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至高なる拝金主義者
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#転生
高天原ヒロ
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おお、新キャラ・大嶌良樹、めっちゃ良いな! いきなり現れた大型犬系幼馴染、しかも体育委員長に即就任って展開、熱すぎるわ🔥 「ヒマちゃんのために鍛えた」とか、ストレートすぎて胸熱なんですけど。斗真先輩と凌会長の焦り顔もガチで刺さった——これは夏の嵐、来るぞ…! 次回が楽しみすぎるわ。
――夏休みまで、あと少し。体育祭の開催が正式に決定してから、生徒会はこれまで以上に慌ただしくなっていた。
競技種目の調整。
各クラスへの連絡。
当日のタイムスケジュール。
必要な備品の確認。
やるべきことは、まだ山積みだった。
「……あとは、体育委員長か。」
資料をめくりながら、凌が眉間に皺を寄せる。
「せやなぁ。そこが決まらんことには、当日の細かい指示出しもできへんし。」
環季も困ったように腕を組んだ。
体育祭を円滑に運営するためには、各クラスの体育委員をまとめる存在が欠かせない。
だが――。
この学園には、現在その役職を担う生徒がいなかった。
「そもそも、なんで前任者は後任を決めなかったんですか?」
ヒマリが尋ねる。
すると、ソノが小さく苦笑した。
「前任者の豪先輩らしい理由ですよ。」
「……ああ。」
凌も思い出したように息を吐く。
前年度の体育委員長――神城豪。
この学園を卒業した、かつての生徒会メンバーだ。
豪は引退間際、凌とソノにこう言い残していた。
『今のこの学園に、該当者がいねぇ!』
『体育委員長は、みんなを引っ張れる、器のデカいやつに任せたい!』
そして最後には――。
『悪りぃけど、新入生でいい奴がいたら任命しといてくれ!』
そう言って、後任選びを二人に託したのだった。
「……まさか、そのまま空席になるとはな。」
凌が頭を抱える。
「候補は何人か見てみたんやけどなぁ……。」
環季が資料を眺めながら唸る。
「どうにも決め手に欠けるんよ。」
「僕も何人か声をかけてみたけど、今ひとつ……かな。」
斗真も困ったように笑った。
「うーん……。」
ヒマリも資料を覗き込みながら首を傾げる。
「そんなに難しいんですか? 体育委員長って。」
「簡単やないで。」
環季が指を一本立てる。
「体育祭当日、何十人もの体育委員をまとめなあかん。先生との調整もあるし、競技の進行にも関わる。責任も大きい。」
「なるほど……。」
「せやから、神城先輩が言う『器のデカいやつ』って条件も、あながち間違っとらんのよ。」
「うーん……。」
ヒマリは腕を組み、真剣に考え込む。
その時だった。
コンコン――生徒会室の扉がノックされた。
「ん?」
全員の視線が、一斉に扉へ向く。
「どうぞ。」
ソノが声をかける。
ガチャリ、と扉が開いた。
「失礼します。」
入ってきたのは――見慣れない男子生徒だった。
「本日付で一年生へ転入することになりました。大嶌良樹といいます。」
「…………。」
生徒会室に、一瞬の沈黙が落ちた。
無理もない。
男子生徒の身長は――一九〇センチ近く。
しっかりと鍛えられた体格に、健康的に日焼けした肌。
そして何より目を引くのは、柔らかな若草色の髪と瞳だった。
大柄な身体とは裏腹に、その表情には人懐っこい素直さが滲んでいる。
「……でか。」
凌が思わず呟いた。
「会長、失礼ですよ。」
ソノがたしなめる。
「いや、だって……。」
凌が改めて良樹を見る。
「うわぁ……。」
ヒマリも目を丸くして、良樹を見上げていた。
すると――。
良樹と目が合う。
「…………。」
「…………。」
次の瞬間。
二人の目が、同時に大きく見開かれた。
「……え?」
「……あれ?」
そして――。
「えっ!? よっちゃん!?」
「えっ!? ヒマちゃん!?」
ヒマリが勢いよく立ち上がる。
良樹も、ぱっと顔を輝かせた。
「やっぱりヒマちゃんだ!」
「よっちゃん! どうしてここにいるの!?」
「今日からこの学校に通うことになったんだ!」
「えええっ!? 聞いてないよ!」
「僕も、ヒマちゃんがこの学校にいるなんて知らなかった!」
二人は、まるで昨日まで一緒に遊んでいたかのように、屈託なく笑い合う。
その様子を、生徒会の四人はぽかんと眺めていた。
「……ちょっと待て。」
凌が口を挟む。
「ヒマリ。知り合いなのか?」
「はい!」
ヒマリが満面の笑みで振り返る。
「幼馴染なんです!」
「幼馴染……?」
「小さい頃、家が隣だったんです。でも、家庭の事情でよっちゃんが海外へ引っ越しちゃって……。」
ヒマリは良樹の方へ向き直る。
「よっちゃん、いつ帰ってきたの? それに、その身体……昔は私より小さかったのに。」
「帰ってきたのは、一週間くらい前だよ。」
良樹は自分の身体を見下ろすようにして、少し照れくさそうに笑った。
「身体は……昔、ヒマちゃんが『強い人が好き』って言ってたから、鍛えてたらこうなっちゃって……。」
「そんなこと……言ったっけ!?」
ヒマリが目をぱちぱちさせる。
良樹は苦笑しながら頷いた。
「言ったよ。僕、ヒマちゃんが言ったことなら、ちゃんと覚えてる。だから、こんなに頑張ったんだ。」
「…………。」
そのやり取りを――。
凌、ソノ、環季、斗真の四人は無言で見ていた。
「……なるほど。」
ソノが静かに呟く。
「これは……豪先輩が後任に望んでいた条件に、かなり近いですね。」
「確かに……。」
環季も良樹を見る。
「体力もありそうやし、何より人当たりがええ。あれだけ素直やったら、体育委員もついてきそうや。」
「……。」
凌は、少し面白くなさそうな顔をしていた。
しかし――。
大嶌良樹は、誰がどう見ても体育委員長として適任だった。
凌は短く息を吐くと、良樹に声をかける。
「大嶌。」
「はい!」
良樹が姿勢を正す。
「生徒会に、興味はあるか?」
「……!?」
突然の凌の言葉に、良樹はきょとんとしている。
横から、ヒマリが声を上げた。
「そうだ、よっちゃん! 体育委員長やってくれない? もうすぐ体育祭があるんだけど、体育委員長のポストが空いてて……。」
凌が話を引き取る。
「そういうことだ――。もし生徒会に興味があるのなら、体育委員長という役職をお前に任せたい。」
ヒマリと凌の言葉を受け、良樹はしばらく黙っていた。
やがて――。
ぱっと顔を上げる。
「分かりました。俺で良かったら、やります。」
その言葉に、ヒマリの顔が明るくなる。
「わぁ、ほんと!? よっちゃん、ありがとう〜!!」
嬉しさのあまり、ヒマリは良樹に駆け寄った。
そんなヒマリを、良樹は優しい眼差しで見下ろす。
「ヒマちゃんの頼みだもん。俺、頑張るよ。」
「……。」
凌は、そんな二人をしばらく見つめていた。
やがて――。
小さくため息を吐く。
「……決まりだな。」
凌の言葉に、良樹は向き直り、姿勢を正した。
「体育委員長。よろしく頼む。」
凌が手を差し出す。
良樹もその手を、しっかりと握り返した。
「はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
こうして――。
空席だった体育委員長の席に、新たな人物が加わることになった。
◇
「じゃあ、大嶌の転入の書類と、生徒会役員加入の書類を職員室に持っていってくる。」
そう言って、凌が立ち上がろうとした時だった。
「はい! 私、行ってきます!」
ヒマリが元気よく手を挙げる。
「ついでに、学校案内もしてきます!」
「……お前一人でできるか?」
「はい! 大丈夫です!」
ヒマリは良樹へ振り向く。
「よっちゃん、行こう!」
「うん。じゃあ、ヒマちゃんよろしくね。」
良樹は生徒会のメンバーへ向き直り、丁寧に頭を下げた。
「では、一旦退出を失礼します。」
そう言って、良樹はヒマリとともに生徒会室を出ていった。
パタン――扉が閉まる。
静寂。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
生徒会室に残された四人。
最初に口を開いたのは、環季だった。
「……なんや、あいつ。」
腕を組み、閉じた扉を見る。
「いきなり来たと思ったら、ヒマリをかっさらいよった……。」
「…………。」
凌も腕を組む。
(何なんだ、あいつは――。)
入ってきて数分で体育委員長に決まって。
ヒマリとは幼馴染で。
しかも――『ヒマちゃん』 『よっちゃん』
まるで昔から、二人だけの世界があるような呼び方。
「……会長。」
ソノが苦笑する。
「顔に出ていますよ。」
「……っ」
凌が慌てて顔を背ける。
「……ふふ。」
ソノは、それ以上何も言わなかった。
そして――。
「……幼馴染、か」
斗真が小さく呟く。
いつもの笑顔を浮かべたまま。
優しく、穏やかに。
けれど――。
その瞳が、わずかに揺れていた。
今まで決して崩れることのなかった笑顔の奥に、初めて隠しきれない焦りが滲んでいた。
◇
職員室へ向かう廊下で――。
二人は並んで仲良く歩いていた。
「よっちゃん、ほんとに久しぶりだね!」
「うん。」
「海外ってどうだった?」
「いろいろあったよ。でも、ずっと日本に戻りたかった。」
「そうなの?」
「うん。だって――。」
良樹は、隣を歩くヒマリを見つめた。
そして、にっこりと笑う。
「早く帰って、またヒマちゃんに会いたかったから。」
「……え?」
ヒマリが足を止める。
良樹も立ち止まり、まっすぐにヒマリを見る。
その表情には、迷いも照れもない。
ただ、真っ直ぐな想いだけがあった。
「僕、今でもヒマちゃんのこと大好きだから。」
「……えっ?」
突然向けられた言葉に、ヒマリは声を失った。
(よっちゃんの言う『好き』って……何?)
――僕のこと、好きにならないで。
昨日、斗真にそう言われたばかりだった。
そして今――。
ヒマちゃんのこと、大好き。
同じ「好き」という言葉なのに。
どうしてこんなにも、意味が違って聞こえるのだろう。
廊下の窓から、校舎で熱せられた夏の風が吹き込んでくる。
若草色の髪が、風にふわりと揺れた。
これから訪れる新たな夏の嵐を予感するようだった。