テラーノベル
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4話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
レトルトはその場で立ち尽くしていた。
頭の中で今まで散らばっていた断片が動き出していた。
ばらばらだったものが 少しずつ、 少しずつ
繋がっていく。
まるで、点と点が一本の線になる様に。
五十年前の事件
写真
死神
輪廻転生
頭の中で、全部が繋がった。
「……俺……」
震える唇から、言葉が零れる。
「俺は……記事に載ってた時の… キヨくんに、殺されたんだ……」
息が止まりそうになる。
でも、思考は止まらなかった。
自分は殺されて死んだんだ。
そして生まれ変わった。
一度終わって、 また人として生きた。
法医学者としての人生。
そして今、生まれ変わって ここにいる。
けれど――
「……キヨくんは……」
その先を言うのが、怖かった。
「俺を殺したから……生まれ変われなかった。 罰として……死神になったんだ」
胸が苦しい。
苦しくて、痛くて。
そして、 さらに思い出す。
あの白い世界で聞いた 声。
「病死や事故死、自殺や他殺といった、生前悲しい思いをした記憶は消すことにしている。」
「……あ」
レトルトの瞳が大きく揺れた。
だからだ。
だから、自分は覚えていなかった。
キヨの事を一一
五十年前の人生を一一
自分の最期を一一
忘れたんじゃない。
消されていたんだ。
俺が悲しまないように消してくれたんだ。
レトルトの頬を一筋の涙が伝う。
「……キヨくん」
その名前を呼ぶ声は、ひどく震えていた。
全てが繋がった瞬間、一気に視界が揺れた。
図書館の白い光が、遠のく。
代わりに――別の景色が滲み出す。
古い町並み。
今とは違う服装。
ざわつく人混み。
冷たい視線。
そして、胸の奥を締め付けるような空気。
「……もういやだ!!」
誰かの声。
レトルトは息を詰めたまま、その“記憶”を見ていた。
「俺たちのことは誰も認めてくれない!もううんざりや!!」
苦しさと怒りが混ざったような荒い声が響く。
すると、すぐ隣から声が返る。
必死に、でも優しく。
「落ち着いてよ! 俺はお前と一緒ならどんな酷い扱いを受けても気にしない!」
その声に、胸が締めつけられる。
誰かに見られているような感覚にぞくりと背中が震えた。
冷たい目。
嘲笑。
拒絶。
逃げ場を塞がれる様な恐怖。
「どうして…… どうして、なんで……」
誰かの声が震える。
「ただ好きなだけなのに。 なんで、幸せになれないの。」
その瞬間、 レトルトは膝から崩れ落ちた。
「……っ」
息がうまくできない。
これは夢でも 想像でもない。
ずっと奥の奥に沈められていた、自分の“最初の記憶”。
キヨと出会い、恋をして、共に生きようと手を取り合っていた。
でも、その愛は世間には認められず
気持ち悪がられ、拒絶され、罵られ続けた日々の記憶。
「もう、死にたい。 生きてるのが辛いよ。 俺はアナタと幸せになりたいだけなのに。」
泣き叫ぶ声と、必死に宥める声が、狭い世界の中でぶつかり合っていた。
レトルトの脳内に壊れそうなほどの感情が
行き場を失って溢れてくる。
「お願い、もう終わらせて。」
苦しさの底から絞り出された、途切れそうな願い。
そして、そのあとに続いたのは――
驚くほど落ち着いた声だった。
「お前がそんな辛いなら、一緒に死のう。
俺もすぐ追いかけるから」
空気が止まる。
音が消える。
そして――
その記憶は、そこで終わった。
「俺が…..俺がキヨくんに頼んだんだ」
レトルトの声が震える。
「殺してって……」
記憶が、さらに鮮明になる。
泣き叫ぶ自分を優しく抱き寄せてくれたキヨ。
限界の中で、逃げ場を失っていた二人。
そして――あの選択。
「だから……キヨくんは……」
レトルトは唇を噛む。
「俺を殺して……自分も死んだんだ」
レトルトは床に崩れ落ちるように座り込んだ。
「俺を殺したせいで… キヨくんは……死神になった」
視界が滲む。
涙が止まらない。
そして、もう一つの真実が残酷に浮かび上がった。
一緒に天国へ行けなかった理由。
あの優しい世界に、キヨがいなかった理由。
「……人を殺すと……地獄に落ちるから……」
「じゃあ… キヨくんは……地獄に….」
レトルトの中で全てが崩れ落ちた。
全てを思い出したレトルトは、図書館の片隅で動けなくなった。
そして、何も考えられない時間が何日も続いた。
食べることも、眠ることも、どうでもよくなっていた。
ただ、涙だけが勝手に流れ続けた。
キヨは生まれ変われない。
もうキヨには会えない。
その事実だけが、何度も何度も胸を刺した。
自分のせいで。
あの時、自分が頼んだせいで。
その選択が、すべてを変えた。
キヨは人を殺した。
だから、死神になった。
だから、輪廻から外れた。
だから、今も地獄で――。
レトルトは泣き続けた。
泣いて、泣いて、泣き続けた。
どれだけ泣いただろう。
涙が枯れることはなく、感情だけが削られていくようだった。
そして、ふと 気が抜けたように顔を上げる。
窓の外。
そこには青空が広がっていた。
あまりにも綺麗で、 あまりにも静かな青空だった。
静まり返った部屋の中で、レトルトは止まらない涙を拭う事もせず青空を見つめていた。
そのとき、不意に脳裏へ“ある記述”が浮かび上がった。
どこかで読んだ古い書物。
『魂の禁忌に関する記録』
自ら命を断つ行為は、魂の輪廻において最も重き禁忌とされる。
この行為を為した者は、その時点で魂の循環から外れ、正常な転生の権利を失う。
また、救済の対象からも外されるため、いかなる祈りや導きも届かない領域へと堕ちる。
その行き先は「地獄」と呼ばれ、
時間の概念が存在しない苦痛の循環領域であり、
罪と後悔が永遠に再生され続ける空間である。
そこでは“終わり”が存在せず、
赦しも忘却も与えられない。
魂はただ、自らの選択の結果と向き合い続ける。
そこまで思い出した瞬間、レトルトの指先がわずかに
「……死ねば..キヨくんの元へ..行ける.」
また涙が溢れ出す。
終わりのない場所。
救いのない場所。
それでも、そこにはキヨがいる。
「キヨくん….今から逢いにいくからね」
静かな声が青空へと消えていった。
気付けば、レトルトは電車のホームに立っていた。
黄色い線の内側。
電車の音が遠くで響く。
レトルトは一歩、線路の方へ足を寄せる。
「キヨくん……」
小さく呟く声は、もう祈りに近かった。
ただ会いたい。 それだけだった。
そして、線路側へ身体がゆっくりと傾いていく。
遠くから電車の汽笛が鋭く鳴り響く。
時間が引き伸ばされるように、すべてが遠のいていく。
(キヨくん、 今から行くからね)
レトルトは静かに目を閉じ力を抜いた。
その瞬間だった。
『何やってんだよ!』
鋭い声と同時に、腕を強く引かれる。
世界が一気に反転した。
視界がぐるりと回り、ホームへと引き戻される。
強い衝撃にレトルトの呼吸が戻る。
「っ……!」
レトルトはその場に崩れた呆然と目の前を通過する電車を見ていた。
『……ふざけんなよ!!!!』
怒鳴り声がレトルトを現実へと引き戻した。
「離してよ!俺は……俺は……!」
レトルトは大声で叫んだ。
涙でぐちゃぐちゃになった視界のまま、それでも声だけは必死だった。
「キヨくんに逢いにいく!!!
俺が死ななきゃ逢えないんだよ!!」
次の瞬間――
ぐっと、強く抱きしめられた。
逃げられないほど、でも壊さないような力で。
「……っ」
レトルトの身体が固まる。
『もう絶対死なせない』
レトルトの耳元で低くて震えた声がした。
『レトさんは俺と一緒に生きていくんだよ!』
その言葉にレトルトの胸の奥が大きく揺れる。
その声を、忘れるはずがなかった。
夢でも幻でもいいから、もう一度名前を呼んでほしいと願い続けた声。
レトルトはゆっくりと顔を上げる。
涙で視界が滲んでいるのに、それでも“そこにいる”と分かってしまう。
「き……よ……くん……?」
震える声が、ようやく形になる。
目の前の人は、少しだけ息を整えて笑った。
あの頃の様に少し雑で、でもまっすぐな声で、
『遅くなってごめんな!レトさん!』
レトルトの中で何かが決壊する。
理屈も、記憶も、地獄も天国も全部どうでもよくなっていく。
ただ一つだけ確かなものが、目の前にあった。
「……っ」
言葉にならないまま、レトルトはその胸に飛び込んだ。
崩れるように、縋るように。
「キヨくん…キヨくん….キヨくん….」
何度も呼ぶ声は、泣き声に溶けていく。
そのまま、強く抱きしめ返される。
『もう離さない』
その一言は、ホームの騒音の中でもはっきりとレトルトへ届いた。
その光景を、遥か高みから見下ろす二つの光があった。
ひとつは、柔らかく揺れる白い輝き。
もうひとつは、静かに沈むような深い闇を帯びた光。
白は、どこか満足げに微笑むように揺れた。
「なぁ、閻魔よ。こんなハッピーエンドもたまにはいいと思わない?」
闇の光が、低く冷たい声で返す。
「阿弥陀如来……お前は甘いんだよ」
間を置いて、淡々と続く。
「あんなやつ、針地獄の刑でよかったんだ」
白い光は、くすりと笑ったように揺れた。
「罰だけで終わるなら、それは“終わり”だろう? だがあの二つの魂は、終わりの中でもう一度、始まりを選んだ。
見守ってやろうじゃないか」
閻魔はしばらく沈黙し、やがて小さく鼻を鳴らした。
地上では、ふたりが抱き合っている。
何度壊れても、何度離されても、また同じ場所に辿り着くように一一一。
続く
コメント
4件

もう無理だまた涙腺がしんだ😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭 レトさ゛ぁ゛んッ!!!!!!よかったね!!!!!!!!! キヨぉ……帰ってきたんな……🥲︎🥲︎🥲︎🥲︎🥲︎🥲︎🥲︎ よかったほんとによかった これで安心して授業受けられます

そうですね😊!

今世では必ず幸せになってほしいですねぇ、、