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萩原なちち
「……愛してる」
「ふぇぇ?!」
情けない声が返ってきた。
さっきまでグズグズと鼻を鳴らして泣いていたくせに。
驚きすぎたのか、涙も鼻水も一瞬で引っ込んで、りゅうせいの顔は真っ白になっている。
「なんで……っ?!」
「なんでって、そう思っちゃったんだから仕方ないだろ」
ふふっと照れ隠しに笑って、頭を拭いていたタオルで顔を覆い隠す。
こんなセリフ、一生口にすることなんてないと思ってた。
いざ言ってみると、心臓がうるさくて、小恥ずかしくて死にそうだ。
「……俺も。俺も愛してるよ、いつきくんのこと」
タオルの隙間をこじ開けるようにして、りゅうせいが俺の目を覗き込んできた。
なんなんだよ、その顔。
嬉しすぎて、顔じゅうくしゃくしゃにして笑いやがって。
「……だいきもさ、こんな気持ちだったのかな?」
「んん? なんで今だいきくんの話ぃ?!」
少し唇を尖らせるりゅうせいを連れて、二人でベッドへと歩いていく。
背後から彼を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
面と向かって言うには、この先はあまりに照れくさすぎるから。
「……俺と、結婚しませんか?」
「うわぁ、……心臓爆発しそう」
背中でクスクスと笑う気配。
りゅうせいはくるりと俺の方を向くと、真っ直ぐに視線を合わせてきた。
こういう時、いつも男気があるのは年下のりゅうせいの方なんだよな。
「俺、一度失敗してるし。先の保証なんてできないけど……。でも、これからもずっとりゅうせいと居るんだろうなって、一緒にいたいなって、本気で思ったんだ。二度目の俺が、軽々しく口にしていい言葉じゃないのは分かってる。りゅうせいのこれからだってあるし……」
「いつきくん? しー、して」
ちゅっと、優しいキスが言葉を遮る。
いつも大事なところで、俺はこの「部下」に救われている気がする。
これじゃ、どっちが年上で上司なんだか分かりゃしない。
「……今は、俺たちが一番幸せな形を選ぼうよ。だから、結婚。悪くないと思うよ?」
「……りゅうせいは、幸せ?」
「うん。いつきくんと一緒にいる時が、世界で一番幸せ」
「……おそろいだねぇ」
「……っ、恥ずかしいから真似しないでぇ!」
真っ赤になったりゅうせいに、そのままの勢いでベッドに押し倒された。
見た目によらず、凄まじい「ゴリラパワー」だ。
「今日は、俺がご奉仕するって決めてるから。いつきくんはじっとしてて」
「……はい」
逃げ場を塞ぐように、熱い吐息が首筋に降ってくる。
あちこちを執拗に舐め上げられて、脳がとろけそうに熱くなる。
どうやら今夜は、指先ひとつ触らせてもらえそうにない。
全てを奪い尽くそうとする年下の恋人に、俺はただ、甘い降伏の溜息を漏らした。