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「」灕於
『』龍平
廊下で話すようになってから、少し時間時が経った。
〈おはよう〉とか〈またね〉とか、短い会話が増えただけなのに、
学校に来るのが前より楽しみになっていた。
ある日の昼休み。
教室でイヤホンを両耳につけて音楽を聴いていると、机の横に影が落ちた。
『何聴いてんの?』
顔を上げると、そこには龍平くんがいた。
驚いてイヤホンを外そうとすると、
『そのままでいいよ』
そう言って、彼が少し身をかがめる。
『…ちょっと貸して』
片耳のイヤホンをそっと取られて、
片耳のイヤホンを自分(龍平)の耳に入れた。
距離が近い。
近すぎて、何を聴いていた曲なのかすら分からなくなる。
数秒後、彼が小さく笑った。
『これ、好きなの?』
「う、うん」
『俺も最近めっちゃ聴いてる』
その一言で、心臓が跳ねる。
同じ曲。
同じタイミング。
それだけなのに、急に世界が近くなった気がした。
『音楽ってさ、不思議だよね』
彼は窓の外を見ながら言う。
『知らない人同士でも、同じ曲好きってだけで仲良くなれる』
そう言って、イヤホンを返してくる。
指が少し触れて、胸がギュっとなる。
『今度さ、おすすめ交換しよう』
「おすすめ?」
『うん。お互いの好き教え合う。絶対に面白いじゃん』
自然すぎる誘いに、思わず頷いていた。
その日から。
朝、〈これ聴いた?〉って話時間ができて、
放課後、音楽の話で笑うことが増えて、
気付けば名前を呼び合うのも当たり前になっていた。
ある日の帰り道。
夕焼けの中彼がぽつりと言った。
『最初さ、廊下でぶつかったでしょ?』
「うん」
『あれ、ちょっとラッキーだったかも』
「え?」
少し照れた顔で笑う。
『だって、おんなじ音楽が好きな人に出会えたし』
その言葉に、胸の奥が静かに熱くなる。
イヤホンから流れるおんなじメロディ。
気付けば――
二人の距離は、音楽みたいに自然に重なっていった。