シダレと来た花畑を通り過ぎ、緩やかな坂を登って行くと少し遠くになにかがあるようだった。
「ねぇ、ソメイ?私達が行ってるのって、あれ?」
そう見える何かを指さすと
「その通り!もうちょっとだよ!」
と言って先程よりも少し早く歩き出したソメイに置いてかれそうになる。
「待ってよ…!」
と慌ててソメイの隣りに並ぶ。するとソメイはニヒヒと笑い
「どっちがあそこに早く着くか勝負だ!」
と走り出した。私も負けじと遅れて走り出した。
少しするとすぐに見えていた物に到着した。
見えていた物はどうやら桜の木に1つだけブランコが取り付けられた、遊具の様だった。
こんな形の遊具を初めて見た為ついその遊具だけをまじまじと見てしまう。
「サクラ!このブランコに乗ってみない?」
と唐突にソメイに誘われ、言われるがまま座って見ると見た目よりも安定感があり安心して遊べそうだった。
「ねぇ、前見てみて!」
とソメイに言われなんだろう?と見てみるとそこには、もうすぐ赤く染まってしまいそうな淡い青色の空に薄い雲が少しだけふわふわと浮いていて今にも吸い込まれてしまいそうな綺麗な空がいつもより近く。
私の目の前に広がっていた。
「きれい…」
と思わず声を出すとソメイが
「 夕日ならもっときれいなんだけど…サクラと一緒にだとちょっと危なくて見せれないだ…」
と申し訳なさそうにそう伝えて来た。
すごく見たかったけど、しょうがないのだと諦めた。
なんせアマガイは家の明かり以外の明かりが無いのだ。
夜に出かけるとなると真っ暗で足場サエも分からない。
その事は当時の私もわかっていたから
「大丈夫だよ!」
と返した。すると少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。
何も言わずにじっと空を見つめる。
私達の隙間を暖かな柔らかい風が通り抜けさぁ〜と葉っぱが優しく音を鳴らした。
そんな2人の沈黙を破ったのはソメイだった。
「ねぇ、サクラ?」
「どうしたの?」
「もし、もう少ししたら自分達がここから居なくなるって言ったら…」
そこまで言うと、なにか考えるように真剣な表情で空を眺めていた。
私も不穏な話しに顔を歪ませ
「どう言う事?」
と聞く。
するとソメイはゆっくりと私の方を見て
すごく切なく、でも大人っぽい…ソメイ独特の雰囲気の微笑みを零しながら
「なんてね!冗談だよ!……気にしないで。」
と濁した。そして、ふーっと息を吐き
「そろそろ帰ろっか!」
と何事も無かった様に話し出した。
「(これ以上、触れちゃいけないんだ)」
と当時の自分は察して
「うん!」
といつも通り、何も気にしていないように返事をしてソメイと一緒に帰って行った。