テラーノベル
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#恋愛
#長編
ルティは耳元でごにょごにょ言う。ちょっと擽ったい。
「番う……ことです。それも……半年ほど」
(番う?)
その言葉の意味に気づくまで数秒ほどかかった。そして気付いた瞬間、顔から火が噴き出しそうなほど恥ずかしくなる。
(あ、あ、あれって、そういう意味が!?)
なぜ半年間も夜の時間だけは取られていたのか。ある種、トラウマでもある出来事の理由を知って、感情がぐちゃぐちゃになる。魔力炉を作るために、あの夜の時間を設けていたのだとすると、あれは道具や魔力消費のために私を使っていたのではなく──私を本当の伴侶にするため、作り替えていたということになる。
そしてその魔力炉によって人族の寿命は延びるという。それは生贄、道具として長く使い続けるためではなく、ずっと一緒に居たいから。共に生きるために必要な器官の形成の時間だった。
(──って、そんなこと聞いてない。ううん、あえて私に説明しなかったんだわ、あの幼馴染。それとも魔力炉の本来の目的あるいは、意味を理解していなかった?)
「ほら、人族って短命でしょ♪ だから《片翼》になる人族は、若さと寿命を与えるための処置でもあるの。……私たち先天的な《高魔力保持者》は、種族の中でも危うい存在で、いつも何かが欠けて息苦しかった。《高魔力保持者》のほがいつだって、《片翼》を求めて、大事にしたいって思っていたもの。だからダーリンを見つけた瞬間、息がすごく楽になって、祝福の鐘がなったのよ!」
「「「鐘?」」」
私とカシミロ殿下、エリオット様の声が重なった。
「あの音色は素晴らしいものでした」
「ふむふむ。四大種族だけが《片翼》を判定できる……神々の恩恵なのかも? 擬似魔力炉と魔力回線に不具合、魔力回線への負荷が高いだけではなく、できたての耐久度及び許容量の問題か……」
カシミロ殿下は嬉々としながら夢中でメモを取っていた。この方は関係ないのに一番理解してそうだ。本当に王子なのだろうか。研究者のほうがしっくりくる。
「……ということは、なんの説明も詳細も分からずに、国で囲って、求愛アピールも、《片翼》としての基礎知識も……付与されない状態で……あんなことやこんなことを……してしまった……と?」
ルティはルティで一人の世界に入っていた。しかもまた落ち込んでいる。でもブリジットに対して好いていたら、この事実はけっこう堪えるはず。私も聞いて衝撃すぎて、自分の感情が上手く整理できなくなっている。
ヴィクトルは朝早く、夜遅くまで政務をしていたし、遠征や視察、パーティーなど社交の場にも出ていた。半年ほど一緒に暮らしていたけれど、私がパーティーに参加することはなかったし、《片翼》であると向こうが一方的に決めつけたくせに、妻として認めない扱わないことが悲しかったし、辛かったし、あの幼馴染みやその周囲は常に私が「道具であり生贄だ」と罵っていたのもある。
でもそもそもの前提が違っていたら、悲劇としか言いようがない。《片翼》としてそこにあるだけで幸福で、お互いに好き合っている、《片翼》の知識も相手と出会った瞬間に思い出すというのが大前提だったのだから。
すれ違うのは当然だろう。
言葉にしなくてもわかる四大種族と、言葉や態度にしないと伝わらない人族。
(神々はどうして、そんな回りくどいことをしたのかしら? 相互理解をするためにわざと?)
そもそも種族が違うので、人族側も伝承を鵜呑みにして「そういうものなのかも?」と受け取ってしまったのも悪かった。お互いに会話や一緒の時間を積み重ねていけば、回避できたかもしれない。ただ《片翼》を得た時の喜びはひとしおで、テンションMAXのヒャッホイ&脳内お花畑状態とか。
「……だからあの時……それに人族と私たちでは時間の流れも……半年など瞬きの一瞬……しかし……」
「ルティ、戻って来てください」
「シズク……」
「今なら膝の上に乗りますよ? 抱き枕のチャンスです。それとも後で膝枕ですか?」
「両方がいいです。……そして寝る時は添い寝もしていただけますか?」
「全取りですか。ルティは欲張りですね」
よいしょっとルティの膝の上に乗る。このさい恥ずかしさとかは気にしたら負けだわ。ルティは「ふう」と、吐息を漏らす。やっぱり体が随分と冷えてしまっているわ。
「こんなに冷たくなっていたら、風邪を引いてしまうでしょう。毛布をこうして……」
膝掛けにしていた毛布をルティの両肩に掛けた。うん、これでミルクティーを飲めば大丈夫ね。
「……シズクの匂いがします」
「犯罪臭がするのでやめましょう。それとこの香りは洗剤の匂いです」
他愛のない話をしていたつもりだったはずなのに、カシミロ殿下を含め全員が信じられない、といった顔をしていた。
「改めてお二人のやりとりを見ていると、衝撃的だな。森の大賢者……いや天狐人に対等に話しているのだから」
「(前世の記憶持ちだからとは言えない)まあ、私は異世界人なので、その辺りの先入観がないのだと思います」
「それもあるけど、そこの人族の娘は前世から《片翼》なのだから、このぐらいの結びつきは普通じゃないの?」
「「!?」」
誰もそのことに触れなかったのに、ジーナ王女はあっさりと踏み込んできた。ルティも私も先延ばしにしていたデリケートな部分だったのに。
「お前には関係ない」
「えー!? 《片翼》仲間だし教えてくれたっていいじゃない。ねー、ダーリン」
「……自分に振らないでくれ。そしてジーナ王女、今の発言は軽率すぎるぞ。そんなことを繰り返していたら痛い目をみることなる……」
「私の心配をしてくれるの? ダーリン、優しい♪」
呑気なジーナ王女は気づいていないのか、それとも敢えてなのかルティを煽る。
「だって気になって、気になってしょうがないもの! 片翼殺しの天狐人って貴方でしょう? だとしたら、隣の彼女は一度、《片翼》に殺され──」
「ルティは、ヴィクトルは、私を殺していません!」
あ。
言い切ったと同時に、激しく後悔した。
そう告げるということは、私が前世の記憶を持っていると自白しているようなものだ。でも、その言葉だけは違うと言わないと、他の誰でもない私が言わなければ本当になってしまう。
「シズク……」
「(ここまで言った以上、向き合わないと……っ)ルティ、お話があります。二人でお話ししましょう! 皆様は今後の話を進めてください。食事も各々摂って貰って大丈夫ですから!」
強引に話をまとめて、私はルティの腕を掴んで二階に駆け上がった。落ち着いて話すためにも、自分の部屋がいいと思い部屋に入った──が、ここで致命的なミスを犯す。
私の部屋は一人部屋で、ソファが一つしか無いのだ。
コメント
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あさぎかなさん第35話読みました…!いやもう今回ほんと無理😭💕「番う」の意味がそういうことだったなんて…シズクが「♡♡♡ていない」って叫んだシーン、胸がギュッてなったよ…あそこで言い切れたの、シズクの強さだと思う✨ そしてルティとの会話の温度差に笑いつつ、最後のソファ1つに「あっ」てなったwww これは二人きりの展開が気になりすぎる…!!