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レイルに深夜呼ばれ数日後。

前世があることをカミングアウトした訳だが、ギクシャクすることなく、むしろ更なる良好な関係を築けた。

心配だったアリスの現状は平和的だ。アレイシアの……ソブール公爵家の庇護下にあると公言しているので誰も手出しせず静観している。

講義や昼食も二人で行動していることが多く、アレイシアも嬉しそうにしているのが見てとれた。

結果的によかったのだろう。キツい言動をしてもアリスは気にするそぶりなく接する。

同性ならではの距離感に物理的にアレイシアの人見知りを破っている。

僕も物理的に壁をぶっ壊す手段取ればよかったなぁ。

まぁ、同性だからできるのか、わからないが。

5年間の年月かけてやってきたことが正しいと考えるようにしよう、うん。

そんな充実している学園生活、僕が一番の楽しみにしていることは午前の講義を終えた後の間休憩、昼食時間だ。

実家ユベール伯爵家の料理も絶品だが、もしかしたらそれ以上かもしれない。

一品一品料理人の手作り、出来立てを食べられる。

その日その日のコース料理が決まっていてAからCコースを選択できる。

しかも無料。全て王国が持ってくれている。

ただ、一つ気になることは料理の名前が長いことかな。

一品例を出すと、「熟成サーモンと貝柱のムース、キャベツ包み蒸し」

他にも〇〇を添えてとか、〇〇風の〜とかそんな料理の名前が多い。

最近では名前を気にせずにいる。上手いものは上手い。それだけだ。

ただ、礼儀作法は伯爵家嫡男として守るべきものがある。

アレイシアがいつも言っている貴族としてのメンツというやつなのだろう。

男爵や子爵の下位貴族の子供なんて緊張しすぎで食べるので精一杯の様子。

一応エルス学園は身分が統一されているとはいえ、上位貴族の視線があると、緊張するのだろうな。

こう言ってはなんだが、アレイシアの周りに座った人なんて少し可哀想そうだ。

アレイシアも気にしてなきゃいいけど。

「気になるのか?見過ぎだろ?」

アレイシアを心配そうに眺めているとギルメッシュに声をかけられた。

「婚約者が心配なんだよ。特に今は周りからの視線が最も集中しているからね」

「過保護かよ。それで、アレンから見てあの二人はどうなんだ?」

「質問の意図が……良好かどうかかい?」

「そんな感じだ」

僕とギルメッシュはアレイシアたちに視線を向ける。

ギルメッシュも心配しているのだろうな。

アレイシアとは友人関係だし、レイルから忠告を受けていたアリスというイレギュラー。

「大丈夫と思うよ……多分」

「歯切りが悪いなぁ……」

「アレンさんの反応……仕方ないのではありませんか?……公爵令嬢と平民が友人関係は異例ですし」

「見方によってはアレイシア嬢が平民をいじめてるように見えるかもな」

ギルメッシュ、クルーガー、レイルがそれぞれ発言する。

ただ一人的外れな発言をしているレイル、だがギルメッシュとクルーガーというと。

「んなわけねぇだろ?」

「レイルさんが的外れな冗談とは珍しい」

「たまにはな」

レイルは少し変わったか?……たまにこんな冗談を言うようになった。ネタは僕の話した乙女ゲームの内容だが。

良い方面に進んでいるようなら良い。

「それはそうと、アレイシア嬢とアリスの件だったな。……アレンどうなんだあれは?」

話を戻すレイルは視線でどうなんだと訴えてくる。

今はアレイシアはアリスと食事を、少し離れた位置で俺はレイルたち3人と食事をしている。

「良好みたいだよ?」

「なんで疑問系なんだよ」

いや、そう言われても。

ギルメッシュの突っ込みに苦笑いするもアレイシアたちに視線を向ける。二人の会話を聞く限り仲が良いと思う。

二人の関係性は相性は良いのだろうな。

『私、こんな高級料理毎日食べれて幸せっす。貴族様は生まれた時から食べてるんすね』

『……下品ですわよ。お食事中に話すなとは言いませんが、口にものが入った時に話すなんて……また姿勢が崩れておりますわ……音の立てすぎですもっと静かに……タレでお皿が汚れすぎです。もう少し綺麗にできませんの?』

『面倒すね。テーブルマナーなんてしたことないですし。アレイシア様厳しいっす』

『アリスさんは由緒正しきエルス学園の生徒……品がないと思われてはいけません。このままでは品がないと思われますよ?』

ふと、耳を傾ければ聞こえてくる会話内容。

アレイシアの話し方から素を出せていると思う。

少々棘のある言い方だが、訳すとアレイシアはアリスを心配しているからこのような話し方をしている。

アリスは学園卒業したら国の中枢を担う立場になるだろう。

レイルやアレイシア……辺境伯のギルメッシュ。

これだけ高位貴族の家柄の人と関わりが合う。

アレイシアの友人という立場がある。

だから今後のことを想定してアレイシアはどこに出ても恥ずかしくないようにしている。

一応アリスには事前にアレイシアの表面上の言葉ではなく、意図があるのだと伝えている。

『あはは!手厳しいっすね。では今度作法の指導お願いできないっすか?』

『え?!……ええ。よろしくてよ』

アリスは清水……なのだろう。

アレイシアの激流を華麗に受け流し、開いた川のわずかな隙間に入り込む。

心配はないと思う。

この二人は相性が良い。

だが、この短期間であんなに仲良くなれるとは……。

アレイシアに友人ができて内心喜ぶも、嫉妬してしまう自分がいた。

そんな一幕があったが、昼食を終え、レイルたちと教室へ午後の講義へ向かっていた。

アリスとアレイシアは一足早く教室を出て行った。普段ならば僕はアレイシアを女子寮へエスコートするのだが、今日は断られた。

あはは、がっかり。

今日はレイルたち3人と寮へ向かっている。

「いやぁ、今日も美味かったなぁ。また明日になんねぇかなぁ」

「いつも同じことしか言いませんね」

「うまい以外思いつかないんだよ。腹に入れば全て同じなんだしよ」

「それは貴族としてはどうかと思うぞ?」

ギルメッシュは両手を頭に回し明日の昼食を思い浮かべている。

呆れているレイルとクルーガーだったが、特に咎めることなく自然と口角がわずかに上がる。

「実際僕もギルメッシュと同じだよ。学園生活の一番の楽しみだからね」

「アレイシア嬢より飯が大切なのかよ」

なんでそんな話になるんだよ。

アレイシアに決まってるだろ?

「ついにアレンも浮気か?」

「いけませんよ」

「僕はアレイシア一筋……3度の飯よりアレイシア……いや、ドン引きするなよ、冗談だから」

レイルとクルーガーも悪ノリしてきた。だから、そんな顔をするなよ。なんでうわ……て、顔してんだよ。

「……な、なんだよ」

ドン引きした三人だったが、何故か視線は僕を向いていない。

……えー、なんだよ。

すると、ギルメッシュ顎をわずかに上げて何かのサイン……えーと「後ろをみろ?」

「……あ、あはははぁ。どもっす」

「……」

『ドッ…ドッ…ドッ…ドッ』

後ろを振り向くと、気まずい雰囲気をしているアリスに……真顔のアレイシア。しかも鼓動が早すぎる。

え、どう言う反応?……会話聞かれた?

いや、僕の耳なら足音を聞き流すことなんてないはず……ま、まさか。

近くに石柱あるし、隠れていたのだろう。待っていたのだろうか?

呼吸音だけでは人の見分けはつけられない。何より周りに多くの生徒がいるから気がつけなかった。レイルの話に集中しすぎたせいもあるだろう。

「あ……アレイシア」

「……」

とりあえず、声はかけてみたものの、反応はない。

いつも通りだなぁ。

また、なんか言われるんだろうな。

「アレン様……その……あの」

どもる時は照れている証拠。

怒ってはないようだ。

「……これ…で、では失礼します」

「え、あ…うん」

「アレン様、私も失礼するっす」

小さな用紙を僕に渡すとアレイシアとアリスはその場から離れていった。

それにしてもなんだろう?アレイシアの初めて見る反応。

気になりふともらった手紙を見るとーー。

「……?!」

たった一言【アレン様、いつも助けていただきありがとうございます。……愛してます。アレイシア=ソブール】と書かれていた。

尻尾のあまりがキュッと閉まる感覚。

胸が暖かい温もりが全身に巡る。

「何があったのでしょう?……アレンさん、それは一体」

「……絶対に見せないよ」

首を傾げながら聞いていたクルーガーに僕は誰にも見せないように大切に懐にしまう。

……やばい、嬉しい。

手紙のやりとりは昔からしていたが、事務的なやりとりばかり。

直接気持ちを伝えられたのは初めてだ。

まさかアリスの入れ知恵か?

多分そうだな。アレイシア自発的にがこの手紙を出していたら、とっくにやっているはず。

後でアリスには何かお礼をしよう。

「にやけてるな。相当嬉しいことが書いてあったとみた」

ニヤケが取らない。レイルじゃなくてもわかってしまうだろう。

ああ、こんな幸せな日々を毎日過ごしたい、そう強く願う。

だが、幸運な日は……続かなかった。

「あ、あのアレン様。今日アリスさんがどうしても作法の勉強をしたいとのことで……その」

その日の放課後がアレイシアが表情は硬いが珍しく少しソワソワしながら話しかけてきた。

今までにない反応だったの驚きましたが、楽しんでおいでと一声かけた。

今日は早く帰ろう、今後の方針を決めなくてはなと……そう思って教室を出ようとした瞬間、違和感を覚える。

教室の外が僅かにざわついていた。

なんだと違和感を覚えつつ席を立とうとした瞬間だった。

『えーと確か決め台詞はこうよね。私はあなたの味方よ。なんでも相談して!よね』

教室近くから……嫌な予感がする言葉を発する女生徒の声が聞こえたのだった。

実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と呼ばれた悪役令嬢は重度のあがり症だった〜

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