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するとすぐにスマホが鳴り、メールの返信を知らせる。


メールを読むのが怖い。


ジュエリーの事もだけど、昨晩の事も含めて「勘違いするな」と書いてあったら、完全に男性不信になってしまいそうだ。


……というか、部長の考えが分からない。


彼だって今まで私の事をなんとも思っていなかったはずだ。


声を掛けられるのは用事がある時だけ。


休憩時間に私語をしたのは数えるぐらいだったし、いつも男女問わず部下に慕われている彼なら、私より仲良くしている人は大勢いるだろう。


(なんで私だったの?)


悔しいけど彼はイケメンだ。高身長で仕事ができるし、噂では難関大学卒で、TOEICも満点だったとか。


部下への気配りもできるし、誰かが失敗してフォローする時も、頭ごなしに叱らず、次に同じ失敗をしないための確認をしっかりする。


だから皆、『速水部長の下でなら安心して働ける』と言っていた。


そんな人気者が、普段は恵としか話さない私になぜ興味を持ったのか。


(……昭人に未練があるの知ってるくせに、なんであんな……、上書きするような抱き方をするの?)


昨晩の嬌態を思いだした私は、カーッと赤面する。


私を押し倒した部長は、端整な顔に汗を浮かべて余裕のない顔をし、まるで一匹の獣みたいだった。


(なんで皆の人気者が、私にあんな顔を見せるわけ!?)


今になって混乱した私は、ボフッと枕を殴る。


昭人の事で悩んでいたはずなのに、気がつけば部長の事で頭が一杯になり、悔しくて堪らない。


私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせたあと、ドキドキ鳴る胸を押さえてスマホを開いた。


【おはよう。酷くして悪かった。無理せず週末は休んでくれ。箱は妹にやるつもりだったが、予定が変わって行き先がなくなったから代わりにもらってくれ。誕生日だって言ってただろ? 要らなかったら売るなりなんなり、好きにしてくれ】


妹さん、いたんだ。


ある程度の事情を知って納得したし、他の女性の代わりじゃなくて良かったと安心している自分がいた。


でもこんな高価な物、本当にもらっていいんだろうか?


心配になった私は、さらにメールをする。


【こんな高価な物、いただけません。お返しします】


すると、すぐに返信があった。


【いらん。戻すな。寝るからもうメールするな】


シンプルな答えを見たあと、さすがに悪くなって返信するのを諦めた。


「はぁ……」


溜め息をついた私は、チラリと緑の箱を見る。


中身を確認したい気持ちはあるけど、何かあった時に弁償なんてできないので、なんとかタイミングを見て部長に返そうと決めた。


「……なんなの、もぉ……」


私はバフッとベッドに倒れ込み、文句を言ってモダモダと体を揺する。


「馬鹿、馬鹿、バーカ!」


ここにいない部長に悪態をついた私は、溜め息をついたあと部長の残り香がないかスゥッと息を吸ってしまう。


夢かと思っていたけど、昨晩のあれは現実だ。


「……シーツ、洗濯しないと」


仰向けになった私は溜め息混じりに言う。


この気持ちをどう言い表したらいいか分からない。


何も残さず去ったなら、「『大人のセックスを教える』って言っていたし、一晩抱くだけの関係だったんだ」と割り切れる。


でも妹さんの代わりとはいえ、こんな高価な物を残され、しかも私の誕生日を覚えていると言われて、どう捉えたらいいか分からない。


(……あの人、私の事を気に掛けてたのかな?)


チラッとそんな思いが心をかすめ、「いやいや!」と首を横に振る。


「……部長は仕事人間だし、月曜日になったらただの上司と部下に戻っておしまい」


身を焦がすような快楽の時間は一晩限定の魔法で、部長は要らなくなった物をたまたま誕生日だった私に押しつけただけ。


彼が私を好きなんてあり得ないし、もう個人的に関わる事はない。


(この箱を返したら、また他人に戻ろう)


私は自分にそう言い聞かせ、シャワーを浴びる事にした。


それでなければ頭の中が部長で一杯になり、「また抱いてほしい」と願ってしまいそうだったから。




**

部長と私の秘め事

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コメント

3

ユーザー

複雑な心境になってる朱里ちゃん🤭 身体の相性は最高、甘~い 最高の夜を過ごし そのうえプレゼントまで....🎁💎✨ そりゃあ好きになっちゃうよね~😍💕💕 週明けに 尊さんが どんな態度で接してくるのか、すごく楽しみです🎶

ユーザー

アカリンの頭の中がパニックになっててカワイイ💠週明けのミコティの態度が楽しみ〜♡アカリンにしかわからない表情しちゃったりして🤭

ユーザー

フフフ🤭新たに朱里ちゃんの脳内を見れて めっちゃ嬉しいです( ≖ᴗ≖​)ニヤッ

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