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恵
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#連載小説
観察者
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星キラリ

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また次の日。
中庭の中央に、奇妙なオブジェの台座が置かれていた。
そこに半裸で縛られていたのは、宮本遥だった。黒髪のポニーテール。真面目で努力家、成績上位のクラスメイト。超能力は持たない。白いブレザーは肩から滑り落ち、ブラウスは胸元まで大きくはだけ、スカートは腿の途中まで捲れ上がっている。赤い薔薇の蔦が手首・足首・胴を締め、棘が白い肌に浅い赤い線を描いていた。
そして、無数の蝶。
秋なのに、色とりどりの蝶が遥の肌に群がり、汗を口吻で吸っている。鎖骨のくぼみ、脇の下、胸の谷間、太腿の内側——感じやすい場所に止まるたびに、遥の肩が小さく跳ねた。甘い花の香りと、蝶の羽音。快楽と恐怖が同時に押し寄せ、遥の目尻に涙が浮かぶ。蝶たちがさらに集まってくる。
登校してきた生徒たちが、足を止めた。
ざわめきが波のように広がる。遥は顔を真っ赤にし、俯いて唇を噛んだ。見られる恥ずかしさと、まだ残る甘い感覚に、肩を震わせている。
「遥さん!」
姫神姫は走った。蔦を引き剥がし、蝶を払い、縄を解く。遥の体を支え、芝生に降ろす。遥は姫の胸に顔を埋め、小さく嗚咽した。
姫は首を横に振り、遥の背中をさすった。詩織、結衣、そして遥。三日連続で、無能力の美少女が「飾らて」いる。悔しくて、歯を食いしばった。加賀美にはまだ繋がらない。自分の能力消去も、この香りと蝶の前では後手に回っている。
そのとき、カバンの中でスマホが振動した。
画面に表示された名前は「プロフェッサーM」。トレンチコートの銀髪美少女。以前、下校中に突然現れて全裸を見せつけ、両親の研究の話をしたあの人物だ。姫は深呼吸して、通話ボタンを押した。
「……もしもし、でごぜぇやす」
「おはよう、姫神さん。今回の薔薇事件、どうでshow? 推理はもうできましたか?」
いつもの、軽く混じった日本語。背景に風の音がして、屋外にいるらしい。
「はい……少し、考えました」
姫は中庭を見渡しながら、言葉を選んだ。超能力ではない、現実的な線で話す。
「犯人は、学院の園芸部か美術部の関係者だと思います。薔薇は温室で育てられるし、砂糖や蝶も、生物部の標本や実験用に入手可能です。香りの成分に軽い睡眠導入剤を混ぜて、意識を飛ばしてから台座に運んでいる。公開されるタイミングは登校時間に合わせているので、学院の時間割を知っている内部の人間です。動機は……芸術的な快楽、あるいは誰かを落とすための見せしめ、でごぜぇやす」
短い沈黙。
プロフェッサーMの声が、笑っているように聞こえた。
「零点。いえ、マイナス十点でshow」
「……え」
「甘い香りは睡眠導入剤ではない。蝶は標本室から逃げたものでもない。内部犯という線も、甘い。あなたは『能力を使わない前提』で考えすぎている。もっと視野を広げなさい。薔薇が『咲く』場所と、『誰の身体から』出ているかを疑った? 台座の材質は? 砂糖の粒度は? 蝶の種類は季節外れでshow」
辛口だった。一つひとつを指摘されるたびに、姫の耳が熱くなる。
「あなたのお母上なら、もっと鋭い仮説を立てたでshowに。残念」
「……ごめんなさい、でごぜぇやす」
「落ち込まなくていい。次は百点を目指しなさい。ヒントは出さない。自分の鼻と目を信じなさい。では」
一方的に切れた。
姫はスマホを握ったまま、中庭の台座を見つめた。遥は保健室へ運ばれ、残った薔薇の花弁だけが、朝の風に揺れている。自分の推理は、完全に外れていた。能力を使わない前提で考えたつもりが、かえって視野を狭くしていたのかもしれない。
悔しい。
でも、止められない。次の犠牲者を出すわけにはいかない。姫はカバンを握りしめ、校舎の中へ足を向けた。プロフェッサーMの辛口採点が、胸の奥に重く残っている。
続く。
コメント
3件
うわあああ第81話読んだけど今回もエグい…!!😭💦 遥ちゃんが薔薇に囲まれて蝶に止まられてる描写めっちゃ生々しくてドキドキしたし、失禁しちゃうとこも含めて「見せられる恥ずかしさ」が痛いほど伝わってきた…。姫神さんの推理がプロフェッサーMに「零点、マイナス十点」ってバッサリ斬られちゃうの辛いけど、そこから「自分の鼻と目を信じろ」って謎かけされるとこ熱すぎる!次の被害者出さないでほしいな…続き気になりすぎて眠れないかも〜🌸✨