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アリスはチェスの駒となってチェスのゲームに参加することになるのだが、ルールは単純だった。まず一対一の一手で相手側のマス目に自分の駒を置くことで陣地を増やしていき、最終的に相手のキングを取るというものだ。ただ一つだけ他のゲームと異なる点があった。それは駒同士の戦闘である。相手がどこにいるのか分からなくても攻撃できるという点だけが唯一違っているところだ。また戦闘と言っても直接相手にダメージを与えられるわけではない。あくまで相手の駒を自陣に引き寄せるか、あるいは相手の駒を破壊することができるだけだ。しかし破壊するとそれだけ相手の戦力が減るため、結果的にこちら側が有利になるのだ。もちろんこちら側も敵の位置を知ることはできない。だからお互いがお互いに気づかないうちに接近し、不意打ちを食らわせるしかないわけだ。
さっそくアリスはこの世界に紛れ込んだばかりの頃に出会ったウサギを追いかけるが、途中で他の駒に襲われているのを見つけ、助けに入る。その戦いの中でアリスは自分の駒が破壊されていく様を見て自分が人間であることを思い出した。そこで彼女はこのゲームのルールに従って自分以外の全ての駒を倒すことを決意する(第2章 白の女王の城にて)。白の女王はアリスの言葉を聞いて驚くものの、彼女の決意を尊重する形で協力を約束してくれた。
それから数日の間、アリスたちは森の中で他の駒と戦い続けた。ある者は火を放ち、ある者は剣を振るい、ある者は何もせずに逃げた。そんな日々が続いたある日、アリスたちの目の前に現れたのは一組の男女だった。男は帽子屋と名乗り、女は三月兎と名乗った。彼らはアリスたちを「お茶会」へと誘い、それに応じたアリスたちとともに彼らの屋敷へと向かうことになった。道中、アリスたちは白ウサギと出会うが、彼女はひどく狼乱していて、すぐにどこかへ行ってしまった。やがて到着した屋敷の中で待っていたものは、テーブルの上に並べられた数々のお菓子とティーセットであった。席についた一同に対して紅茶を入れた後、「お茶会」の主催である帽子屋の合図により一斉に菓子を食べ始めた。
しかし、しばらくすると奇妙な出来事が起こった。まず最初に食べたマカロンの味についてそれぞれが感想を言い合ったのだが、その中でアリスだけはそれがどんな味なのか思い出せなかったのだ。その後クッキーを食べると今度は歯ごたえがあると言い出した。次にケーキを口にした時も同じように言い出し、ついにはアップルパイの時に至ってはそれすらも分からなくなってしまった。そしてついに自分が今何を口に運んでいるのかさえも忘れてしまう始末だった。
一方、現実の方でもおかしなことが起こっていた。時計を持った白ウサギが現れないのだ。いつもなら決まった時間にやって来るはずなのに、この日はいくら待ってもやって来なかった。不思議の国の住人たちは白ウサギがいなければお茶会を始められないため困っていたが、そこへチェシャ猫が現れる。どうせまた遅刻してくるだろうと皆思っていたところへやってきたのだから、さぞかし驚いたに違いない。だが当の本人はそんなことはお構いなしといった様子で平然と席に着くと、紅茶を一口飲んでこう言った。「ああ、おいしいね」
こうしてどうにかお茶会は始まるものの、始まってすぐに皆が気付いたことがある。なんと、テーブルの上に並んでいるお菓子の種類が減っていたのだ! それに気付いた赤の女王はすぐに犯人探しを始めたが、白の王と黒の騎士が協力して白の女王を騙したことを突き止めると、赤の女王の怒りが爆発して大乱闘が始まる。しかし、その時にふっと現れたチェシャ猫の一言により事態は急変した。チェシャ猫によれば、今回の事件を引き起こしたのは白の女王だということだったのだ。白の女王は自分の身を守るために嘘をついていたが、それが逆に彼女を窮地へと追い込んでいたというわけである。一方、白の女王に騙されて怒った赤の女王は、自分が負けるまで戦い続けると宣言し、赤の女王は黒の騎士と戦うことになるのだが……!?
(以上、本書より抜粋)