翌朝_
「んにゃ…ふぁ〜、もう朝か」
やけに明るい外が視界に入り、まさかとスマホを見た。
「12時…!?」
流石に寝すぎでは…?と、自分にツッコミを入れたところで、今日が撮影だったことを思い出し慌ててdiscordを開く。
「よっす〜!!遅れちゃったッピ!笑笑笑」
俺がいつものようにふざける。だがなんの反応もなかった。
ミュートにはなっていない。だけど、誰も喋らない。
「あー、撮影…始める?」
やっと喋ったのはあすただった。
「……あー、やるか…」
不機嫌そうに口を開いたのはうただった。
そのとき、チッ、と誰かの舌打ちが聞こえた。
「謝れよ!!」
音割れと共にその場に響いたはるてぃーの怒声が合図、一気に空気がピリついた。
「そろもんくん…あー、もういいや…めんどくさい」
「じお、る…?」
じおるも、…?
俺の事か、俺の事を言っているのか。
俺は謝った。
「ご、ごめん…ちょっと調子乗り…」
「いや、それだけじゃないよな?」
言葉を遮ったのはうただった。
「お前昨日の夜…リスナーに手出しただろ?」
…一瞬、時間が止まったのかと思った。
「え、なんで、それを…」
「例の暴露系に晒されてるんだよ。ほら、あすた。こいつやっぱやってんぞ」
あすたは喋らなかった。
困っていたのだろう。
多分、昨日の事を誰かに見られて、それをあの暴露系に言って暴露された。
でも、あの場で逃げちゃったし、何もしてないとは言え、言い逃れできないな…。
あすたは、俺を責めなかった。
きっと、昨日の話があったからだろう。こうやって俺ばかり言われている事を意識して、あすただけはこの事を否定してくれていたのだろう。
「そろもん、お前さ…」
はるてぃーが痺れを切らしたようにゆっくり話し始める。
「よく、…よくそんなこと出来るよな!?解散のことがあったのに、…!山田の事があったのに…っ!!」
「…もう、取り返しつかねぇよ…」うたも、静かに言った。
訴えかけるような口調で話すはるてぃーは、少し震え声で俺にこう言った。
「信じた俺がバカだった…ッ」
はるてぃーは、いつだって俺らのことをよく見ていた。
困っていたら助けてくれた。
遅刻しても、ちょっとキツく感じることはあったけど全部笑って許してくれた。
俺の大きなミスを、ネタにして、馬鹿野郎!で終わってくれた。
前もそうだった。たくぱんや山田、クラウドファンディングや台本のリンクを貼ってしまった件…色々トラブルがあった。
だけど、それに対して冷静に、いつだってメンバー最優先に考えてくれる、世界一のリーダーだった。
そんなはるてぃーにとっても、ずっと活動してきた自分の居場所みたいなものが崩れ落ちる原因になった山田のトラブルは、はるてぃーにとって悪い意味で大きなものだったのだろう、と思う。
その時の辛さや負担や葛藤は、メンバーはもちろんだがリーダーであるはるてぃーは計り知れないほど大きいものだったのだろう。
そして新しくメンバーを入れて、また自分自身で一からメメントリを作った。
そこでまた、同じような事が起こった。
はるてぃーの気持ちにもなってみろよ。
俺、なんてことしちゃったんだろう。
せめて相談くらいはすれば良かった、と今更後悔するがもう遅い。
「もう、俺…俺……」
はるてぃーは、静かに言い放った。
「俺には、たまアリなんて…最初から無理だったんだな……」
その瞬間、改めて俺は思った。
俺、なんて事を__
「ごめん、ちょっと取り乱した…そろもんも、言いすぎた。ごめん」
「いや…っ」
この際でも俺の事を考えてくれてるのか、と思うと十数年ぶりに涙が溢れてきた。
「ごめん、また後で撮影しよ…俺今無理だわ」
そう言って、はるてぃーは通話から抜けた。
「違うんだよ、…聞いて…っ」
濡れ衣だ、という事を話しても
「お前、この際なのにまだ嘘ついてんの?」
「そろもん君、信じてたのに…」
信じてくれなかった。
リーダーがいないその場はどんよりとした空気に包まれ、消えてしまいたいと思った。
もう、終わりだ…__
「あーもう、はるてぃーがああなるってよっぽどだぞ…」
俺話してくるわ…と、うたが通話から抜ける。
「僕も、……ちょっと、外の空気吸ってきますね」
そうして、昨日と同じように俺とあすたは2人になった。
「あ、あすた…俺、違う…ホントに違うんだ、」
俺は、あすたに分かってもらおうと必死だった。
「…知ってるよ、」
…え、?
「信じてくれ、」
「信じるとかじゃなくて、…見たんだ…一部始終。」
コメント
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前の話を見てるからこそ辛い😭 あすたくんいなかったら私もうしんでるかも でもありそうな話でとてつもなくリアルだ…