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7 - 第七話「沈黙のないこ」

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2025年07月25日

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今日は配信日。

画面の向こう側には、たくさんのリスナーが待っていた。


闇ないこ: こんばんは〜、ないこです。今日も来てくれてありがとう。


その笑顔は、完璧だった。

いつものテンション、いつもの口調、いつもの「ないこ」。

けれど、ほんのわずかに――温度が、ない。


コメント欄が盛り上がる。

でも、目の奥には“感情”がなかった。


闇ないこ: 最近ちょっと寝不足なんだけど、みんなのコメントで元気出るから大丈夫。


その言葉は嘘だった。

彼の中に“元気”なんて感情はなかった。

あるのは――冷たい静けさだけ。


一方その頃、鏡の中。


そこに、本物のないこはいた。

声は出ない。体は動かない。感情を伝える手段も、表情すらも奪われたまま、ただただ鏡の中に“存在するだけ”。


ないこ(心の声): ……ここは、どこ……?

僕は、生きてるの……? それとも、もう――


思考だけが、冷たく響く。

外から聞こえる笑い声。

自分の名前を呼ぶ声。

そのすべてが、“自分じゃない自分”に向けられている。


ないこ(心の声): 僕は……ここにいるのに。


鏡の表面に手を伸ばそうとしても、動かない。

叫ぼうとしても、声が出ない。


外の世界の“ないこ”は、どこまでも順調だった。

完璧に演じられた言葉、視線、リアクション。

何ひとつ、違和感を持たせない仮面。


闇ないこ: それじゃ、今日もありがとう。また次の配信で会おうね。


終了の挨拶をして、カメラが切られる。

その瞬間、闇ないこの表情がふっと消える。


闇ないこ: ……楽だね。こうして演じるのは。

“自分”なんかいらなければ、苦しまなくて済む。

“本当”なんて、捨ててしまえばよかったんだよ。

君も、最初から――そうしたかったんでしょ?


鏡の中で沈黙するないこは、微かに首を横に振った。


ないこ(心の声): 僕は……そんなの、望んでない……!


けれどその言葉も、誰にも届かない。

音も光も、全てが緩やかに遠ざかっていく。


やがて、鏡の中の景色が滲み、暗く塗り潰されていく。


ないこ(心の声): 僕を、見つけて……


その祈りは、ただ静かに、鏡の奥へと沈んでいった。




次回:「第八話:深層」へ続く。



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