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ジェンにとって、イェンは憧れで、自慢だった。

幼い日は、編み物も、料理も上手なイェンの双子であることがなにより誇らしくて嬉しかった。

優しくて、お姫様みたいなイェンが笑うたび、嬉しくて嬉しくて笑顔になった。


月日が経って、学校に通い始めると、イェンの素晴らしさは、嫉妬や羨望の的になり、大人しいイェンは心ないクラスメイトたちの餌食になり始めた。

ジェンは元々明るく、人懐っこい性格だったし、それを自覚していた。

ジェンは、イェン向かう敵意にまっすぐに突っ込んでいった。

イェンを除け者にしようとするクラスメイトたちと友達になり、イェンを双子だと紹介することで、敵意がイェンを捕らえられないようにした。

好きでもない友達がたくさんできたが、ジェンは気にしなかった。


イェンが楽しそうに笑っていた。


イェンがケイジに恋をしたのもすぐに気がついた。

ケイジの話をするとき、イェンは顔を真っ赤にして、小さな声がさらに小さくなって…。

ジェンはそんな照れたイェンが見たくて、わざとケイジの話をしたりもした。


それなのに、ジェンはケイジに告白された。

それも、イェンに間違われて。

ケイジの友達たちのいる前で。

ジェンは、ケイジの言葉に頷いた。

ケイジが間違えたと笑われて、口さがない噂にならないように。

ケイジのためではない。

イェンのために。

ケイジがイェンとジェンを間違えて告白したなんて噂になれば、イェンが傷つくと思ったから。


イェンに隠し事も嘘もつきたくなくて、ケイジと付き合うことになったと告げた。

イェンは、少し悲しそうな目をした後、満面の笑みで祝ってくれた。

少しして、ケイジを家に連れて行って、イェンと会わせた。

ケイジは、ジェンとイェンを間違えたことを認めなかった。

だから、ジェンは、わざとケイジに冷たくしたし、ジェンから離れるように仕向けた。

それなのに、ケイジは言った。


「最初は、確かにイェンに惹かれた。でも…君が良いんだ。」

まっすぐに見つめられ、ジェンは何も言えなくなった。

プロポーズを受けることで、イェンがケイジと話す機会は持てるから、イェンとケイジのつながりになれるかもしれないし、と自分を納得させて、ジェンは承諾した。


アンが話しかけて来たとき、正直、ジェンはまたか、と内心ため息をついた。

でも、アンがあまりにも必死だったから、ジェンはアンと話してみることにした。

イェンと勘違いしているとは言わなかった。

どんな人間かもわからない相手をイェンに会わせたくなかった。

アンと付き合ううち、アンの優しさを知り、ジェンはアンとイェンを会わせることにした。



イェンと会えば、アンはすぐにアンが天使と呼んだのは、イェンと気づくだろうと思った。

けれど、アンは気づかなかった。

いや、気づいていないふりをしているように見えた。


—なぜ?


イェンは、アンと過ごす時を、すごく楽しんだ 。

アンがイェンをまっすぐに見つめたから。

ジェンは、冷たい態度をとって、感じの悪い態度をとって、アンの気持ちがイェンに向かうよう願いながらアンとの時間を過ごした。

けれど、どんな態度をとっても、何をしても言っても、アンは、変わることなくジェンを見ていてくれた。

まっすぐ自分を見つめるアンの瞳に、ジェンは、 泣き出しそうだった。

—アン、あなたが見つけた天使はイェンよ。

何度そう口に出そうとしたことか。

けれど、言えなかった。

そんなことを言えば、アンを騙したことを告白しなければならない。

アンは許してくれるでしょうね。

でも…イェンは?

イェンは許してくれるはずない…。


結局、バレてしまったけれど。

だからといって、ケイジとアンという、イェンの大切な宝物を汚す必要はない。

「結局、ケイジもアンもあたしを選んだの!」

—違う。あたしが奪ったの。

「あんたは、にこにこお姫様みたいに笑って、家の中に引っ込んでればいいのよ!」

—違う。イェンには穏やかで楽しく過ごしてほしい。

アンと一緒に…。あたしと一緒に出かけましょうよ。


頭の左側に衝撃が走った。

激しく甲高い耳鳴りに支配され、視界がぼやける。

目の前が真っ暗になった。


—痛い。痛い。痛い。



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