あの日からしばらく、深澤はいつものようにパパ達と過ごしていた。
昼パパとはランチ。
ラウンジで軽く世間話を交わしながら、愚痴に付き合い、励まし、束の間の楽しいひとときに色を添える。
時間が許せば買い物に連れてってくれるのも昼パパ。
夜パパとはディナー。
カウンターの寿司屋、ホテルのBARでお酒、そのまま上の部屋で食後の運動。
だいたいこんな流れ。
でも、ふとした時に頭の片隅で「さっくん、今何してるかな」と無意識に考えてしまうし、おじさんのでっぷりしたお腹を見ると、嫌でも佐久間の腹筋が脳裏にチラつく。
あの日の佐久間は
あっという間に俺のツボを押さえてピンポイントに突いてきた。
あの瞬間には気が付かなかったけど、日を追う事にじわじわと思い出してしまう。
佐久間の冷たい視線、チラッと見えた腹筋、果てる瞬間に歪んだあの顔まで脳裏に浮かび、手の感触までもが蘇る。
気が付くと、無意識に身体がその感覚を追いかけていて、逃げようとしても逃げられない自分がいた。
はぁ……
は……あ、あ
……ぁ、あぁ!!
思い出しただけで身体は勝手に反応し、手は自然に伸びていて、久しぶりに1人で果ててしまった。
数日後、また翔太からLINEが来た。
「明日の夜、スタッフ少ないんだって。17時頃さっくんのスタジオ来れる?」
言われた時間に行ってみると、翔太が一人で撮影の片付けをしていた。
それでも2人でやるほどの仕事量でもなくて、片付けをしてちょっと機材を動かして掃除したら終わり。
(……え、これだけ?)と思った俺が首を傾げると、翔太も(俺もそう思った)と言わんばかりに肩をすくめる。
そこで佐久間が唐突に言った。
「終わったー?じゃ、焼肉でも行くか」
俺と翔太は顔を見合わせた。
翔太も、佐久間の行動が読めずに戸惑ってるようだ。
「かんぱーい!!!!!!」
ゴージャスな内装の焼肉屋の個室に、佐久間の声が響いた。
席に着くとすぐに特大サイズのビールが人数分届き、次々に肉も届き始める。
注文しているのはもちろん佐久間。メニューを開く間もなく、カルビ、ハラミ、タン塩…と皿がテーブルに増えていく。
「さっくん、早いっすよ!」
苦笑いしながらも、渡辺は出された肉を網に乗せる。
「うまけりゃいいじゃん!」
佐久間は上機嫌で渡辺からトングを奪うと、最初に焼けた肉を自分の皿じゃなく、俺と翔太の方へ当然のように放り込んでくる。
「うわっ!うまっ!」
今はその翔太の鈍感さが助かる。
「ほらほら、食え食え」
佐久間の無邪気な笑顔に、逆に抵抗できなくなる。
コメント
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さっくん気になっちゃうふっかさん🫣🫣🩷💜