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そのときは、子供時代を懐かしんでいるだけだと思っていたが、後になってみればそれとは違っていた。
自分の中に残った、満たされない子供に、当時欲しかったものを買い与える。
そうすることで、真が消えた穴も埋まると信じているように。
今日手に入れたころんと軽いアクセサリーを握りしめ、テレビ台として使っているチェストへと移動する。
下の引き出しを引くと、そこは雪緒のコレクションスペースだった。
これまでに買ったアクセサリーや、無駄な装飾の付いた文房具、とても外では使えないフリルのついたハンカチ、何の用途も見いだせないミニチュアの家具――。
引き出しにぴったりサイズが合う透明なアクリルケースを探し出し、買いそろえて、そこに一定のルールに従って並べている。
覗き込むと、お気に入りのアイテム達が雪緒の心を癒してくれる。
うきうきと、手に持ったアクセサリーの適切な置き場所を検討し、そこにそっと配置する。コレクションの仲間入りをして、「自分の所有になった」感が強くなる。
気が済むまで引き出しの中を眺め倒し、満足したらぱたんと引き出しを閉める。
他人には見せられない姿だった。
外ではクール・サバサバ・口数が少ないで通っている「清水さん」としては。
別に、可愛らしいものを集めていたからといって誰に迷惑をかけるわけでもない。
コレクターとして堂々としていればいい。
――とは思いつつも、多分自分が公言することはないのだろうと思っていた。