中の闇ないこ: 交代の時間だよ。


ないこ: 交代……?


鏡の中の闇ないこ: 僕が、君になる。

君が、こっちに来る。それだけ。簡単でしょ?


ないこ: そんなの、勝手に……


鏡の中の闇ないこ: でも君、昨日言ってたよね?

「僕はもう、限界だ」って。

それってつまり、「代わって」って意味じゃないの?


ないこ: ……僕は……そんなつもりじゃ……


鏡の中の闇ないこ: 君は、何も感じなくていい世界を望んだ。

笑顔も、期待も、重荷も全部、僕が背負ってあげる。

君はただ、ここにいればいい。


ないこ: ……やめて。僕は、“ないこ”でいたい。


鏡の中の闇ないこ: だったら証明してよ。

「君の方が、本物だ」って。


ないこ: 僕は――……


息を吸おうとして、気づく。

空気の匂いが、ない。感覚が、薄れていく。

まるで、現実の中にある“虚構”に取り込まれていくように。


ないこ: 僕は……本物……だよな……?


ふと視線を上げた先。

そこにいたのは、“鏡の中”にいたはずの闇ないこが、ないこの服を着て、笑っていた。


鏡の中の闇ないこ: さあ、“今日の配信”の時間だよ。

君の代わりに、完璧に演じてあげるから。


ないこ: ……やめて……!


叫んだ声は、音にならなかった。

それが世界に届くことはなく、沈黙の中に溶けて消えていった。


ないこ: 僕は……消えてなんか、ない……


でもその言葉すら、自分の口から出てきたのか、

それとも“鏡の中”から響いたのか――分からなかった。




次回:「第七話:沈黙のないこ」へ続く。



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