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コメント
1件
続き楽しみすぎる!😖💗
まぶたの裏に、淡い光が滲んでいた。 朝――そう思ったが、どこか違和感がある。 俺は布団の中で丸くなったまま、起きる気配すら見せなかった。面倒くさい。眠い。甘いものが食べたい。そんな欲求だけが、ぼんやりと頭の中を漂っている。
そのときだった。
――あなたはこの小説に参加しました。
声が、脳の奥底に直接落ちてきた。 夢の残りかと思ったが、あまりに鮮明すぎる。
「……は? 俺、まだ寝たいんだけど」
寝起きの声は低く、感情はほとんど動かない。 だが、声は容赦なく続いた。
――参加者登録を確認しました。
枕元に、見覚えのないカードが一枚落ちていた。 白い厚紙に、黒い文字が静かに刻まれている。
《参加者:あなた》
「マジで意味わかんねぇ……甘いもん食ってから考えたいわ」
ぼそりと呟いた瞬間、空気が震えた。 光がねじれ、視界が白に塗りつぶされる。
次に目を開けたとき、俺は知らない場所に立っていた。
石畳の広場。 古びた街灯が並び、中央には巨大な時計塔がそびえている。 風は冷たく、どこか遠い国の匂いがした。
「……どこだよここ。悪夢じゃないよな」
そんな独り言を漏らしたとき――
「おーい! そこの人! 起きてる? いえ〜い!」
弾むような声が響いた。 振り向くと、ピンク色の髪を揺らしながら、少女がこちらへ駆けてくる。
霧源サクラ。
カードに記されていた名前の人物だ。
「俺、霧源サクラ! ここ、ゴイスーばいやーじゃない?」
サクラは笑顔で手を振り、近づくほどにテンションの高さが伝わってくる。 その勢いに、俺の眠気は強制的に吹き飛ばされた。
「……あのさ、ここ何? 俺、寝起きで脳内に変な声聞こえたんだけど」
「俺もだよ! なんか“参加しました”とか言われてさ。 でもさ、こういうのジーマー楽しいやつでしょ、絶対!」
「いや、絶対じゃねぇよ……」
サクラは俺の肩を軽く叩き、声を潜める。
「でもね、なんとなく分かるんだ。 俺たち、なんかのゲームに巻き込まれたんだよ。ばいやーなやつ」
その瞬間、時計塔の鐘が鳴り響いた。
ゴォォォン……ゴォォォン……
重く、深く、空気を震わせる音。 そして再び、脳内に声が落ちてきた。
――参加者の確認を完了しました。 これより“リアル人狼ゲーム”を開始します。
俺とサクラは、同時に息を呑んだ。
「……まじ?」
「まじまじ! ジーマー始まっちゃったね!」
広場の風が、二人の間をすり抜けていく。 逃げ場のない物語の幕が、静かに上がった。