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「玄関口に馬車は手配してあるからそこで待っててね」
「わかりました」
母上は要件を伝えると部屋を出ていった。
僕は母上に返事をしたらすぐに準備を始める。
正直いえば何か企みがあるのではないかと疑っている。
なんせ、買い物の約束をしたのはお披露目会で陛下の言葉を聞いた後だった。
理由を聞いたら微妙な反応されたし何されるかわからない。
だが、約束した手前断ることもできず。
アレイシアと婚約した時の件で迷惑をかけたし断りづらい。
それにアレイシアへの贈り物もについての相談もしたいわけで。
「ウェル、母上の様子少し変じゃなかった?」
「いえ、特には……いつも通りだったと思いますが」
「そうだよね」
僕は少し疑問に思ったので、近くにいたウェルに母上の様子を聞いてみた。
その表現は比喩とかではなく、そのままの意味でだ。
今のやりとりをした母上は普通だった。気にしすぎだと思うが、僕に女の子の格好をさせようとした過去があるのでつい警戒してしまった。
「どうかされたのですか?」
「いや……大したことないんだけどね」
ウェルは僕の唐突な質問に疑問を持ったらしい。まぁ、今回の買い物にはついてきてもらう予定だし、念のため話しておくか。
「一応話しておこうかな。……実は昔、母上から女の服を着せられそうになってね」
「まぁ、確かに似合いそうですもんね」
「いや、冗談でもやめてくれない?洒落にならないから。……ごほん、話戻すけど。それで、お披露目会の時に陛下が僕の容姿について話した時、母上嬉しそうだったんだよ」
「そうなんですか。……ちなみに陛下からはなんと言われたのですか?」
ウェルは陛下から言葉が気になったらしい。……ここまで話したし、教えておくか。
「ユベール夫人に似ている。女と言われれば信じてしまうかもって言われた。多分緊張をほぐすための冗談かもしれないけどね」
「アレン様って鏡で自分の姿見たことありますよね。……思い描いて見てください。ドレスをきた姿を……陛下の言葉は間違ってないかもしれませんよ?」
「本当に揶揄うのはやめてよね」
僕は思わずため息をついてしまう。
もう、話す意味無くなってきた気がしてきた。
「と…とにかく、ウェルにも付いてきて貰うからね。そのつもりで準備して」
「わかりました。では俺はアレン様から頼まれたこれを出してきますね」
この内容についてはあまり話したくなかったのでウェルに一言伝え僕は準備に取り掛かった。
ウェルもこれ以上は話す気はないようで、アレイシアへの手紙を出しに行くために部屋を退室した。
僕も外出用の服に着替えて外に向かった。
「アレン、お疲れ様」
「あ、父上」
部屋を出て廊下を歩いていると父上が話しかけてきた。
多分、偶然を装っているが待機していたはずだ。
足音が行ったり来たりしている音が聞こえていたため、誰か待機していると思ったけど父上だったようだ。
「これからユリアンと出かけるんだよね?」
「はい。……父上も行くのですか?」
「いや、仕事が忙しくてね。今回は遠慮させてもらうよ」
「そうですか。残念です」
僕は父上も一緒に行くと思っていたが、違うらしい。ならなんで僕に話しかけてくるタイミングを窺っていたのだろう?
少し疑問に思うも、母上を待たせたくないので急ぐか。
父上とは帰った後、ゆっくり話せばいい。
「父上、あまり母上をお待たせしてはいけませんので失礼しますね」
「あ、少し待ってほしい。実はアレンに聞きたいことがあってね。今日の夕食は何が食べたいかい?一週間勉強頑張ったご褒美にアレンの好きなものを用意しようと思ってね」
ああ、これを聴きたかったから父上はここでやっていたんだ。
とりあえず素直に質問に答えた。
「ハンバーグですかね。……あと、ミルクとアップルパイを用意してください」
「わかったよ。用意させよう」
前世でも今世でもハンバーグは好きだ。
ミルクは身長伸ばすために毎日飲み続けたのだが、今では普通に好きになった。
「引き留めて悪かったね。もう行っていいよ」
「はい。行ってまいります」
父上と会話を終えると玄関に向かった。
僕の好物用意してくれるなんて父上優しいなぁ。
そう思っていたのも束の間、父上の気になる発言が聞こえてくる。
『強く生きるんだよ……アレン』
「え?」
父上……今の言葉の意味はなんですか?なんで小声で声援を送ったのですか?
その言葉が気になりすぐに引き返そうとしたのだがちょうど母上と居合わせた。
「あら、アレン。もう準備は終わったの?」
「母上。はい、今から場所へ向かうところです」
「そうなの、なら一緒にいきましょうか」
「……はい」
……しょうがないか。
父上のところに戻ったら不自然か。
僕はそう結論づけ、母上と馬車向かうのだった。