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波乱の入学式が終わった。

次は、各自のクラスに向かう。


「やれやれ……。先が思いやられる入学式であったな」


余はそうつぶやく。


「はい。しかし、陛下にとっては幸先がいいとも言えるでしょう。有能さをアピールできれば、伴侶となる者も見つけやすいです」


余の隣を歩いているイリスが、そう答える。


「ふむ。しかし、学生レベルの有能さなどたかが知れているがな。余の全力を出せば、この学園の全生徒と全教師は一瞬にして塵芥になる」


「冗談でもやめてください。せめて、わたしが逃げるまでは待ってくださいね」


イリスが冷や汗を垂らしながらそう言う。


「わかっている。もちろん冗談だ。それに、もし本気になったとしてもイリスだけは逃してやるさ。お前は余の大切な者だからな」


「へ、陛下……? それって……」


イリスの顔が赤く染まっていく。


「うむ。お前がいなくなれば、誰が余の朝食をつくるのだ。有象無象がつくった料理など、口にするつもりはないぞ」


「がくっ。……そんなところだと思いましたよ。まあ、それはそれで嬉しいですが……」


イリスが小声で何かをつぶやいている。


「む? どうかしたか?」


「なんでもありません。さあ、それよりも早く教室に向かいましょう。自己紹介とかあるはずですよ」


彼女はそう言って、楽しそうな笑顔を浮かべた。

有能な配下であるが、こういうところは年相応だ。

学校という場を大いに楽しむつもりだろう。

余も同じく、楽しませてもらうことにしよう。


そして、教室に着いた。

余を含む生徒たちが指定された席に座っていく。

少し遅れて教師が入ってきた。


「諸君。妾がこのクラスの担任を勤める、リーズ=ストムフィルじゃ。よろしく頼むぞ」


緑色の髪をした女教師が、そう言う。

口調に特徴がある。

しかしそれ以上に……。


「かわいい~」


「だれかの妹か? 迷い込んだんだな」


生徒たちがそう言う。

リーズとやらは、小学生ぐらいにしか見えない。

だが、立ち上る魔力はまあまあだ。

彼女が教師という話もあながち嘘ではないのだろうが……。


「ふん。本質を見れぬ有象無象が……。座れい! ホームルームを始める!」


リーズがそう叫ぶ。

その雰囲気を受けて、生徒たちも静かになった。


しかし、こんな外見幼女を雇うとは。

採用基準はどうなっているのだ?

まあ、採用の最終責任者は余なのだが。


今後の日程の簡単な説明の後、生徒たちの自己紹介が始まった。

余の今後の学園生活を占う大切な自己紹介だ。

ここでつまずくわけにはいかない。


「わたしは、イリス=ノイシェルです。よろしくお願いしますね」


イリスが無難にそう挨拶をする。

面白みの欠片もないが、余のサポート役としては過度に目立つ必要もない。

妥当と言えば妥当だ。

及第点をくれてやろう。


引き続き、生徒たちの自己紹介が進んでいく。

そして、見覚えのある少年の番となった。


「僕はシンカ=アクアマリン。水魔法を得意としている。入学式ではみんなに迷惑をかけて、ごめんね。学園での活動を通じて、人族は決して魔族に劣らないということを証明してみせる」


彼はそう宣言すると、爽やかな笑みをたたえながら一礼をした。

青い髪がよく似合っている。


「おお……。可憐だ……」


「カッコいい……」


周囲からそう感嘆の声が上がる。

男子からも女子からも人気だ。

確かに彼は中性的な顔立ちをしており、男女両性から人気があるのもうなずける。

余も、少し見とれてしまった。

そんな彼の後に立ち上がったのは——


「ふん。私はフレア=バーンクロスよ。火魔法が得意なバーンクロス家の次女と言えば、知っている人もいるかしら? 入学式の件は、一応謝っておくわ。でも、魔族は人族よりも優れている。この点は譲らないからね」


彼女は傲岸不遜な態度でそう言い放った。

赤髪と大きな瞳が特徴的な美少女である。

美しい容姿をしているのだが、どこか近寄りがたい雰囲気がある。

何より、その目つきが悪い。

喧嘩慣れしていそうな感じだ。


「美しい……。踏まれてみたい……」


「お姉様と呼びたいわ……」


周囲からそうつぶやきが漏れる。

シンカに加えこちらも男女両性から人気だ。

魔王軍の幹部にも、こういうタイプはいたな。


見た目はいいし、将来性も悪くない。

フレアを余の伴侶候補の1人としておこう。

もちろん、まだまだ見極めは必要だが。


それに、フレアにも一応は選ぶ権利がある。

よもや余の誘いを断るとも思えんが、可能性はゼロではない。

魔王という身分を明かせば確実に落とせるだろうが、そうするつもりはない。

余は、余の肩書や身分に惑わされる真実の愛を見つけるために、わざわざ素性を隠してこの学園に入学したのだからな。


おっと。

そんなことを考えているうちに、余の自己紹介の順番が回ってきたようだ。

フレアの好感度を少しでも稼ぐために、ビシッと決めておかねばならない。


ガラッ。

余はイスを引き、立ち上がる。

鷹揚にクラスメイトを見回す。


「ふん。それなりに優秀な人材が集っておるな。喜べ、このクラスは余が支配してやる。逆らうやつは皆殺しだ!」


「「「…………っ!!!」」」


どよどよ。

教室内にざわめきが広がる。


いかんな。

外したか?

ここは笑ってほしいところだったのだが。

一般民衆の笑いの感覚は、まだよくわからんな。

おいおい掴んでいかなければならない。

最強魔王の学園無双 ~世界を平定したチート魔王は学園で無双し花嫁を探す~

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