テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
白山小梅
白山小梅
12
あたしは柊のことが好きだったけれど、柊に対して、苦手意識を持っていた。勝手に。
どこが、とは一概に説明しづらいけれど、存在というか、考え方、というか。
柊とは、音楽の趣味が似ていた。好きなアーティストが一緒だった。マイナーなグループだって、柊に言うと分かってくれた。
お笑いの好みも似ていた。味覚も、好きなスポーツも同じ。遊園地に行けば最初に乗るアトラクションも同じだった。
思春期になれば、必然的に周囲ではカップルが誕生していくなか、あたしと柊に、恋愛という名の甘酸っぱさは近寄ってこなかった。
でも、楽しそうな友人を見れば、あたしも思春期なりに羨ましいわけだ。
“ 良い恋愛したいな “とあたしが言えば” バカじゃん
“と柊は嘲笑った。
『笑うことないじゃんか』
『あのね。それ、騙されやすい女が使う言葉じゃん。恋愛って二人でするんだから、良くて当たり前っしょ』
適当にいきているようで、ちゃんと自分を持っているのを隙を見て見せてくる感じが苦手だった。勉強してないと言いつつ、抜け駆けして超勉強してるタイプの人間だ。
『やっぱイケメンが言うことはちがうなー。彼女いないくせに』
『彼女、べつ、いらないかな』
あの頃、あたしは柊が死ぬほど告白されていることを知っていた。たまに、首元に痕を残していることも知っていた。
可愛い子に告白されても、柊は誰とも付き合わなかった。
あたしは一度だけ、何かの会話の弾みに理由を聞いたことがある。
── カノジョ、というより、他人に合わせるのがめんどう。
だからおまえは告白しないでね、と。釘を打たれた気がした。
前後の会話は全く覚えていないのに、そのことだけは猛烈に思い出される。
あーうー……あたまくらくらする……。
結果。未知との遭遇(柊との再会)によって、変なテンションになったあたしは、お酒をジュースみたいにぐびぐび飲んじゃったおかげで、そうとう出来上がってた。
柊とは、会話とも呼べない会話を交わしたくらいで、その後隣になることも無い。ルイくんの他に、長谷川くんとも話したけれど、正直柊のことが気になって話は右から左に新幹線みたいに通過していた。
トイレの無駄に大きな洗面台で、自分の顔を確認する。頬が、熱を出した日みたく、真っ赤である。
いますぐ横になりたい気持ちを残しつつ、ぽかぽか火照る身体と、くらんと程よくまわる世界が心地よい。
「ほとりちゃん、二次会いけそう?」
ユカちゃんがこてんとあたしを覗き込む。ぽってりとした唇はリップを塗ったばかりなのか、てかてかとしている。細かなラメが夜の街のネオンライトみたい。
「うん、行くよー。ダーツね、昔バスケ部だったから、的狙うのは得意」
「理屈が全然ちがうけど、だいじょーぶ?」
「うん、へーきへーき」
本当はちょっと寝たいけれど、誘ってもらう分は乗りたい派である。
身体はふわふわするけれど、足取りも軽いし、意識はしっかりとしているので、ほとり調べによるとオーケーな日だ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!